第009話 ギルドで情報収集
「で、では、改めまして、当ギルドにどの様なご用件でいらっしゃたかお伺いしても宜しいでしょうか?」
若干引き攣りながらも笑顔を絶やさない受付嬢は、どこまでも脱線しそうなネコたちの話を断ち切り、強引に軌道修正をする。
その言葉に、カウンターの前で固まっていたタマは、深呼吸を一つすると尻尾をピンと伸ばし、再び受付嬢へ向き直った。
「え、えっと……その……聞きたいことがあるにゃ……」
受付嬢は、営業スマイルを保ったまま、丁寧に頷いた。
「はい、どうぞ。依頼の相談でしょうか? 登録でしょうか? それとも装備の更新ですか?」
「そ、装備は……その……鍋の蓋にゃ……」
「ピシッ」と言う音が何処からともなく聞こえ、受付嬢の笑顔が一瞬だけ固まった。しかし腐ってもプロである。すぐに持ち直した。
「……ええと、はい。では、まずご相談内容を伺いますね」
タマが慌てて前に出る。
「にゃ、にゃ! 装備の話はいいにゃ! 今日は情報収集に来たにゃ!」
「情報収集……ですね。どのような情報をお探しですか?」
タマは胸を張り、堂々と宣言した。
「伝説の秘宝について、知っていることを教えてほしいにゃ!」
受付嬢の営業スマイルが、今度は本当に固まった。
「……ワンチュール、ですか?」
「そうにゃ!」
「猫が本気を出すと困るから女神様が隠した秘宝にゃ!」
「見つけた者には望むものを何でも与えるらしいにゃ!」
「魚がいっぱい食べられるにゃ!」
「にゃーもお魚食べたいにゃ!」
受付嬢は、四匹の猫が口々に叫ぶのを聞きながら「今世紀で一番カオスな客が来た」という顔をしていた。
「……あの、ワンチュールという名称の秘宝は、ギルドの公式記録には存在しませんが……」
「にゃ!?」
「ただし、似た様な内容の伝承なら……少しだけ聞いたことがあります」
猫たちの耳が一斉にピンと立った。
「にゃにゃ!? それそれそれ! それを教えるにゃ!」
受付嬢は資料棚から一冊の薄い冊子を取り出し、ページをめくりながら説明した。
「古い伝承の中に、《猫神様の贈り物》という記述があります。 「猫のために作られた祝福の品で、世界のどこかに封じられている」とだけ……」
「それにゃ、それそれ!!」
「にゃんで名前が違うにゃ!?」
「ワンチュールじゃないにゃ!?」
「じゃあ何チュールにゃ?」
受付嬢は苦笑しながら続けた。
「伝承は地方によって呼び名が違うことがあります。 もしかすると、皆さんの村では《ワンチュール》と呼ばれていたのかもしれませんね」
タマが小さく息を呑んだ。
「……にゃ。じゃあ、ワンチュールは本当に……存在する可能性があるにゃ?」
「はい、記録が残っている以上、可能性はあります。では、そのワンチュールの探索依頼と言う事で宜しいでしょうか?」
ネコの秘宝の探索依頼という落とし所に着地して、あからさまにホッとした表情の受付嬢は、カオスな猫獣人から解放されたと思ったの束の間。
「違うにゃ.にやーたちが依頼を受けてるにゃ」
「そうにゃ、コレこれ、依頼書もあるにゃ」
タマは、そう言いながら、少し黄ばんだ羊皮紙の様なものをカウンターに拡げたのだった。




