第008話 冒険者ギルドの驚愕の事実
タマはマタタビもとい、再び背筋を伸ばし、項垂れていた尻尾をピンと伸ばした。
蝶を追いかけ、カブトムシに勝負を挑み、魚に目のないクロの天然っぷりが、こんなにも頼もしく思えたことはなかった。
――にゃーもやらなきゃにゃ。
意を決したタマは、今し方空いたカウンターへと進み、美人受付嬢に声をかける。
「あ、あの、ちょっと聞きたいことが有るにゃ……」
受付嬢の完璧な営業スマイルに、思わず気圧されそうになる。かろうじて、それだけを絞り出した。
「はい、王都冒険者ギルド、ダウンタウン第四支部へようこそ」
「よ、よん?」
タマの声が裏返った。
「はい、第四支部です。何かお困りですか?」
タマはゆっくりと後ろを振り返り、呆然とした顔でシロたちを見た。シロも、ミケも、クロさえ依頼書から顔を上げて固まっている。
――支部。
――第四。
つまり、この見上げるほど巨大な建物は、王都に存在する冒険者ギルドの、全体ではなく一部だということだ。
「にゃ、にゃ……に、俺たちの村のギルド、何個分だ何個分だって騒いでたにゃ……」
クロが震える声で呟く。
「その建物が、四つある支部の、一つ、にゃ……?」
「他にも支部があるって、ことにゃ……?」
ミケが箱の中で、そのまま体育座りのような姿勢で固まった。
受付嬢は状況が読めないまま、営業スマイルを崩さずに小首を傾げた。
「はい、王都はダウンタウン、ミドルタウン、貴族街の三層からなり、その上に王城が鎮座まします。ギルドは貴族街の本部、そして第一から第五まで支部がありますが……って、皆さん、どこかお具合でも悪くされましたか?」
顔を青くして引き攣らせているネコたち一行を見た受付嬢は、心配そうに声をかける。
「ち、ちげーにゃ……うちの村、ギルド一個しかないにゃ……人口も多分、この建物の中の人数より少ないにゃ……そ、そんにゃの聞いたら……」
タマが乾いた声でそう漏らすと、シロが小さく天を仰いだ。
「にゃ……世界、広すぎにゃ」
その呟きに、四匹全員が無言で頷いた。
冒険王を目指す道のりは、思っていたよりもずっと――どうやら、想像以上に遠いらしい。




