第007話 田舎猫と王都の冒険者ギルド
ギルドの入り口では、鎧や剣、杖やローブなど、様々な装備で身を固めた冒険者たちが、油の切れた蝶番をギィギィと鳴らしながら、次々とスイングドアを通過していく。
一人一人が、いかにも「本物」の風格を纏っていた。
かたや、こちら――
クロは拾った鍋の蓋を盾代わりに紐で括りつけエクスカリバーと名付けた木の棒を持つ。ミケは相変わらず木箱を小脇に抱え、シロは布切れを適当にマント風に巻きつけただけ、タマに至ってはさっき食べた魚串の骨で作った、即席の首飾りをぶら下げている。
「にゃ……にゃんか、俺たちの装備、ゴミにしか見えないにゃ」
クロが自分の鍋蓋を見つめ、ぼそりと呟いた。
「今更気づいたにゃ?」
「今更でも傷つくにゃ……」
すれ違う冒険者の一人が、ちらりと四匹を一瞥し、「新人か……?大変だな」というような憐れみの目を向けて通り過ぎていった。誰も何も言わなかったが、視線だけで十分に伝わった。
「……にゃ、行くにゃ」
タマが小さく息を吸い、精一杯背筋を伸ばした。
「うちらの装備がしょぼくても、中身で勝負にゃ!」
「おお、にゃ!」
「その意気にゃ!」
「なんの中身にゃ?」
「うるさいにゃ、勢いにゃ!」
「中身なかったにゃ」
四匹は互いに小さく頷き合うと、覚悟を決め、思い切り体当たりする形で、ギィ、と重いスイングドアを押し開けた。
ドアの向こうに広がっていたのは、喧騒と熱気に満ちた、まさに「冒険者ギルド」そのものの光景だった。
「「「「にゃ、にゃにゃにゃ〜っ!」」」」
田舎猫たちの、王都デビューである。




