第003話 犬の門番さん
城門前で通せ、通さん、押し問答をする猫たち一行と衛兵隊。
門番はがっしりとした体格の、柴犬系の犬獣人、背筋はピシッと伸び、人一倍の忠誠と使命感がみなぎっている。
「通行証がない者の通行は認められません。これは人族の主より預かった、絶対の職務です」
「にゃ……なんか妙にキッチリしてるにゃこの人」
クロがひるむ。門番――名札には「ポチ二等兵」とある――はビシッと敬礼した。
「当然です! 我々犬獣人は、ご主人様への忠義をもって生まれてきた種族! 命令は絶対、規則は絶対、任務放棄などあり得ません!」
「にゃるほど……」
タマが箱から出て、感心したように頷く。
「うちの子たちと真逆にゃ……」
その時、シロがのそっと起き上がり、ポチ二等兵をじーっと見つめた。
「……お前、暇な時は何してるにゃ?」
「暇な時間などありません! 常にご主人様の役に立てるよう、待機と鍛錬に努めております!」
「……昼寝は?」
「不要です! ご主人様がお呼びになればいつでも動けるよう、常に臨戦態勢を維持しております!」
シロとミケが顔を見合わせた。
「「別の生き物にゃ……」」
そこへ、隊長格らしき年配の犬獣人(プードル系、貫禄あり)が到着した。
「ポチ、状況は」
「はっ! 通行証を持たない猫獣人四名が通行を求めております!」
隊長は一行を見渡し――ふと、箱に入ったままのミケに目を留めた。
「……なぜ箱に入っている?」
「にゃ? 落ち着くからにゃ」
「理由になっていない」
犬たちの間に、微妙な沈黙が流れる。忠誠と規律で固められた彼らにとって、この猫たちの行動原理はあまりにも予測不能だった。
隊長が小さく咳払いをした。
「……通行証は東の役所で発行できる。手続きには半刻ほどかかるが」
「半刻!?そんなに待てにゃい!冒険王への道のりが……!」
「規則です」
犬獣人たちは一糸乱れず、同じ言葉を返した。
こうして猫たちは、忠犬たちの鉄壁の規律の前に、あっさりと足止めを食らうのだった。




