第012話 冒険者講習、テスト編
「うー、頭が二つに割れたにゃ」
タマのチョップで悶絶していたクロが、頭を振りながら復活した頃、受付嬢は仕切り直すように咳払いをした。
「では講習はここまでにして、簡単な筆記試験に移りますね。全五問、選択式です」
配られた紙を見て、タマたちは身構えた。
問1. 依頼を受注する際、まず最初に行うべきことは?
①受付に声をかける
②いきなり現場に向かう
③昼寝する
④魚を食べる
「にゃ……これは①にゃ」
タマがすらすらとペンを走らせる。だが隣で、クロが真剣な顔で唸っていた。
「にゃ……④も捨てがたいにゃ……腹が減っては戦はできぬというし……」
「④は選択肢に入ってすらいないにゃ、ちゃんと①を選ぶにゃ」
「にゃ……わかったにゃ」
問2. 依頼の途中で危険を感じた場合、正しい対応は?
①仲間と連携して撤退を検討する
②一人で突っ込む
③その場で寝る
④箱に入る
ミケの手が止まった。
「……④、結構有効な気がするにゃ」
「箱に入って危険が去るわけないにゃ」
「にゃ、でも安心するにゃ」
「気持ちはわかるけど①にゃ」
タマが横からミケの手を掴み、無理やり①に丸をつけさせた。
問3. 依頼主への態度として正しいのは?
①誠実に対応する
②機嫌次第で態度を変える
③爪を研ぐ
④とりあえず匂いを嗅ぐ
シロが真面目な顔で悩んでいた。
「にゃ……④は失礼にゃろか」
「失礼にゃ」
「でも初対面の相手は、まず匂いを確認するのが基本にゃ」
「それは猫の基本であって、冒険者の基本じゃないにゃ!」
タマの声が講習室に響いた。受付嬢は隅で、静かにペンを走らせるふりをしながら、こめかみを押さえていた。
問4. ギルドの掲示板に貼られている依頼書を見るときの注意点は?
①ランクに応じた依頼を選ぶ
②内容を確認せず受注する
③破いて持ち帰る
④紙の匂いを嗅ぐ
「……にゃ、これもう俺たちへの当てつけにゃろこの試験」
クロがぽつりと呟いた。誰も否定しなかった。
問5. 討伐対象のモンスターと遭遇した際、最初に取るべき行動は?
①冷静に状況を観察する
②動くものには反射的に飛びかかる
③固まって動けなくなる
④とりあえず追いかける
この問題だけは、全員が迷わず同じ選択肢にペンを走らせた。
――①。
なぜなら、②③④のどれもが、身に覚えがありすぎたからだ。
「……にゃ、この問題だけは満点取れる自信あるにゃ」
「これだけは死守するにゃ」
「にゃ」
奇跡的に足並みの揃った四匹を見て、受付嬢は小さく安堵の息をついた。
採点の結果、四匹は辛うじて全員合格した。
ただし、クロの答案用紙の余白には、大きく「④魚を食べる」という文字が、何度も未練がましく書き殴られていたという。




