雨の散文集
観測記録は随時追加される
雨の散文集
上空から細くてしっかりした水の線がおちてくる。
無数に落ちてくるその線が空気に交わり
街の輪郭を淡くする。
傘をさす人もいれば
手を広げて雨を受け取る子供もいる。
誰も雨を厭わず、雨も人を厭わない
雨の散文集
朝の町を子供たちが
傘をさして、並んで歩く。
濡れたアジサイにカタツムリ。
色とりどりの小さな行列。
明るい始まりの朝
雨の散文集
雨は速さの違う人々の間に、薄い膜を張る。
傘をさす人、ささない人がすれ違う。
雨音は確かにあるのに、その意味は異なる。
水たまりは通りすぎる人々をうつし、すぐに忘れる。
雨はそれでも、同じ速度で世界を包む
雨の散文集
遠くで空が唸る
強い怒りにも、嘆きにも聴こえる
もうすぐ雨粒の涙が
地面を叩くだろう。
植物は雨を身に受け
風にふかれ
悦びに震えるだろう。
雨の散文集
白い花が雨粒を受けて
少しずつ透けていく。
輪郭を失うようにして
消えるかに見えたそれは
かえって透明な存在感を放っていた。
雨の散文集
霧の奥に白い花が咲いていた。
雨が続くうちに、
花びらは色を失っていく。
「ガラスの花が咲いてるみたいだね」
参考書を返しに来た利用者が呟いた。
雨の散文集
窓ガラスに滴跡が透ける。
雨の町は人々の靴音を白くして、
かき消してしまう。
暖かいお茶の香りと
夏の湿った空気が
曇天の余白に
溶けていく。
雨の散文集
稲の間をおたまじゃくしが泳いで、
水面をアメンボが滑る
はらはらと雨が波紋を広げて
畔の草から湿った緑の匂いがした。
薄曇りの六月、柔らかな午後




