空模様の欠片
観測記録は随時追加される
空模様の欠片
昼休みの屋上
切れ目のない雲
ぬるくなったソーダ水
フェンス越しの町並み。
町ではただ日々が繰り返される。
手を振り、立ち止まり、笑う人々。
回る人たちにあわせて膨らむ裾が、薄く曇った町に色をそえる。
最後の炭酸が喉を過ぎ、屋上を後にする
空模様の欠片
弱い風が重たい雲をわずかに揺らす。
何も決めない空に焦れたように、
誰かが傘を持ったまま歩いていく。
私は手元の白紙と空を重ねて、小さく息を吐く。
空模様の欠片
世界が止まったような
曇り空の下
濃いピンクのツツジが
小川をさらりと流れていく
止まってはいないと
そっと知らせていった
甘い花の香りが
鼻先をくすぐる
空模様の欠片
電柱が夕陽に照らされ
長い影を作る。
仕事帰りのサラリーマン
放課後の子供たち。
一日の終わりの
少しゆるんだ安堵の空気。
電柱は物言わず、一日を刻む
空模様の欠片
銅像にかかる葉桜の枝
熱で揺らめく影と
土ぼこりの乾いた風
温まった配管を流れる水の音
鉄の味をまとった冷たい水
あの日の校庭に一瞬巻き戻る。
キュッと蛇口をしめて庭を出る。
追補
空模様の欠片
ゆっくり崩壊する氷
雨音がまるで氷の
悲鳴のよう。
行き場を失った水滴は
帰り道を探して
しずかに佇む。
冷たい光を失って
ゆっくり溶ける氷
結露が夏の夜の
空白にぼんやりと浮く
滴る水が
止まっていた時間を
少しずつ動かしている
空模様の欠片
でこぼこのアスファルトに
青い空と白い雲が浮かんでいる
風化した案内板には
今は廃墟になった
テーマパークの名前
誰も訪れない
小さな楽園




