低温生命体図書館 本館
低温生命体図書館 本館
森から送られてきた本をワゴンから棚に並べながら、私はそっと耳を澄ませる。
最近の図書館は少し呼吸が浅く、時折咳のような異音が混ざる。
数人の利用者からも空調がおかしいのでは?
と聞かれた。
一度地下を確認するべきか。
考えながらもワゴンを押して、本の入れ替えと汚れや破損がないか確認していると、不意に制服の裾を引っ張られた。
振り返ると五、六才と思われる女の子がいた。
「どうかしましたか?」
私が尋ねると困ったような顔で
「今日図書館変な音がするけど、大丈夫なの?」
と言う。
私は心持ち目線を合わせながら
「図書館も長生きですからね、今日は調子が悪いみたいですね」と返す。
「図書館、生きてるの?」不思議そうに首をかしげる少女に
「そうですよ」
と答えると、ぱっと目を輝かせた。
「それ、ママにも教えていい?」
「いいですよ」
本館の地下に潜ってみると、司書達が待っていたとばかりに集まってきた。
皆図書館の咳の原因を探っていたのだ。
「谷分館で本棚の爆発があったようです」
「少し前に森が沢山実らせたようですから」
「谷の司書が棚の整理をしたようです」
ーーあぁ、谷分館か。
皆の顔に安堵と呆れが混ざっていた。
学院から学者を数名、谷に派遣してもらえないか問い合わせよう。
一番は人類学者がいいのだが贅沢は言わない。
分類学、人文学辺りの学者でも有難いものだ。
「谷の司書には学術書の棚は触らないように伝えて下さい」




