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北分館観測記録
観測記録は随時追加される
かげろうの夢
香り立つ霧
北分館の短い夏の空
か弱げな手
消えては沸き立つ霧
降っては止む雨
薄く繊細な境界の季節を
見るともなしに眺めやって
「にじがでたな」
消えては沸く霧のあいだ
雨が静かにふる
空がわずかに顔をのぞかせ
にじがでたな、と司書が言う
見間違いの群がとおりすぎて、
ほどけきらない陰が残る
それだけがそこにある
白金のかがやき
谷でも森でもない場所で、
博士は白金の柔らかな反射を
幾度となく見落としていた。
見つけた、
と思うたびにそれは少し位置を変える。
あるいは、
探す必要などないのかもしれない。
薄い霧のレースの間に
なに食わぬ顔でそれはそこにある
雨のあとの薄い光を反射して、
白金の植物が繁っている。
はじめて訪れた者だけが、
息をのんで足をとめる。
司書は子供たちに手を引かれながら、
来訪者を一瞥して行った




