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ただ隣にいたからという理由で俺様公爵の婚約者になっただけなのに、何故か溺愛されています  作者: minori


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48.最大の愛


「本当に一目惚れだったんですね……」


 レオンハルトの熱い瞳に囚われた私がようやく返せた言葉がこれだった。

 公爵夫人に馴れ初めを聞かれた時に、レオンハルトがさらりと言っていた言葉が本当だったとは。


 私がそう言うと、レオンハルトはすぐに否定をした。


「いや、流石に子どもに一目惚れはしねぇな。また会いたいとはずっと思っていたけど。好きになったと言うか、気になったのはあのパーティだったな。美味そうにずっと食ってるのお前だけだったから、よく目立って。なんか想像通りの成長の仕方してて面白かったな」

「目立ってたんだ……」


 私が両手で顔を隠すようにして俯く。

 恥ずかしい。どうせ誰も見てないし、別にユリアン様居ないしって思ってたからこそもうそれはそれはたらふくいただいたあれ、目立っていたのか。

 両手を外して、チラリとレオンハルトを見る。


「でも、子どもの頃の私しか見ていないのによくわかりましたね」

「面影はあったし。あとは、ローストビーフを食べていた時の笑顔で確信したな。あの笑顔だって」

「うわぁ、全然ロマンチックじゃない上に恥ずかしい……」


 私は再び両手で顔を隠すようにして俯いた。

 恥ずかしい。ローストビーフでそんなにいい笑顔してた……? いや、確かにすごく美味しかったけど。あんなに躍起になって食べなければ良かった。

 しかし、あの私の喉を詰まらせたローストビーフが私たちを繋いでくれたのもまた事実で。複雑だ……。

 人に馴れ初めを聞かれても、これは絶対に言えない。レオンハルトの一目惚れという事にしておこう。


 私が決意新たに内心そんな事を考えていると、レオンハルトは笑いながらつらつらと話を続ける。


「あと、お前の家にあったご両親の肖像画で確定だなって。最初は陽だまりを探して。その後はローストビーフで窒息死しそうなバカな女が気になって。あのご両親への恩返しと、あと貴族たちの前でキスまでしちまったから責任取ろうって思ってんのに、お前は俺の事も覚えてない上に他の男の事が好きとか言い出すし。はぁ、まったく……。気は強いし、察しが悪けりゃ口まで悪ぃ。……改めて思うが、お前ほんととんでもねぇな」

「ここにきて、更にそんなぼろぼろと人の事貶さなくてもいいじゃないですか」


 呆れながら話すレオンハルトを睨みつける。

 レオンハルトは私の睨んだ視線なんて気にも留めず、大笑いする。

 一頻り笑った後、レオンハルトはおもむろに優しく私を抱きしめた。私は少し驚いて、固まったまま彼に抱かれている。

 

 レオンハルトは低い声で囁くようにこう告げる。

 

「でも、そんなところも可愛くて仕方がない。一緒に居て面白いしな。お前といると幸せなんだ、陽だまりの中に居るみたいに」


 そう言った後、少し体を離して私を見た。

 嘘のない瞳。愛情のこもった優しい視線。


 『欠点をも好きになるのは、最大の愛ですよ』


 そんなユリアンからの言葉を思い出す。

 最大の愛、か。私に対して言われたこの言葉のはずだったのに。

 私が黙り込んでいるのに、言葉が足りないのかとレオンハルトは私の様子を伺うようにして言葉を続ける。


「きっかけはそんなだった。でも、今は全部が好きなんだよ。うまく言えなくて悪かったな。……なぁ、ここまで言ったら分かるか? 鈍くて察しの悪いお前でも」


 困ったように笑うレオンハルト。

 俺様公爵がここまで言ってくれるなんて、私はよっぽど彼からのサインを見逃していたのだろうか。


 私もユリアンの言った通り、素直にならないといけないようだ。

 何度か咳払いをして、私もレオンハルトに向き合った。


「鈍くて察しが悪くて、気が強いし口も悪けりゃ食い意地まで張っているとんでもない女ですみません」

「いや、そこまでは言ってねぇけど……」


 真剣な顔でそう言うと、レオンハルトは少々たじろいだようだ。

 さっきまで自分があんなにボロクソに言っていた癖に、と思わず笑ってしまう。笑いながら、私も正直に自分の気持ちを話す事にした。


「私も自己中心的で自分勝手でプライドが高くて面倒くさいとんでもない男が好きみたいです。だからおあいこですね」

「あぁ、そうかもな」


 二人でくすくすと笑った後、また肩に寄り添いながらしばらくのんびりとした時間を過ごす。

 周りにいつもメイドや騎士団の方や、お店の方が居たから、本当の二人きりと言うのは初めてかもしれない。

 穏やかで静かな時間が心地良かった。

 そんな時間は二人の会話をゆっくりと進めてくれる。


「ユリアン様から私と公爵様が似ているって言われていたの、とんでもないと思っていたのに結構当たっていたんですね」

「おい、あの男の話はするなよ」

「レオンハルト様こそ、やきもちやかないでくださいよ。ユリアン様に」

「俺とお前は違うだろ。俺は結局そんな女はいなかったけど、お前はあの司祭に好意があったんだろ。もうアイツに会いに行くな」

「はいはい。と言っても、レオンハルト様が見つけてくださった鉱山関連の事業でユリアン様の教会の子供たちも関わっていくことになるから、全くというのは無理ですよ」

「……あー、なんで俺うまい事見つけちまったんだろうなぁ……」


 遠い目をして後悔をしているレオンハルトを見て、沢山笑った。

 似た者同士の会話は、花畑が夕陽の色に染まるまで続いていった。長く長く。


読んで頂きましてありがとうございました。

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