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ただ隣にいたからという理由で俺様公爵の婚約者になっただけなのに、何故か溺愛されています  作者: minori


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46.昔の出来事


 何をどう話せば良いかな、と私は悶々と考えていたのに、レオンハルトの方は違うようだった。


「で、俺が好きすぎて何を相談したんだよ」


 レオンハルトが少しにやりと笑って、わざわざ体を前に傾けて私を見上げてくる。

 つくづく嫌な男だ。


「好きすぎるとは言ってないじゃないですか」

「人に相談するほど、何かあったのかよ。やっぱり、前のパーティでなんか言われたのか?」


 レオンハルトにそう言われ、固まってしまった。


「え? なんでそれを」

「お前、あれから変だったからな」

「よく、わかりましたね……」


 普段通りに振舞っているはずだったのに。

 私が驚いていると、レオンハルトは自信たっぷりないつもの顔でにやりと笑った。


「好きな女の様子が違う事くらい、わかるだろ。……で、どの家門を潰せばいいんだ?」

「物騒な事言わないでくださいよ」


 これは、もう白状するしかなさそうだ。

 私は長くため息を吐いて、覚悟を決めた。


「その、昔好きだった女性に私が似ているらしいじゃないですか」

「は? 昔好きだった女?」

「平民の女性の方に熱を上げていた、って」

「は? ……あぁ、なるほど」


 レオンハルトは先ほどよりもずっと嬉しそうににやにやと笑いながら、私を見つめる。


「なんだ、やきもちか」

「やきもちじゃありません! ちょっと気になっただけです。そもそも、レオンハルト様が何故私を好きかも聞いていませんし」

「まぁ、これは元々はお前が悪いな」

「は? なんで……」


 レオンハルトは立ち上がり、木に縛っておいた馬の綱を取る。

 そして、私に手を伸ばして自分の手を取るように促した。


「ちょっと行くところができた。行くぞ、今から」


 私はベンチから立ちあがり、レオンハルトの手を取る。

 レオンハルトの後ろに乗り、腰にがっちりと手を回した。

 馬は少しずつ走り出した。


***


「ここって……」

「あぁ、ここで話したくてな」


 連れてこられたのは、初めてユリアンと出会い、レオンハルトが不貞腐れていた、私の大好きなあの花畑だった。

 二人で花を潰さないように、草原に腰かける。

 風が心地良く吹いている。今は秋の花が咲き乱れているようだった。


 レオンハルトがゆっくりと横になって、大きく深呼吸をする。

 私も同様にした。花の香りに、草や土の香り。穏やかな時間と落ち着く香りが心地よかった。


「よく両親と来てたんだろ」

「えぇ」

「その時の事、覚えてるか?」

「もちろん、よく覚えてますよ」

「例えば?」


 レオンハルトに促される。

 何故ここに連れてきたのか分からないけど、とりあえず促されるままに話し出す。


「両親、ずっと忙しかったんです。なんせ貧乏領地の当主ですからね。でも、愛情は沢山注いでもらいました。領地の子や周りの貴族の子みたいに、遠出はなかなかできなかったけど、このお花畑でよくピクニックをして……」

「釣りや山登りをしたいって暴れた事は?」

「あぁ、そんな事もあったような。でも、そこまで遠くまで行けないからってここに連れてこられて。来たら楽しくなってそうやって怒った事も忘れて。両親と居られるだけで幸せだったのに、甘えてしまったのと周りの子が羨ましくて言ってみただけだったんです。そんな我が儘言わなきゃ良かったな」


 話している内に少し悲しくなってきてしまった。

 穏やかで優しくて、怒った後は抱きしめてくれて、大好きだった。

 前世が家族仲がうまくいっていなかった分、親が自分にこんなに優しくてあたたかな温もりをくれる事が幸せで。それに甘えてしまったから、そんな我が儘を言ってしまった事もあったんだけど。


 私が少し切なそうな表情を見せると、レオンハルトはけろっとした声で言った。


「そうでもないと思うぞ、我が儘は叶えてやりたいって言ってたし」

「え?」

「本当は海釣りや山登りだって旅行だって連れて行ってやりたいって申し訳なく思ってたし」


 私はびっくりして上半身を起こして、レオンハルトを見つめた。


「なんで、レオンハルト様が知っているんです?」


 おずおずとそう尋ねると、レオンハルトはいつものような少し意地悪だったり、自信たっぷりだったりするような笑い方ではなく、穏やかな笑顔で話した。


「父親が死んだあと、何度か戦争に行った後に会った。ここで」

「え、そうなんですか?」

「お前も居たぞ」

「え!?」

「まぁ、サンドイッチ食って早々に寝てたけど。相変わらず食い気だけはあるよな。良い生命力だ」

「うるさいですよ」


 私がそうむくれて言うと、レオンハルトは明るく笑った。

 そして、私と同じように体を起こす。

 体を起こした後、彼は膝を立ててて、そこに肘を乗せた。頬杖をつきながら、足元に咲く小さな雑草の花をちょんちょんと指で触りながら穏やかに話し始める。


「良い両親だよな。父親が死んで初めてだった。あんな穏やかな時を過ごしたのも、本当に自分を思ってくれる人間が居る事に気が付いたのも」


 花畑を見つめている視線はどこか遠くを見つめていて、瞳の中にまるで昔の出来事を映しているようだった。


読んで頂きましてありがとうございました。

明日完結します(気合)

朝9時頃からちょこちょこあげられたらと思います。

良ければリアクションやブクマ、評価、感想をいただけるととっても嬉しいです!励みになります!

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