42.結婚披露パーティー
「まぁ、なんてお美しいんでしょう」
「本当に光り輝く星のようですわ」
光沢のある白地のドレスには、ドレスの裾には宝石が散りばめられている。宝石の周りに描かれた金の刺繍は、まるで願いを叶えてくれる流れ星のように見えた。
「王女様、ご婚約おめでとうございます!」
一斉にお辞儀をする貴族たち。
そう、今日は王女殿下のご婚約前最後のパーティだ。
王女の隣には王女様のドレスに負けないくらい輝く金髪、凛々しい眉、大きくて少し丸みを帯びたサファイアのような青い瞳のドイケメン。隣国の王子、ローランド様だ。
二階の開けた場所に立ち、腕を組み、時折顔を寄せて見つめ合いながら、こちらに手を振っている。陛下も女王陛下もその様子をとても嬉しそうに微笑みながら、見つめていた。
「とてもお似合いですわ」
「王女様のあんな嬉しそうな笑みは初めて見ましたわね」
「この日が迎えられて、本当に良かったですわね」
頭を上げた貴族たちは口々にそう話していた。
レオンハルトに熱を上げていた王女殿下がすんなり結婚されるか、皆心配をしていたようだ。
恋する二人のあの瞳を見て安心したのか、皆嬉しそうな顔をしながら談笑をしている。
私も隣に居るレオンハルトと腕を組みながら、王女殿下を見上げた。
「良かった、お幸せそうで……」
ほっとして、口から言葉が零れた。
ゲームの知識で最高のおしどり夫婦になられることはよく知っていたが、実際に目にするまでは少し心配だったのだ。
二人の幸せそうな姿にレオンハルトと笑い合った。
「あの子が幸せにならない訳ねぇんだよ。気は強いけど、元々は優しい子だからな」
何故か自分が育てたかのように自慢げに言うレオンハルト。
私がいつもの様子にくすくすと笑っていると、レオンハルトは少しかがんで私に顔を近づけてこっそりと言う。
「ちょっとお前と似てるな」
「そ、そんな恐れ多い……失礼よ、王女殿下に」
少し体を引いて、レオンハルトに小さく抗議すると、レオンハルトは小さく笑って、また王女殿下に視線を戻した。
それにしても……物凄く視線を感じる。いつも注目されているレオンハルトは気にならないのかもしれないが、注目を集めた事のない私は非常に負担を感じる。
それもそうか。周りにとっては、あの衝撃的な婚約発言から、こうやって公の場に出るのは二度目の事だし。
居心地が悪く、レオンハルトと組んでいる腕の力を少し強めて、寄り添った。ふぅ、と小さくため息をついてまた王女殿下のいらっしゃる方に顔を上げる。
王女殿下とバチっと視線があった。王女殿下は、私に向かって口をパクパクと何度か動かして、何か仰ったようだが、なんと仰ったのか分からない。
首を傾げると、ふっと笑って、また王女殿下は周囲に手を振り始めてしまった。
なんて仰ったんだろう……。
私が王女を見つめながら悩んでいると、レオンハルトはきょとんとした顔で私に尋ねた。
「セシリア、いつの間に仲良くなったんだ? 王女と」
「え?」
「お似合いだな、って言ってただろ。今」
「え!」
思わず大きな声を上げてしまい、パッと視線がこちらに向く。注目を集めてしまったのが気まずくて、俯いてしまった。そんな私の様子すら嬉しそうにくすくす笑っているレオンハルトの横顔をチラリと見て、小さく睨む。
本当にとんでもない男を選んでしまった。
パーティ中、王女殿下の周りには人が集まり、なかなかご挨拶に行けない。
レオンハルトも噂があった事だし、ご婚約者様がいらっしゃる手前わざわざ前に出て行こうともしないのだろう。
私たちは少し食事を食べながら、ひっそりと壁の花となっていた。
「いいのか? もっと食べなくて」
「さすがにこの席ですし」
「前はもっと食べていたじゃないか」
「もう、言わないでくださいよ。それにレオンハルト様のおかげで、今は毎日満腹です」
「そりゃ良かった」
レオンハルトは楽しそうに軽口を叩く。
非常にご機嫌だ。それもそうだろう。今日はマダムベルの魔法がかかったレオンハルトお気に入りのあの赤いドレス。私たちを繋いでくれたあのドレスと、レオンハルトは赤をいれて色を合わせながらも私の瞳の色の服を着ている。傍から見たら、仲の良い婚約者同士だ。
そのせいで少し視線や話題を集めてしまっているのか、ちらちらと視線を感じながらこそこそと何か話しているのが見受けられるのだが、いつも社交界の中心で嵐を巻き起こしていたこの問題児が気にする事はない。
気にするのは、人の注目を集めた事のない私だけ。
そのせいで胃がキリキリとしていつも以上に食べられないのだが。小心者の私がレオンハルトと後に結婚なんて、大丈夫なのだろうか。
内心そんな事を考えていた時に、レオンハルトの後ろからドンっとレオンハルトの肩を組みに飛び込んでくる赤い頭が見えた。
「よう、レオンハルト! 久しぶりだな、だいぶまた賑わせてるじゃないか」
「はっ……!!」
オタク故、変な声を出してしまった。
だって、まさかこの人に会えるとは思っていなかったのだから。
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