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ただ隣にいたからという理由で俺様公爵の婚約者になっただけなのに、何故か溺愛されています  作者: minori


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35/50

35.嫌な予感


 肺が苦しくなるほど走り続け、男爵邸へと戻ってきた。

 男爵邸の屋敷の前では、私の護衛も兼務しているメイドとおじい様が何やら深刻な顔で話し合いながら、他のメイド達がバタバタと荷馬車に荷物を詰んだりと忙しなく動いている。


 私は息を切らせながら男爵邸に入り、私に気が付いたおじい様とメイドが話を止めて、こちらに顔を向けた。


「あぁ、セシリア……」

「おじい様……一体、どうしたの?」


 頭の中の嫌な予感がどんどん膨らんでいく。

 早く聞きたいような、知りたくないような。恐ろしいと思う気持ちを抑えながら、おじい様に何が起こっているのか確認をした。

 おじい様は考えた様子で少し黙った後、意を決して話し始めた。


「実はレオンハルト様に鉱山の工事の話をいただいて、私が許可をしていたんだが」

「え、おじい様知っていらっしゃったの? 私、最近レオンハルト様に白状させて知ったのよ」

「あぁ。お前には黙っているようにと言われて、隠していたんだが……。すまない」

「いいの、それよりそれがどうしたの?」


 私の質問にメイドとおじい様が顔を見合わせる。

 その様子にぐっとまた胸が押しつぶされるような不安な気持ちが強くなった。

 私の不安そうな顔を見て、メイドは慎重に言葉を選びながら


「それが、事故があったようで。救護班として、私達も一部現地へ行こうと準備をしていたのです」

「そんな……」

「レオンハルト様はご無事なようです、ただ怪我人が多いので援護に、と言う事です」


 レオンハルトに怪我がない、という事実に少し胸の重みが取れた気がした。

 しかし、怪我人が多いだなんて……。何があったのだろうか。煙が上っているという事は火事?

 何が起こっているのか、今後この鉱山事業を展開していくなら、領主である自分が見ておきたい。

 私はメイドの目をしっかりと見据えた。


「私も何か手伝えるかも。私の領地の事よ、私も連れてって」

「できません……と言いたいのですが、言っても追って来そうですね」


 私は黙ったまま、メイドの目を見据える。

 メイドは少しして観念したように、一旦目を反らして、ふぅと息を吐くと、真剣な眼差しを私に向けた。


「私はセシリア様にお怪我をさせたくありません。なので、必ず私のそばを離れない事。私がお話した事は守っていただく事。こちらが条件です。それでも良ければ参りましょう」

「わがまま言ってごめんなさい。今後、この鉱山事業の運営にあたって、私は知っておかないといけないと思うの。この事故の対応の事も勿論。きちんとあなたの言う事を聞くわ」

「では、参りましょう。ちょうど準備も出来たようです」


 メイド達の恰好はいつもと違っている、グランツ公爵家の騎士団の恰好のようだ。

 動きやすそうな黒い騎士団服を身にまとい、それぞれが馬に乗ったり、荷馬車を引き出発ができるように待機している。号令をかければ、もうすぐに出発ができそうだ。

 いつもにこやかなメイドとしての顔が、険しい騎士の顔になっている。

 その女騎士たちに向かって、凛とした声でメイドが指示を出した。


「あなた達は早く向かって、すぐに追いつくから!」


 女騎士は一斉に返事をして、すぐに走り出した。

 馬の蹄の音や荷馬車が引かれていく音で騒がしい中、メイドは私に向かって振り返り、声を張り上げる。


「私も着替えてすぐに向かいます。セシリア様は私の後ろに乗ってください。セシリア様も、その恰好ですと危ないですね。取り急ぎ騎士団服しかないのですが、そちらに着替えて参りましょう」 


 メイドと私は男爵邸に急ぎ一旦戻ると、黒い騎士団服に着替えた。

 そして、馬に乗り、凄まじいスピードで走り始める。


「すみません、飛ばします」

「大丈夫、すごい速さ……!」

「こう見えて、騎士団でもかなりの腕前なんですよ。以降話すと舌を噛むので、話さずに。何かあったら体を叩いて合図してください」


 短くそう言うと、どんどんとスピードを上げて走っていく。

 私はメイドに言われた通り、以降は口を閉じたまま、しっかりと彼女に掴まって事故現場へと急いだ。



***


 現地に着くと既に鎮火はしているようで、外で何人か怪我人の手当てに当たっていた。

 飛び石が当たったり、落石に当たったりといった怪我だったそうだが、重傷者は幸い居ないようだ。


 私たちが現地に着くと、気が付いた人員がこちらへ走ってやってきた。 


「エマ様、ご報告いたします」

 

 スッと敬礼をした後に、現状報告をし始める。


「発破に使う火薬が少し多かったようで、想定よりも大きな爆発により、飛び石や落石でけが人が出ている状況です。現在のところ、死者は確認できておりませんが、到着前に落石があり何名か閉じ込められております。男たちは急ぎ、そちらの対応をしております」

「団長は?」


 エマはメイドの時のいつもの優しい声色ではなく、低く凛とした声で尋ねた。女騎士はチラリと私を見た後、一瞬悩んだようだった。しかし、返答を遅らせないようにすぐさま返答を続けた。


「その、私たちの到着する少し前に落石があったようでそれに巻き込まれて……中に閉じ込められているそうです」

「そう……思ったよりまずいわね」


 エマは顔を顰めた。

 中に閉じ込められているだけで無事なのかと思っていたのに、何がまずいのだろう。私はエマの顔を静かに見つめた。私の視線に気が付いたエマは、あえて静かに落ち着いた口調で説明をした。


「爆発後なので、酸素が薄くなったり、有毒なガスが出ている可能性があるのです。恐らく、今は時間との勝負です」


 エマはそう言うと、落石の作業に当たっている騎士団の男性達を見つめる。

 私もその現場を見る。懸命に岩をどかしたり、砂を除けたりしているいる男性達の必死の形相に事の重大さを実感した。

 手足がどんどん冷たくなっていく。レオンハルトは無事なのだろうか。


読んで頂きましてありがとうございました。

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