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ただ隣にいたからという理由で俺様公爵の婚約者になっただけなのに、何故か溺愛されています  作者: minori


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32/50

32.好きな理由


「王女様は公爵様のどこがお好きだったんですか?」

「ん?」


 つい出てしまった言葉に、私ははっと口に手を当てる。


「すみません、失礼な質問でした。お忘れください」

「いや、別に構わない。好きな男のそんな話なら気になるだろうし。まぁ安心しなさい、お前の思うようなものではないから」


 王女様は私の質問に対して、飄々と表情を変えずに答えた。

 私の思うようなものではない? それってどういう事なんだろう。

 王女様は淡々と話し始めた。


「あれは元々優しい男ではあったんだ。亡き公爵に厳しく育てられたのと、色々あってあぁなっていったけど。私の小さい頃、よく遊んでくれたの。私が望んでいたのもあるけど、私と結婚してしまえば、楽になるかもと思ったのもあったんだ。特に前公爵が亡くなってから、アイツの周りにはいつも権力と金に飢えたハイエナのような奴等がいたからな」

「そうだったんですか……」

「だから、好きだったのかと聞かれると、そうだとも言えるし、そうじゃないとも言える。難しいな。どちらにしろ、大切な存在だったんだ。……あぁ、兄のような存在といえば一番近いかもしれない」

「へぇ。レオンハルトがお兄さん……」

「あぁ。あれで子供の相手も上手いんだぞ。よく私のお嫁さんごっこなぞに根気強く付き合ったりしてな。小さい頃から、レオンハルトと結婚するとよく言っていたんだ」


 幼い頃からきっととても可愛らしい王女様と、そんな王女様に振り回されるレオンハルトを想像したら、なんだか面白くて思わず笑ってしまった。

 王女様も当時を思い出してか、くすくすと笑っていらっしゃる。

 二人で顔を見合わせて、くすくすと笑った。

 笑っていらっしゃる中で、ふっと何か思い出したように表情を変えた。


「そういえば、明確に私のプロポーズを断るようになった頃があったな……」

「え? そうなんですか?」

「えぇ。前公爵が亡くなって当主となった後、戦争が終わって少ししてから。……まぁ、当主となるからだろうと思っていたけど、何か理由があったのかもね。いつもは適当に誤魔化していたのに、王女とは結婚できないってはっきり言われてさ。私もまだ幼いからピーピー泣いて。だから、びっくりしたんだ。あのパーティで婚約者が居るからなんて言ってセシリアを見せたから」


 そうだったのか……。何か理由があったのか、どうなんだろう。

 レオンハルトという男が未だ分からないが、変に誤魔化したり噓をついたりするような男じゃないのはなんとなく分かっている。

 本当に何か理由があったのかもしれない。その頃、好きな女や付き合った女性でも居たのか……。ありそうだな、あの見てくれだし。

 

 私が考え込んでいると、王女様はふっと笑って立ち上がった。

 私が王女様を見上げると、私に向けて微笑んだ。


「さて、そろそろ帰ろうかな。急に来てすまなかった」

「いえ、そんな。わざわざお越しくださり、ありがとうございました」

「いいや、私も会いたかったんだ。最後の結婚前のパーティを開いたら、きっとお前とは会えなくなる。寂しいな。セシリア、もっと早くお前と会いたかった」


 王女は私の手を握り、少し寂しそうに微笑んだ。

 私も王女がこんなに強くて優しくて、少し面白いお茶目な方だと知っていたら、もっと早くに仲良くなりたかった。

 着ていくドレスも無く、忙しかったからほとんどパーティなんて出た事が無かったのが仇となってしまった。でも、出会える機会があったとしても、貧乏男爵家の私と王女殿下が話す機会なんてほとんど訪れなかったのだろうけど。


 これも、レオンハルトが繋いだ縁といえば、そうなのかもしれない。


 王女様は無理やり私をベッドに横にしながら、掛布団をかけた。


「さぁ、横になりなさい。おやすみ。送りはいらない。色々と見られているから、帰りもこっそり男爵邸から出ていくの」

「そんな、王女様……」

「いいんだって。来られると、かえって目立つから困るんだ。だから、ここでさよならだ」


 王女は私が起き上がらないように、力強く掛け布団をぐっとかけた。

 この体勢のままですみません、と謝ると、王女は元はと言えば自分のせいだから気にするなと笑った。そして、軽やかな足取りで私の部屋から出て行こうとする。

 もう、王女殿下とこんな風に話せるのは、きっと今日で最後なんだろう。


 じっと王女の後ろ姿を見つめていると、部屋から出る少し手前で、王女が立ち止まった。


「なぁ」

「はい、なんでしょうか」

 

 私は体を起こして、王女を見た。

 王女は振り返り、星のように輝く笑顔で私に笑いかけた。


「お前も幸せになるよ」


 キラキラと輝く笑顔と王女の言葉に王女から視線を外せなくなっていた。

 王女は悪戯っ子のような顔をして笑って、私を見つめ返す。


「私も占い師なんだ、実は」


 王女はそう言って楽しそうに笑った。

 私もつられて、王女と同じく笑う。王女は笑いながら、ドアを閉じた。

 部屋にまた静寂が訪れる。

 楽しい時間が終わってしまった事を少し寂しく感じながら、私はしばらく王女が閉じたドアを見つめていた。


 翌日、王女のご結婚前最後のパーティの日取りが発表された。

 数か月後、王女がいつ隣国に嫁ぐまでの具体的な報道が新聞に取り沙汰されたのだ。

 つまり、私たちの婚約解消が可能な日がついにやってきたという事。

 紙面には昨日とは違うドレスを着て、輝く笑顔で手を振る王女様が居る。王女様を見つめながら、これからどうしていけば良いのだろうかと悩んでいた。


読んで頂きましてありがとうございました。

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