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ただ隣にいたからという理由で俺様公爵の婚約者になっただけなのに、何故か溺愛されています  作者: minori


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29/50

29.真実

 

 男爵邸に帰ると案の定、屋敷はメイド達の間で大騒ぎになっていたようだった。

 私が夕食を食べていなかった為、夜食を念のため用意し様子を伺った際に、開け放たれた窓と乱雑なシーツの跡を見て私の誘拐が発覚し、急ぎレオンハルトに報告をしたそうだ。

 おじい様とおばあ様には起きたタイミングで、私の無事を確認できなかったら報告しようと考えていたそうで、騒ぎにはしなかったそう。

 今は朝の6時少し前だから、まだ二人は起きてきていない。高齢の二人を驚かせたくなかった為、メイド達が機転を利かせてくれて助かった。


 なんだかようやくひと段落できたようで急に眠気が襲ってくる。

 目尻に涙が滲むほどの大きな欠伸をしていると、レオンハルトが小さく私の腕を引っ張りながら声を掛けた。


「おい」


 私はレオンハルトの方に視線を向けた。

 いつもと違う真剣な眼差しに、私は少したじろいだ。そして、レオンハルトの方に体を向け、向かい合う。


「少し、話せるか」

「はい……」


 レオンハルトを私の部屋に通し、二人で小さなテーブルを挟んで向かい合う。

 レオンハルトは紅茶と軽食を持ってきてくれたメイドが出ていき、しばらくしてから静かに話を始めた。


「鉱山の事、黙ってて悪かった。もし出てこなかったらがっかりさせると思って、見通しがついてから言おうと思っていたんだ」

「そうなんですか。……でも、なんで鉱山を。というか、よくわかりましたね。あの山が鉱山だなんて」

「近くの川で砂金が発見されているって話を聞いてな。辿ったところ、ヘイスティングス領の山が大元だと思って試してみたんだ」

「え、金!?」


 てっきり鉄だと思っていた。まさか金が出たなんて。

 椅子から立ち上がって驚く私を見て、レオンハルトの方が驚いたようで、少し私に怯みながらも説明を続ける。

 

「あ、あぁ……金と鉄だ。今のところ確認できているのは。あと、温泉も出てきた」

「温泉も!?」


 レオンハルトは花咲かじいさんの犬か何かだったの?

 掘れば当たる強運の持ち主……さすが公爵家の当主。持っている運さえ違うのか……。

 金と鉄だけでもすごいのに、温泉もだなんて観光業にも発展できそうだ。ここにきて、ヘイスティングス領の労働問題も片が付きそう。観光業なら旅館さえ出来れば、接客業とかで力作業の出来ない人達の働き口にもできそうだし、働き手はむしろ足り無さそうだ。近隣の領地の孤児院に声をかけても良いかもしれない。


 眠気も吹っ飛ぶほどの衝撃に私は目をぱちぱちと何度も瞬きをさせながら、レオンハルトを見つめた。眠気と疲労であまり働かない頭では、どういったリアクションを取れば良いかも分からない。

 レオンハルトは私の様子を見て、ふっと笑うと、いつもの自信あり気な顔で笑った。


「だから、お前が悩んでたヘイスティングス領の金策もグランツ公爵家の助力なく、今後はやっていけるんだよ」

「ありがとうございます……でも、どうしてそんな……」


 1か月もの間、そんなことを考えて動いてくれていたなんて。

 有難いけれど、レオンハルトの行動の真意が読み取れない。

 レオンハルトをじっと見つめていると、レオンハルトは珍しく少し真面目な顔をして私を見つめた。


「そういう問題もクリアして選んでほしかった」

「選ぶって何を……?」


 レオンハルトは私の問いに少し躊躇うような態度を見せた後、また私に視線を戻した。

 そして、真っ直ぐに私を見つめ、ぽつりと静かな口調で言う。

 

「俺を」


 真剣な眼差しで言われるが、何を選ぶと言うのか。

 私は首を傾げながら、再度レオンハルトに尋ねる。


「……? 公爵様を? 何に?」

「お前、あの胡散臭い司祭が好きだとか言ってたじゃねぇか。だから、金の問題とか王女の婚約とか色々問題がクリアになった上で選んでほしかったんだよ」

「ん? ちょちょちょ、ちょっと待って下さい? あの……つまり、え? どういう事ですか?」


 理解が追い付かないのだが、彼は何を言おうとしているのだろうか。

 一つの可能性が頭を掠めるが、そんなはずはない。とその可能性をまた打ち消すが、珍しく真面目な彼と表情と声に惑わされる。

 私はただただ、レオンハルトを見つめた。

 レオンハルトはフッと笑って、椅子から立ち、私の傍に回って跪いた。

 そして、私の手を取る。


「お前まだわかんねぇのかよ」


 レオンハルトにされるがまま、私は手の甲を彼に取られて固まってしまった。

 吸い込まれるような赤い瞳に囚われてしまったまま、動けない。


「お前の事が好きだから。俺を選んでほしくて頑張ったんだよ」


 レオンハルトはそう言うと、私の手の甲にそっとキスを落とした。

 何をされているか、何を言われているのか、何が起こっているのか理解が出来ないまま、私は呆然とレオンハルトを見つめる。

 レオンハルトはそんな私の様子にフッと笑って、立ち上がった。


「じゃあな。まだ少しかかりそうなんだ、落ち着いたらまた迎えに来るから待ってろ」


 そう言うと、手の甲に熱さを残して、彼は消えた。

 私はしばらく手の甲すらそのまま動かせず、固まってしまっていた。

 そして、ハッと意識を現実に戻し、衝撃の事実に再度頭が爆発しそうになる。


 え、私を好きになる要素っていつあったの!?


 手の甲に落とされた熱さは全身に広がっていく。

 鏡の中に映った自分の顔は、彼の瞳のような赤に染まっていた。


読んで頂きましてありがとうございました。

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