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ただ隣にいたからという理由で俺様公爵の婚約者になっただけなのに、何故か溺愛されています  作者: minori


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25.真夜中の襲撃者


 帰って早々おじい様とおばあ様に声を掛けられたが、気疲れしたからと言って部屋に籠らせてもらった。その内夕食の時間にもなり、メイドに声をかけられたが、お茶会でお腹がいっぱいになって食欲がないから、と断った。

 実際何も食べていないけど、なんだか食欲が湧かないのだ。


「鉱山が目的なら、普通にそう言えば良かったのにな……」


 静かな部屋でそうぽつりと呟いた。

 別にそれならそれで有難いのだ。うちの領地だって潤う。鉱山開発や鉄の精製に仕事だって出来る。今、仕事先に手をこまねいている教会の孤児達や、ユリアンの教会の孤児たちのような近隣の教会にだって力になれるだろう。

 別に隠さなくたって良かったのに。

 なんだか心がもやもやするのは、きっとこんなつまらない嘘をつかれていた事。人に嘘をつかれるのって、こんなにもしんどいものなのか。


 そんな事を考えている内にベッドの上でぼんやりとしている内に寝てしまったらしい。

 真っ暗な部屋を見る限り、もう夜もだいぶ更けたようだ。

 目を擦りながら体を起こすと、ベッドのそばに顔を隠した人物が立っているのを見つけてしまった。


「誰!?」


 私が反射的に人物に向かって叫ぶと、そいつは舌打ちをするなり、私の腹を殴り、怯んでる隙に口や目、手足を布で縛り付けた。何が起こっているのか分からないまま、急に担ぎ上げられ、窓を開ける音がした。そのまま、飛び降りるような感覚に怯え、体を縮こませる。

 地上に着くなり、謎の人物は私を抱えたまま走り、どこかへ放り投げた。

 どこかに閉じ込められたのかと思ったが、ゆっくりと地面が動き出すのを感じた。地面の匂いを嗅ぐと、木の匂いがする。どうやら荷馬車か何かに詰め込まれてしまったみたいだ。


 何が起こっているの。

 不安を感じたまま、私は身動きもできずにそのまま連れ去られてしまった。


***


 こういうイベントって誰かの好感度が最高級に上がってる時に発生するもんじゃないの、あと話の終盤とか。ゲームでいえば、まだ序盤も序盤なのになんで今こんな目に遭っているんだろう。

 そもそもこのゲーム、こういう連れ去りイベントとか無かったし。


 あまりにも長いこと荷馬車に揺られていた私は、かえって頭の中が冷静になっていき、こんなことを考えていた。

 しかし、本当に何故こんな目に遭っているんだろう。うちは別に誰かの恨みを買うような事はしていないし、おそらくレオンハルト関連だろうか。

 レオンハルトを脅すのに私を交渉材料にしようとか、そんなところだろう。馬鹿らしい、アイツが大事なのは鉱山であって私じゃないのに。


 そのうち、荷馬車は止まり、歩けと命令されて、私はまたどこかへ閉じ込められた。

 口元を苦しそうにしていたら、口の布は外してもらえた。叫んだところで、誰にも聞こえないような場所なんだろう。


「大人しくしていれば殺しはしない、そこにいろ」


 低い男性の声でそう告げられる。

 声の方向に向かって、私は問いただした。


「目的は公爵様?」


 男性の返事はない。まぁ、きっとそうなんだろう。

 私は男にそのまま噛みつくような勢いで言葉を続けた。


「お生憎様。公爵様は私じゃなくて、鉱山にしかご興味が無いの。私を人質にするのは見当違いだから、さっさと返して。メイド達もすぐに気付くわよ。わかったら、さっさと……」


 そこでお腹がぐぅ~っと情けない声を出した。

 私のお腹だ。恥ずかしい。男の方もうら若き令嬢が派手にお腹の音を鳴らしているのを気の毒に思ったのか、しばらく気まずい空気が流れる。


「……何か食べ物を持ってくる」


 男はそう言うと、パタリとドアを閉めた。

 私は恥ずかしさに俯いたまま、男を待った。そうだ、今日朝ごはんもロクに食べてなければ昼も夜も食べてなかったんだった。


 それにしてもこの声の人物は誰なんだろう。

 まぁレオンハルトの敵なんて多すぎるから見当もつかないけど、私が人質にならないと聞いてもあまり動揺している素振りを見せなかった。

 それにあの声、どこかで聞いたような……。


 そこであの新聞記事を思い出す。


 ”しかし、ここ最近二人の愛が冷え始めたと言う者もいる。”


 王女は新聞の記事についてリークしたのは、自分ではないと言っていた。嘘をついているようにも見えなかった。そして、何か粗相をすれば首を刎ねると言われているメイド達も言うはずがない。まぁ、そうでなくても皆良い人だからそんな事をする人は居ないだろうけど。

 そして、本当に記者の言う通りこれを発言した者が居るとして、レオンハルトの訪問が遠退いていた事を知る人物。それがもう一人居る事に気が付いた。


 しばらく待っていると、キィとドアが開いた。

 良い匂いがする。

 私の目の前に腰を落としたような気配がした。

 

「口を開けろ。パンと簡単な食事を買って来た」


 不愛想な声でそう言う男に、私は静かに要求した。


「目も外して頂戴」


 男はしばらく黙っている。

 正体がバレたくないのだろう。正体がバレたくない、という事は私が知っている人物だという事だ。

 私が見てわかる人物、そしてレオンハルトの訪問が遠退いていた事を知る人物は一人しかいない。

 私は更に静かな口調で言葉を続けた。


「もうあなたの正体に検討はついているから。無駄だから外してと言っているのよ」


 私の発言に空気が変わったのを肌で感じる。

 緊迫した空気が小屋の中に充満していった。


読んで頂きましてありがとうございました。

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