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ただ隣にいたからという理由で俺様公爵の婚約者になっただけなのに、何故か溺愛されています  作者: minori


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24.レオンハルトの嘘


 王女の問いに答えられないまま、ずっと黙り込んでしまった。

 レオンハルトに嘘をつかれている。まだ深い付き合いでもない私でも分かってしまった。

 嘘をつかれたらやめた方がいい別れろ、と言われた手前どう答えたら良いか。それに、私自身、まだ消化できていないのだ。何故、レオンハルトは私に嘘をついたんだろう。

 王女はしばらく黙り込んでいる私を見て、ふぅと小さく息を吐いた。


「……まぁ、もうどうでもいいんだ。あがいてみたが、ダメだったんだし」

「ダメだった?」

「そろそろ発表されるし、お前なら良いか。婚約が決まったんだ、隣国の王子と」

「それは……おめでとうございます」

「ふん、皮肉か?」

「いえ……そういうつもりじゃ……」


 伏し目がちに否定する。

 そうか、ご婚約が決まったのか。……じゃあ、私たちの婚約も解消となるな。

 ようやく自由になれる、という瞬間なのに、思ったよりも嬉しくない。王女の望まない結婚も、少し切なそうな顔も、私自身のこれからも、レオンハルトとはもう会わなくなるのだろうという事も。すべてが心に少しずつ小さな重りを乗せていくような、そんな感覚になる。

 色々なことを頭の中で巡らせて顔を伏せていると、王女はまた紅茶を飲み、疲れたような口調で話し始めた。


「まぁ良い。私もお前も自分と言う人間を求められての結婚ではないのだから。いつも女は政治の道具にされる。本当にうんざりするな。……まぁ、言ってみればお前と私は同じ穴の(ムジナ)だ。狢同士仲良くしようじゃないか」


 自嘲気味に笑いながら話す王女の言葉に、私は顔を上げた。

 ”政治の道具”にさせられている? それってどういう……。


「すみません、それってどういうことでしょうか?」

「まさか、まだ知らないのか?」


 王女は目を見開いて私を見た。王女自身も大変驚いているようだ。


「レオンハルトがこの1ヶ月何をしていたのか」

「はい……」

「呆れた。まぁ私があんな風に言ったから怖くて聞けなくなったのか。好いた男に嘘をつかれて、その嘘を暴くのは私でも難しいだろう」

「そんなつもりじゃ……」


 別にレオンハルトの事なんて好きでもないし。

 ぐっとその言葉をこらえながら、王女を見据える。王女は私を見ながら静かな口調で、レオンハルトのついた嘘というものを説明し始めた。


「武器だよ。ヘイスティングス領はとんでもないお宝を持っていたようだ」

「武器? うちの領地にそんな……」

「鉱山だよ」


 鉱山? ヘイスティングス領地のあの山ばかりでなんもないと思っていたあの山が、鉱山だったという事? 

 それに、そんなのゲームにも出てこなかったけど……。

 ただ、そう言われて思い出したことがある。レオンハルトが会いに来なくなった前日、レオンハルトの部屋の机の上に本や地図が散乱していたのを思い出した。あの頃には計画が始動していたという事なのだろうか……。

 私が戸惑っていると、王女はそのまま説明を続けた。


「レオンハルトはずっと掘り進めている。それも無事に会得できそうなようだ、良かったな。領地が潤いそうで」

「そんな……私のところにそんな話上がっていないのに」

「秘密裏に進めていたのかもな。パーティでの婚約宣言も、キスも、このためのものだったのかと思うと、途端に陳腐に感じる。レオンハルトがそんなことをするとは思わなかったのに。……戦争に行って、変わってしまったのかな」


 王女が物憂げな顔をして残念そうにつぶやいた。

 いや、そもそもアレ、キスじゃなくて人工呼吸と言う立派な医療行為なんですけど……。

 でも、あのただの山々が鉱山だったなんて。色々な衝撃で頭がぐわんぐわんと揺れていくような気がする。

 その中で、嘘の中の真実に辿り着いてしまった。


「あぁ、だからか……」


 なるほど、だからあんな頑なに婚約解消しなかったのか。アイツは。

 さーっと血の気の引いていく感覚があった。いや、元々レオンハルトが私と婚約なんてしたがるはずないと分かっていたんだけど。目的がこれだったのか。

 たしかに婚約解消したら、武器の作れる材料が簡単に手に入らなくなる。私と婚姻を結んでいた方が、好きにできるという事だったのか。

 やはり”戦争狂”という名に彼は相応しいようだ。武器の為に、ね。なるほど。そうか……。


「……大丈夫か?」


 ぼんやりと考え込んでいると、王女が心配そうに声をかけた。

 私はハッと意識を現実に戻し、愛想笑いを浮かべる。


「は、はい……すみません、ぼうっとしてしまって」

「いい。私が色々と余計な事を言い過ぎたようだ。疲れただろう。今日はもう帰りなさい」

「はい、ありがとうございます。失礼いたします」


 私は王女様に丁寧にお辞儀をすると、そのまま王城を後にした。

 せっかくの王城なのに、辺りを見回しもせず、ぼんやりと歩いてしまって、気が付けば馬車に乗っていた。

 馬車に乗りながら、ぼんやりと外を眺める。

 彼が婚約解消をしないのは、鉱山の為。武器の為。戦争の為。

 これから、彼とはどう話し合えば、私はレオンハルトとの婚約が解消できるのだろうか。


読んで頂きましてありがとうございました。

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