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ただ隣にいたからという理由で俺様公爵の婚約者になっただけなのに、何故か溺愛されています  作者: minori


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23.お茶のお誘い


 あの新聞の一騒動から一晩が経った。

 ユリアンにお詫びの品と手紙を届けてくれたメイドからは、小さな手紙を渡された。ユリアンからだ。急いで書いたのであろうが、文字にずれのない几帳面で綺麗な文字だった。


『セシリア様

 ご丁寧なお手紙と子供達への寄付、大変ありがとうございました。皆喜んでおりました。

 新聞の事でしたら、気になさらないでください。田舎町のカルムに押しかけてくる人も居りませんし、村の人は皆分かって下さっております。たったこれだけの記事で揺らぐような立場だとしたら、私の未熟さのせいですので。

 セシリア様こそ、色々と気を揉まれる事が多いかと思います。私の立ち振る舞いが未熟なせいでご迷惑をおかけし、申し訳ございません。どうか早く穏やかな日常が戻られることを祈っております。』


「あああああああああああ、ユリアン様はぜんっぜん悪くないのに!!」


 私はベッドにダイブして、ゴロゴロとユリアンの手紙を胸に抱きながら一頻り暴れた。

 こんなの建前で本当はえらい騒動になっているのなんて、言わなくても分かっている。実際、メイドからも本当は教会がざわざわとしていた事も聞いた。

 本当は目の前で土下座したいくらいの気持ちだが、かえって面倒を引き起こすから会いにも行けない。最近の癒しでもあったユリアンに会えないだなんて……。

 頭がどうにかなりそうだ。この先、一体どうしたらいいのやら……。そう悩んでいるところに、ドアがノックされる音が部屋に響いた。どうぞ、と声を掛けるとすぐにドアがガチャリと開く。


「セシリア様、失礼いたします。あの、お手紙が……」

「手紙? ……え、これって」

「はい、王室からでございます」


 メイドから渡された手紙の紋章を見て、ギョッとした。

 王室の紋章だ。こんな手紙、初めて見た。椅子に座り、ふぅと息を整えて慎重に封を開ける。


「お茶のお誘い……王女様からだわ。え、しかも明日!?」

「随分と急ですね」

「……まぁ、想像はついてるけどね」


 はぁ、とため息をつく。

 レオンハルトといい、王女といい、私の周りには周りの都合等気にすることも無く振り回してくる奴等が多すぎる。

 しかし、王室からの手紙を無視する訳にもいかない。メイドに準備を頼むと、お任せくださいと張り切った表情でパタパタと準備を始めた。レオンハルトがドレスやアクセサリー等、王室に行っても良さそうなものをプレゼントしてくれたことがこんな風に役立つだなんて。いや、そんな機会なんて無い方が良かったのだけど……。


 王女、今頃水面下で進められていた縁談が固まり始めた頃だろうか。

 恐らく、そろそろ王女のご婚約が記事になる時期な気がするのだが、一体どうなる事やら。

 ゲームでは他国へ嫁いだ王女は大変なおしどり夫婦になっていた。あんな面倒くさい男と一緒になる為にこんな事しなくていいのに。

 私は大きくため息をつく。何を言われるのだろうか、胃がキリキリと痛い……。


***


「ふむ、来たか」

「王国の輝く星にご挨拶申し上げます」

「堅苦しいのは良い、座りなさい」


 翌日、王女のお茶会のお誘いに誘われた私は、時間通り、王女の元へと訪問した。

 王女に挨拶するなり、王女はにこりともせず、手を挙げて人払いをし、早速私を座らせた。

 相変わらず冷たい印象を持たせるが、とても美しい女性だ。静かに音もなく優雅に紅茶を飲むと、カップを置くなり私を見つめた。


「随分な騒動となっているようだな」

「お騒がせしております」


 王女は私の返答にくすりと笑って、また紅茶を一口飲む。

 

「すまないな、私を追っていたのが面白い話を嗅ぎつけたと思ってそちらに行ってしまったらしい。不本意だったのだ、許してくれ」

「そう、でしたか……」

「だから変装して行ったんだがな、本当ハイエナのような奴等だよ」


 そう言うと、王女は自嘲気味にふっと笑う。どうやら、今までも随分と苦労されてきたご様子だ。

 しかし、正直意外だった。ずっと、王女様が差し向けた記事だと思ったのに。どこかから漏れた話だと思っていたけれど……。まぁでも記者の書き方なんて、そんなものだろうか。

 色々と考えているだろう私の表情を見て、私の考えを悟ったのか、王女はくすりと笑って私を見た。


「私のせいだと思っていただろう」

「いえ……公爵様は良くも悪くも注目されるお方ですので。それに、遅かれ早かれこのような事態にはなっていたかと思いますし」

「お前も肝の据わった女だな」


 王女は楽し気に笑った。

 好きな相手の恋敵にここまでどっしりと構えて応対できる王女こそ肝の据わった女性だと思うが。王女のせいだと決めつけていた私は、どう遠回しに責めてやろうかと脳内で色々なパターンをシュミレーションしていた。それが、予想外に素直に謝られて、王女も不本意な結果だったと知ったら、今日はどのような立場で居たら良いか悩んでしまう。

 私が静かにまごついていると、王女は私の様子を見計らってか、言葉を続けてくれた。


「まぁ、迷惑をかけたから一言言っておこうと思ってな。今日は呼び出したんだ。それに、私の忠告を聞いたくせに、まだ別れていないようだったしな」


 王女の言葉にピクリと肩が揺れる。

 王女がそれに気づき、ふっと小さく笑った。

 

「どうだ、嘘をつかれていたんだろ?」


 私は王女の目線から目を反らした。王女はそれを見て、ニヤリと笑う。

 悪いことをしている訳ではないのに、心臓が嫌にドキドキと大きく速く鼓動を打った。


読んで頂きましてありがとうございました。

今日はあと2話更新する予定です。

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