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ただ隣にいたからという理由で俺様公爵の婚約者になっただけなのに、何故か溺愛されています  作者: minori


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21/50

21.大切にするという態度


 静かに睨み合う二人の男性を前にして、私はただ立ち尽くしていた。

 中に入ってはいけないような緊迫感が漂っている。


 そして、静かにユリアンが口を開いた。いつもの穏やかな口調ではあるが、目にはいつもの優しさを感じない。


「公爵様、ご婚約者様の事は大切にしてあげてください」

「あぁ? なんだと?」

「公爵様のお話で、セシリア様が昨日大変な目に遭っていたんですよ」

「……そうなのか?」


 レオンハルトが私を見た。

 レオンハルトが大声でユリアンを突き飛ばした事で、騒ぎとなってしまい、ちらほらと人も見える。私はそっとレオンハルトの元に近づき、レオンハルトにこっそり耳打ちした。


「……昨日、王女様がユリアン様と一緒に居た時に私の前に現れたんです。私にレオンハルトと別れろって圧をかけてきたところ、ユリアン様がかばってくれたのよ。それなのに、一言も言わずに昨日帰ってしまったから、無事なこととお礼を今日は言いに来ただけなんです」

「なんで言わなかったんだよ」

「言うタイミングなんてそもそも昨日ありました? 無理やり馬に乗せて、家に着いたかと思えばすぐに帰っちゃったじゃないですか!」

「それは……」

「いつも公爵様が考えもせず色んな事をして、こちらの話も聞いてくれないからこうなっているんじゃないですか」


 私の言葉にレオンハルトはぐっと言葉を詰まらせた。

 私はレオンハルトに畳みかける。


「さ、ユリアン様に言う事は?」

「あ?」

「勘違いして怒った挙句、お世話になっておいて怪我までさせたんですよ! さ、何か言う事は?」

「……悪かったな」

「ごめんなさいでしょ!! ちゃんと謝りなさい!!」


 私がそうレオンハルトに怒ると、ユリアンは私たちを見てぷっと吹き出してくすくすと笑いだした。


「ふふふ、なんだかしっかり者の姉と弟を見ているみたいですね」


 ユリアンの言葉にレオンハルトはまた顔を顰めた。

 まだユリアンにそんな態度を取るのか。私はぎゅっとレオンハルトをつねってやった。イッテ、と小さく悲鳴を上げてレオンハルトは私から飛び退く。静かに睨み合う私たちを見て、ユリアンはくすくすと笑う。

 レオンハルトはそんな様子のユリアンに視線を戻すと、ユリアンはその視線に気づき、いつもの穏やかな笑顔でレオンハルトに穏やかな口調で諭した。

 

「大切なら、相応の態度と行動が必要ですよ」


 そう言われたレオンハルトは、むっとした表情をしたまま、また私を無言で昨日のように乱暴に担ぎ上げた。米俵のように乱暴に抱えられるが、この世界のヒロインなんだし、せめてお姫様抱っこにしてほしい。大切にするなら相応の姿勢が必要だと言われた途端これだ。多分こいつの耳には大量の綿でも入っているんだろう。

 私はおろせと背中をバンバン叩きながら、抵抗するが、屈強なレオンハルトの体幹はびくともしなかった。

 そのまま、教会の入り口に待たせている馬の元へと歩いて行く。チラリとユリアンの方へ振り返って、小声でレオンハルトがユリアンに一言ぽつりと言った。


「……昨日はありがとな」

「いいえ」


 ユリアンは穏やかな笑顔でそう返す。

 私がユリアンに担がれた情けない格好のまま、ごめんなさいと手を合わせながら遠ざかっていくと、私を見て苦笑しながら手を振ってくれた。

 本当にユリアンには申し訳ない。ずっと振り回してしまっている。

 馬の前に着くなり、昨日と同じようにレオンハルトは乱暴に私を馬に乗せた。


「ほら、昨日と同じようにちゃんと掴まれよ」

「わかりました。……そういえば、なんで公爵様ここにいるんです?」

「家に行ったら、お前が司祭のところにいるって言うから」

「何か用でした?」

「昨日ちゃんと話せなかったから顔出した」

「お忙しいのに?」

「顔出せって言っただろ」


 本当に融通の効かない人だな。私は思わずため息をついた。

 相変わらず物事の本意を感じてくれないのか、私に伝える力が弱いのか。私は改めてレオンハルトに説明をした。


「別に忙しい時に無理に顔を出さなくてもいいですし、おじい様やおばあ様やメイドさん達が私にものすごく気を遣うような対応をするような状況にしなければいいんです。どうかしたのかと思われるでしょう、1ヶ月急に音沙汰が無かったからずっと心配されていたんです。……あ、でも解消するから不仲になったと思われた方がいいのか」


 私が腰に抱き着きながら一人で話しながら納得していると、レオンハルトが馬を走らせ始めた。そして、馬を走らせながら向かい風に対抗するように大きな声で話す。


「婚約解消はしねぇよ!」

「だから、別にしていいですってば!」

「本当お前は可愛くねぇ女だな!」

「可愛くないなら尚の事解消すればいいじゃないですか!!」


 風と蹄の音に負けないように怒鳴り合う私たちを、面倒くさい二人だななんて顔をしながら馬が懸命に走っていく。

 結局この口論は家に着くまでずっと止むことがなかった。


読んで頂きましてありがとうございました。

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