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ただ隣にいたからという理由で俺様公爵の婚約者になっただけなのに、何故か溺愛されています  作者: minori


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2.公認の仲


「セシリア、素敵な方と一緒になれて……本当におめでとう」

「お前が目覚めるまで傍に居させてほしい、とレオンハルト様が仰った時はもうワシは感動して……」


 やられた……。先手を打たれていた。


 早速おじい様とおばあ様のところへ来るや否やこれだ。

 何を説明されたのかわからないが、レオンハルトと結婚というのも恋仲だということも知られているらしい。嘘だけど。

 とにかく、傷は浅い方が良い。早いうちに誤解だと話そう。


 私は意を決して、おじい様達をキッと見据えて話そうとした。


「あの、おじい様。おばあ様……」 

「良かったなぁ、うちは貧乏男爵家だからお前にまともな婿先を見つけてやれないと思っていたんだが、あんな素敵な方と結ばれて……しかも恋愛結婚だなんて」

「もう、泣きすぎですよ……あなた」


 祖父は涙と鼻水でハンカチをボロボロにしながら泣いている。おじい様を慰めているおばあ様も先ほどから涙を静かに流し続けていた。言えない……。恋愛結婚でもなければ、婚約破棄をしたいだなんて言える空気じゃない。


 うちは貧乏男爵家だ。

 お父様もお母様も早くに亡くなり、私の祖父母が親代わりとなり面倒を見てくれていた。

 貴族と言っても名ばかり貴族で、歴史こそあれどお金なんて全くない。領地運営を必死こいてようやく成り立たせているような弱小貴族だ。

 今じゃおじい様やおばあ様も年齢も年齢なので、実質の運営は私が行っている。

 そんな男爵令嬢であるセシリアのひたむきで素直で努力家なところが攻略対象達の目に留まっていき、恋に落ちていくというストーリー。


 ゲームではエピローグシーンで一言だけだったけど、おじい様もおばあ様も私の結婚先については生活している中でずっと心配の声を上げていた。

 たしかにうちと結婚してくれる人間なんてそうそういないだろう。貧乏だし、家だって古いし、家畜だって全然いないし……。 


 おじい様、おばあ様。これからいくらでも殿方と出会って私にはレオンハルト以外とも幸せな道があるんです。なーんて、言ったら頭がおかしくなったのかとも思われそうだし、どうしたものか。


 そこにおじい様が持病の咳で呼吸が荒くなった。

 急いで水を持ってくる私とおばあ様が一生懸命おじい様の背中をさすっている。


「ゲホッゴホッ……はぁはぁ、ありがとう。でも、死ぬ前にお前の花嫁姿が見られそうで本当に良かった。これで何も悔いを残すことがない。幸せになってくれ。本当にお前には苦労ばかりかけて……」


 あああああああああああ、絶対に言えない!!

 おじい様、あの人となんて幸せになれる気がしないんですなんて絶対に言えない!!

 婚約破棄させてくださいなんてもう本当に言えない!!


 私は膝をついて、おじい様の手を握り、優しく微笑んだ。


「おじい様、安心してください。セシリアは幸せになります……」


 こうなったらもう、レオンハルトの筋書きに一旦乗るしかない。

 そして、ユリアンと出会ったら猛アタックして運命の人を見つけたと言っておじい様とおばあ様に納得していただこう。信心深いおじい様とおばあ様のことだ、きっとユリアン様と結婚と言っても大喜びしてくれるはずに違いない。


 私は覚悟を決めた。

 このレオンハルトの茶番劇に一旦乗ってやる、という覚悟を……。


***


「なんなのよ……これ……」


 翌朝。起きてみると、まぁなんという事でしょう……。

 穴の開いた屋根や、そのうち直そうと思っていた抜けてしまっていた床を大工さんがトントンと修復し、何度も洗濯をして色褪せたカーテンは重厚で美しい生地のものに。

 おはようございます、とにっこりと美しいお辞儀をするメイドも何人か。何やらおいしそうな匂いまで漂っている。うちには使用人も居なければ、こんなに美味しそうなごはんの匂いをさせる食材なんてものもないのに……!


 何が起こっているのか分からないまま、私はおじい様とおばあ様の寝室へ駆け込んだ。


「おじい様、おばあ様!!」

「あぁ、おはよう。セシリア」


 おじい様は何やら医者に診てもらっているようで、胸に聴診器を当てられている。

 何が起こっているのかわからないが、騒ぎ立ててはいけないタイミングなんだという事だけは理解した私は黙っておばあ様の隣に座った。

 医者が聴診器を外し、診断をして薬を渡し、親しみ深げにぺこりとお辞儀をして出て行った。その瞬間、私はおじい様とおばあ様に詰め寄っていく。


「どういうことなんです!? これは!!」

「あぁ、レオンハルト様だよ」

「れ、レオンハルト……様?」


 おじい様はいつもより少し血色の良い顔で、嬉しそうに笑いながら答えた。


「レオンハルト様が妻となる人の実家は自分の実家でもある、なんて言って遠慮したのに綺麗に整えてくださったのよ。あなたがお嫁にいったら高齢の私達だけが残ると困るだろうって使用人の方々まで。本当に優しい方と出会えて幸せね。セシリア。あなたをこんなにも想って下さる人とのご婚約だなんて、私……」

「ばあさん、そんなに泣くな」


 今朝はおじい様がおばあ様を慰めている。

 そういえば、おばあ様の恰好も普段とは違って美しいドレスに変わっている。

 おじい様もきっと腕の良い医者に診て頂いて、いただいた薬を飲めば今のこの咳も良くなっていくのだろう。


 またしてもやられた……。

 完全に外堀を埋められている。

 さすが戦争狂と呼ばれた男、なかなかの戦略家だ。


「そうそう。今日デートなんですってね。レオンハルト様が素敵なドレスを送ってくださったそうよ。あなたが起きたらメイドの方々に仕度をしてもらえるようにってしてくださっているの。楽しんできなさいね」


 おばあ様がそう言うと、扉の前で控えていたメイド達がにこにことした笑顔で私に丁寧にお辞儀をする。

 私は口元をひくひくと痙攣させながら、無理やり笑顔を作り、メイド達の案内されるままに従って着飾ることとなった。


読んで頂きましてありがとうございました。

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