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ただ隣にいたからという理由で俺様公爵の婚約者になっただけなのに、何故か溺愛されています  作者: minori


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17/19

17.厄日


 私が発した一言にユリアンは驚き、目を見開いて私を見ている。

 私も少しして自分が何を言ったしまったのか自覚して、ハッとした。

 あぁ、やってしまった……!


「ごめんなさい、言ってはいけない事を……すみません、忘れていただけないでしょうか」

「貴族の方の事情は分かりかねますが、他言はしないのでご安心ください」


 私が慌ててそう言うと、ユリアンは落ち着いた調子でそのように言ってくれた。

 婚約をしているフリをしていると司祭様の前で言うなんて、とんでもない事をしてしまった。こんな事聞かされて、ユリアンだって困るだろうに。


「本当にごめんなさい」

「いえ、でも……それにしたらおかしいですね」

「何がです?」

「公爵様は明らかにセシリア様がお好きなように見えましたよ」

「そんな事あるわけないじゃないですか。ふふ」


 ユリアンの言葉に乾いた笑いが出る。

 

「そうだとしたら、1か月も会わないままでいるなんてことしませんよ」


 ユリアンは私の言葉に口を噤んでしまった。

 あ、気を遣わせてしまった、と気が付いた私は慌てて言葉を続ける。


「あの……すみません、自分で言うのもあれなんですけど、気にしないでくださいね。元々、私は公爵様のような自分勝手で派手な人は好きじゃないんです。だから、別になんとも感じていません。急に会いに来なくなった事は確かに少し気になりますが、それだけです。本当に」


 なんだか自分でも言っている内にすごく言い訳をしている気分になってきた。

 本心で言っているんだけど。

 ユリアンは私の言葉をただただじっくりと聞いて、うんうんと頷いて最後にいつもの慈悲に満ちたあたたかな笑顔で一言と言ってくれた。


「わかりましたよ」


 余計に何か言おうともせず、ただ一言だけそう言って、ユリアンは少し冷めたホットサンドを口に入れた。

 穏やかな口調で言われたたった一言に、とても救われた気がした。ユリアンのこういった穏やかで優しいところが好きなんだよな、と私もホットサンドを口に入れる。少しチーズが固くなっていた。

 思えば、ユリアンは私の話をいつも聞いてくれる。司祭様の職業病なのだろうか。そして、その優しさについ私も甘えてしまったんだろう。

 ゲームでユリアンは村の人によく好かれる素敵な司祭といった設定だったが、本当にその通りだなとユリアンに感謝した。これは好かれるはずだ。

 私は改めて、ユリアンにお礼を言った。


「ありがとうございます、いつもユリアン様には助けていただいてばかりですね」

「そんな事ないですよ、私もセシリア様には頂き物をしたり、買い物に付き合っていただいたりしましたから」

「そんな事……」

「私にとってはあの日、最後に見れた子供たちの笑顔は一生の宝物です。その宝物をくださった方はセシリア様なんですよ」


 そう優しく笑うユリアンの笑顔に顔が熱くなる。

 初めて会ったユリアンに何かをしたい、と咄嗟にしただけのことだったのに。なんだか申し訳ないけど、少しこそばゆいような気持ちだ。


 また、口を開こうとした時、私たちの目の前に黒いマントを目深に被った人間が立ちはだかった。

 急に訪れたただならぬ雰囲気に戸惑っていると、先にユリアンが立ちあがり、私の前に出る。


「どうかされましたか?」


 柔和な笑顔で謎の人物に対峙する。

 私はユリアンに逃げようと裾を引っ張ろうとすると、ユリアンは笑顔のまま私の方に少し顔を向けて、小さく首を振った。


「ちょっといいかしら」

「はい、なんでしょう」


 マントの人物は女性だったようだ。

 女性の強い口調にも動じないまま、ユリアンは柔和な笑顔で対応し続ける。


「あなたじゃないの、そこの女に用があるのよ」


 女性の声が低くなった。

 私に用……? この人は一体誰なんだろう、もしかしてレオンハルトの新しい恋人とか? ……いや、アイツの事だから前の女とか、恨みを買っている場合もあるかも。


 私が狼狽えている中、ユリアンは柔和な笑顔を崩さないまま女性への対応を続けた。


「申し訳ございませんが、これから私たちは予定がありまして……」


 ユリアンがそう返答した時、風が強く吹いた。

 目深に被ったマントが揺れ、女性の口元が少し見えた。

 紅い唇に左下の黒子、それにこの声。私はマントの人物に思い当たり、パッと立ち上がる。

 ユリアンが私をチラリと見た。私はユリアンを見て、小さく頷いた。


「すみません、知り合いです」


 小さな声でそう言うと、ユリアンが怪訝そうな顔をした。

 少し悩んでいた様子だが、ユリアンはそっと私の前から少し横にずれて道を開ける。


 私は女性に近づき深々とお辞儀をした後に、静かな口調で女性に尋ねた。


「二人きりの方がよろしいですよね?」

「えぇ」


 女性はその後ツカツカと歩いていく。それに私も着いていった。

 ユリアンが心配そうに見ているのを、私は振り返ってにこりと微笑む。心配いらない、といった表情で。ユリアンはそれでも心配そうな顔をしたままだったが、私は女性についていった。


 ユリアンに婚約解消のことがバレたり、今日は散々な日だな。

 女性に気付かれないように、小さくため息をつきながら私は静かに女性の後ろを歩いて行った。


読んで頂きましてありがとうございました。

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