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ただ隣にいたからという理由で俺様公爵の婚約者になっただけなのに、何故か溺愛されています  作者: minori


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16.音沙汰のない日々


 花畑に着くなり、私はそっと花を摘み始めた。

 うちのお金じゃレオンハルトがくれたような立派な花束は贈れないから、せめて手間をかけようかと思ってきたけれど、綺麗な花束を作るのって結構大変なのね。

 色合いやどの花を選ぶかを悩みながら摘んでいたら、メイドが一緒になって綺麗に包み始めてくれた。


「ごめんなさいね、素直に花屋さんに行けば良かったわね」

「いいえ、セシリア様がきっと真心を込められたいんだろうなと。私はそれがとても嬉しかったです」


 私が摘んだ花を綺麗に整えて花束にしているメイドの手が汚れているのを謝ると、爽やかな笑顔でそう返してくれた。

 すべて見透かされていたのか、すごいなグランツ公爵家のメイド。

 一通り花を集め終わり、花束を作って少しゆっくりした後、私たちは早々に帰宅した。

 メイドは花束を大事そうに抱え、メッセージカードを花の中にそっと入れて、大切にお送りしますねと言って、うきうきとした調子で部屋から出て行った。

 多分、この花束を贈れば、何かしらアクションがあるだろう。


 そう思っていたのだが、レオンハルトはやはり何も返事すらないまま更に、1週間の時が経った。

 1か月、もう彼に会えていない。


***


 さすがにおじい様もおばあ様も1か月婚約者の訪問がない私に、「きっとお忙しいのよ、だって公爵家の当主様だもの」とフォローを入れてくださるようになった。

 私としては別に会えないところで、特になんとも思わないのだが、急に1か月も会えなくなるのは流石に気になってしまう。


 新聞を見ても何かきな臭い話があったりもしないから、戦争に行っているとかそういう訳でもなさそうだ。では、レオンハルトは一体何をしているんだろう。

 カードを送っても返事もないくらいだ。

 あの自分勝手男の事だから、もしかしたら素敵な女性に会って、その女性との連日の逢瀬に明け暮れているのかもしれない。

 それならそれで、婚約解消してくれたらいいのに……。


 あぁ、でも王女様のご婚約が発表されていないからか。

 それに、うちの金回りも良くなったわけじゃない。急に援助の中断をされたら、正直困ってしまう。

 ……これは本格的に動き出さなければ、でも何をしたら良いだろう。


 仕事をしながら、ふぅとため息をつく。

 メイドがピクリと反応する。カード付の花束を贈っても反応が無い事を気にしているようで、最近はいつもより私の挙動を心配そうに見ているようだった。


「ちょっと出てくるわね」

「はい、いってらしゃいませ」


 にこりと笑顔で微笑んでくれる。

 責任を感じさせていたら申し訳ないな、と気にしないように声をかけようかと思ったが、かえって気を遣わせてしまうか、と思い直して、ただにこりと笑って部屋を出た。

 何か案を練らねば……そんな気持ちで、とりあえず街へ出た。


***


「あれ? セシリア様?」

「あ、ユリアン様」


 ちょうど街に行くと、ユリアンとばったり出会った。

 でも、心が躍るというわけでもなく、ユリアンの優しく穏やかな佇まいを見てほっと安心するような感覚だ。

 なんだか疲れているのかもしれない。あのレオンハルトの無理矢理なデートスケジュールは意外と気分転換になっていたのだろうか。


「お久しぶりですね、今日はお1人で?」

「えぇ、ユリアン様も?」

「はい、今日は久しぶりのお休みで。少し気分転換に」

「そうだったんですね。……あの、良ければご一緒してもよろしいでしょうか?」

「えぇ、もちろん!」


 ユリアンは人の良い笑顔で私の提案に頷いてくれて、ふっと力の抜けたような感覚になる。

 今はなんとなく、ユリアンの優しさを感じていたかった。


 一通り街を巡る。

 カルムに来てからもう少しになるが、田舎町の穏やかな空気感と人柄に慣れて落ち着いた日々を過ごしているそうだ。

 そんな話をしながら街を巡り、最近できたという店をユリアンから紹介してもらい、軽食を買って人の少ない公園に場所を移した。


 チーズがたっぷりと入ったホットサンド。

 正直前世だったら珍しくもないが、こちらの世界では物珍しいようで今流行っているそう。

 そうか、こちらの世界にない前世の何かを作ったら、良いお金儲けになるだろうか。

 そんな事を考えながら無言でホットサンドにかぶりついていると、ユリアンはにこにこと笑いながら私に尋ねた。


「あれから公爵様とはいかがですか?」


 レオンハルトの事を尋ねられ、かぶりつこうとしていた口をぴたりと止める。

 どう言おうか少し迷ったが、ユリアンには正直に話す事にした。


「それが……会えていないんです、花束やカードを送ってもみたんですが音沙汰なく……」

「え……あっ、そうだったんですか。公爵様もお忙しい方ですから、きっと落ち着いたら顔を出されますよ」


 またこの顔だ。

 何てことない事なのに、皆こうやって気の毒そうな顔をした後に、勝手に励ましてくるのだ。

 ただ私を気遣ってくれているだけなのに、この表情や態度が何故こんなに心がささくれるような気持ちになるんだろう。

 

 私はその気持ちを見ないように、早口で少し強い口調でいつの間にか言葉を発してしまっていた。あんな男の事なんて、知ったこっちゃない。そんな気持ちが強く前に出てしまった。


「きっと、飽きられたんです。元々王女様とのご婚約を回避する為に結ばれた婚約でしたし、新たに婚約されたい好きな女性でもできたんでしょう」

「そう、だったんですか」

「あ……」


 つい言葉が出てしまった。

 なんでこんな事を言ってしまったんだろう……。


読んで頂きましてありがとうございました。

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