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ただ隣にいたからという理由で俺様公爵の婚約者になっただけなのに、何故か溺愛されています  作者: minori


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11.花畑、サンドイッチ、ピクニック、両親


「ちょっと! なんなんです、今日の態度は!!」


 お風呂上り。

 少し経ってメイドさん達が去った後、私は早速レオンハルトの部屋へ行き、彼に今日のあまりの酷すぎる振る舞いや態度について話をしに来た。

 今までだって酷い対応をされていたなと思うけど、今回はもう堪忍袋の緒が切れたのだ。俺様公爵でも機嫌が悪いでもどうだっていい。話付けてやる。


 レオンハルトは私の訪問が予想外だったみたいで、慌てた様子だ。

 

「ばっ、お前こんな時間におしかけてくんなよ」

「今バカって言おうとしたでしょ! とにかく、今日の事についてご説明願います!」

「分かったから落ち着けよ」


 レオンハルトはそう言うと、私を自室に入れてくれた。

 この家は全体的に大きいけど、レオンハルトの部屋も大変広い。うちのダイニングルームがレオンハルトの部屋くらいの大きさなのではないだろうか。

 机の上には沢山の書類や本、地図が散らばっている。今ほどまで仕事をしていたような形跡があった、こんな夜まで仕事をしていたのだろうか。

 仕事中に押しかけてしまったのか、私の怒りが少しクールダウンする。


「……あ、仕事してたんです?」

「……まぁな」

「もう、仕事がそんなに溜まっているならこんな頻繁に私と会わなくて良いじゃないですか。大変でしょう?」

「別にそうでもねぇよ」


 私にそう小言を言われると、レオンハルトは少し目を反らしながら呟いた。反抗期の子どもみたいな態度だ。

 私はふぅ、とため息をついた。事前に断りを入れる時間がなかったとはいえ、急に尋ねたのは私だ。でも、本当に今日のレオンハルトは酷かった。彼と一旦話さなければ、と思ったのだ。

 私は深呼吸をしながら、心と落ち着かせ、改めてレオンハルトに確認した。


「時間あります?」

「あぁ」


 レオンハルトはベッドに腰を下ろしながら、少し疲れたような顔で私に向き合った。

 疲れていても私の話を聞こうという姿勢はあるようだ。いつもなら、うるさい帰れって言いそうなものなのに、レオンハルトも少し反省しているのかも。

 私は静かにレオンハルトに問いただし始めた。


「なんなんです、今日は。花畑に行ったかと思えば、不機嫌になるなり家に連れてきて。公爵夫人、うるさいなんてとんでもないくらい、とっても良い方じゃないですか。婚約解消するってなったら絶対に傷つけてしまいますよ。あんな良い方を前に、わざわざこんな茶番しなくたって良かったじゃないですか」

「……うるさかったんだよ、お前と会ってみたいって」

「それならそれで事前に相談してくださいよ。本当にいつもいつも閣下はご自身の都合や考えばかりで私の話を聞いてくれないじゃないですか! 朝4時の山登りも海釣りも!」

「嫌だったのか?」

「そりゃ閣下と違って体力のない私がするには、朝早くからハード過ぎますからね! 事前にお話しいただいていたならまだしも!」

 

 あの急に朝の4時に馬車でやってきて、デートに行くぞと平気で(のたま)わった時には本当に殴ってやろうかと思った。あの日の事を思い出すと、まだ少しイライラしてくる。

 しかし、嫌だったと直接レオンハルトに言うと、少し驚いたような顔をした後にレオンハルトはほんのりしゅんとしているように見える。もしかして、本当に私が喜ぶと思ってやったのだろうか。


 あんなに俺様で自己中心的なレオンハルトが、本当は私を喜ばせようとしていた……?

 自分の都合に無理やり付き合わせていたという訳ではなくて……?


 レオンハルトの態度や元々のゲームの知識から、レオンハルトがやってみたい事に付き合わされていると信じて疑っていなかったが、もしかして喜ばせようとしていたのか。

 ……いや、だとしたら選択肢として朝4時の山登りは思い浮かばなくないか?

 もうレオンハルトの意図が分からず、私は大きくため息をつきながら零した。


「私、あなたの考えている事が分かりません」

「俺だってわかんねぇよ」


 レオンハルトは急に立ち上がって、私を見降ろす。

 頭2つ分は大きいレオンハルトに見降ろされると、少したじろいでしまう。レオンハルトは私を見降ろしながら、無表情のまま静かに尋ねた。


「あのユリアンって男とはいつ会ったんだよ」

「え? あ、いやぁ……子供の時に会ったような……」


 正確には前世で何度も恋人になったことはあったけど、今世では会った事すらなかったのだが。

 私が目を反らしながら、しどろもどろになって答えると、レオンハルトは少しむっとした表情になる。そしてぽつりと呟いた。


「なんでアイツのことはそんなに覚えてるんだよ」

「え、いやだって……好きな人、ですもん」


 私がたどたどしく答える。公爵夫人には婚約だと、レオンハルトには前世での知識だとも言えず、嘘ばかりついていて嫌な気持ちになる。胸が重たい感じがして、俯いた。

 レオンハルトは私の返答を聞いて、ムッとした後に前髪をかき上げながら不貞腐れたように言う。


「はいはいはいはい、そりゃあどうも今日はお邪魔をしてすみませんでしたね」

「なんでそんな怒ってるんですか」

「うるさい、仕事があるからさっさとお前は寝ろ」


 レオンハルトは私を部屋から追い出そうと背中を押し、扉の外まで追い出した。

 私は少しよろけて、部屋の外へ追い出される。それに文句を言ってやろうと、レオンハルトに向き合うと、レオンハルトの表情が思ったものと違ってびっくりして言葉を失った。

 悲しそうな、切なそうな、困っているような、苦しそうな……。ゲームでも今まででも見た事もないし、俺様公爵がするような表情ではない顔で立っているレオンハルトがそこに居る。

 私がレオンハルトを見つめたまま立ち尽くしていると、レオンハルトが顔を近くに寄せてゆっくりと話し始めた。


「花畑、サンドイッチ、ピクニック、両親」

「え、何なんです。急に」

「さぁな、おやすみ」


 そっけなくそう言うと、バシンっと乱暴に扉を閉められた。

 鼻先でバシンっと閉められたので、当たるかもと防衛反応でぎゅっと目を瞑る。ほんの寸前で当たらなかったので痛みはなかった。そっと目を開けると、先ほどまで居たレオンハルトの顔ではなく、茶色のドアが目に入る。


 まだ怒りの半分も放出していないのに、追い出された。

 もう、なんなのよアイツ。


 私はドシンドシンと足を踏み鳴らしながら歩きそうになったが、ここが公爵家だと思い出し、うぅぅと低く唸りながら怒りを抑え、ゲストルームに向かう。


 明日の帰りの馬車の中ででも話してやろうか、と思っていたら、レオンハルトは翌朝早くに出て行ってしまったとメイド達に伝えられ、結局話す事ができなかった。



読んで頂きましてありがとうございました。

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