剣術大会前夜
フェリシティーからは5名。
レイ、ヴィン、リアン。
王国騎士団から副団長ローガン、傭兵アーチー。
ハリーは……クローク国代表。
「お前が本気出すから半分が辞退って、どうすんだよ」
「相手に失礼でしょ。それに僕だって最近は鍛錬不足で、負けることもあるよ」
秒で勝敗がつく試合もあり、予選会場は湧いた。
「それにしてもローガンはやっぱり出てきたな」
当たらなくて良かったとヴィンも嫌がる相手。
無口で何を考えているか、わからない。
「アーチーも申し分ないね。ウィステリア騎士団に入ってくれないかな」
リアンが何度も誘うが毎回振られる。
「好きな時に好きな仕事だけを受けたいって。傭兵にしちゃ欲がないよな」
傭兵にいつでも依頼があるわけではない。
貧困だった領を変え、家族の命もレイの薬で助けてもらったと言って、いつもレイのためなら力を貸してくれる。
「レイ様と当たるのが楽しみだ」
「僕もアーチーと一度本気でやりたい。最後まで気を抜かないよ」
命のやり取りがない、ただの力比べ。
レイは嬉しそうだ。
「絶対に酔う」
ダレンまで時間はかかるが陸路を選んだ。
予定より不在期間が延びるため、出発間際までペンを走らせていた。
「途中、人出して送り返してください」
事務官アランからどっさりと書類の束を渡された。
鍛錬だ予選だと後回しにしたので、書類仕事は山のようにたまり、もう車中でどうにかしてくれと泣きつかれた。
「……馬車でも酔いそう」
「私まで駆り出されているのですから、それくらい旅の途中で終わらせてくださいませね」
モリーナが嫁いできてから、領主館の手伝いを頼んでいた。
見た目と違い、てきぱきとこなしていく。実に有能。
馬車に揺られて十日。
ダレンに入る前に一休みしようと一行は手前の街で宿をとった。
「このあたりの料理は味が濃くて辛めだな。食えるか」
「これ毎日はきついんだけど。まぁパンと果物があれば大丈夫」
肉にも魚にも手を付けないレイに、ヴィンが干した果物やナッツを並べた。
「ヴィンはレイ様の側近ではなかったか?
おかんみたいだな」
アーチーが笑いながら、これなら食えるだろうと蒸した野菜を取り分けた。
「お前の弱点はスタミナだ。食える時に食って、早く寝ろ」
「そう時間かけずに終わらせるつもり。何とかなるよ」
「やっぱりレイ様は強敵だ。年甲斐もなく、わくわくしてきたな。俺らも食って休もうぜ」
アーチーは口いっぱいに料理を頬張り、ローガンは黙々と食べていた。リアンはいつも通り上品に食す。
「レイモンド様!! 一緒になるなんてやはり運命でしょうか」
……運命じゃない。
貴族が泊まるような宿屋は数件しかなく、鉢合わせることもある。
「こんばんは。僕たちはもう行くよ」
カステル国のサイラスが立っていた。
レイと話したくて、大きな体をゆすり、もじもじとしている。
「ちょっと鬱陶しいんだけど」
「先日はレイラが大変お世話になったと聞きました。あのいで立ちにも驚かず、相手くださるとは、さすがレイモンド様」
「妻の友人だと聞いたからね。ところでレイラは来ていないの?」
「推薦が取れませんでした。次は女性だけの大会も開催してやってください」
「そうか。次は部門を設けてみよう」
今頃、歯噛みしながら鍛練してるだろう。
「では僕たちは行くよ」
「まだ話を……」
「姐さんは疲れてんの。わからない?」
「ハリーも着いたのか。間に合って良かった」
サイラスの大きな体を後ろに引っ張り、着いた早々にレイの護衛に徹するハリー。
「お待ちください。私たちも白銀の一閃に挨拶がしたい」
グレイシャス国、ノアール国まで並んだ。
「ご丁寧な挨拶で時間は取られたけど、対戦相手の様子が少しわかって、良かったと思うことにする」
ヴィンの淹れたお茶をすすりながら、レイは新しい剣の手入れをしていた。
「すごく軽いけど、強度が上がった」
「俺のは束が握り込みやすい。これはいいな」
ヴィンも少し興奮気味。
小さく一振した。手に伝わる感触が違う。
「見てよ。俺の紋章までしっかり入れてくれた。こういうの愛剣って感じでいいよね」
それぞれの剣を自慢し、優勝は誰かなど賭けまで始め、休むはずが、遅くまで話し込んでしまった。




