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アナの友達

 青空教室は親たちにも好評で参加率がよく、子どもたちの識字率が上がった。


 ご令嬢だけでなく、隠居した貴族女性たちが先生として名乗りでてくれたのもあり、今後は学校を建てたい。


 頑張っている子ども達のご褒美もかねて、レイはこども祭りを開くことにした。


 バザーで資金をため、学校運営にまわす。少しでも親の負担を軽くしたい。


 子どもらも何かしたいと劇をすることになった。


「お父様、私も劇に出たいです」


 時々、双子は青空教室に参加していた。そこでアナベルが聞いてきたのだろう。


「僕は恥ずかしいからいいや。でもアナが出るなら一番前で観たいな」


 ルーカスは少し人見知りするところがある。


「次の青空教室に行ったら皆に話してごらん」


 レイは双子たちに、できるだけ領民と関わって欲しいと思っている。


 領主だけでなく領民がいなければ領は成り立たない。領民の生活や考えを知ることは大事なことだ。


 アナベルが劇に混ぜて欲しいと言うと、ひとつ年上のアイラに嫌だと言われてしまった。


「だってアナベル様が入ったらお姫様役をやるのでしょう。もう役は決まってるのに嫌よ」


 劇にはお姫様と騎士が出てくる。みんながやりたがったお姫様役をアイラは勝ち取っていた。


 大きな商家の娘で、容姿もかわいいアイラは自分こそお姫様役にふさわしいと思っているのに、本物のお姫様がいたら交代させられてしまう。そんなの嫌だ。


「別にお姫様役でなくてもいいの。セリフもなくていいわ」


 アナベルが何を言ってもアイラは首を縦に振らなかった。


 その日は練習を見ただけでアナベルは帰宅した。


「私はみんなと一緒に劇を楽しみたいのに、入れてくれないの」


 悲しそうなアナに胸は痛むが、レイにできることはない。ここで自分が出れば、もう青空教室にも行きづらくなるだろう。


「劇にでられなくても、アナができることはないかな」


「そうよね。できることを探してみるわ」


 アナの顔に笑顔が戻った。


 翌日、青空教室に行ったアナは何か手伝いたいと皆に言った。ならと劇に使う小物つくりを手伝わせてもらえることになった。


「アナ様ここに色を塗って。でもドレスが汚れるかな」


「大丈夫。汚れてもいいようにエプロンを持って来たわ」


 そのエプロンも平民には汚せないほどのものだが、本人がいいと言うならいいのだろう。アナは一生懸命に木を塗った。


「お花も描いたらどうかしら」


「僕たちには難しいけど、アナ様にお願いできる?」


「頑張ってみる!」


 アナは丁寧に色とりどりの花を描いた。帰るときは筆を洗い、片付けも一緒に最後までした。


「また明日ね」


「また明日!!」


 子ども達に言われてアナも返す。


「アナはご機嫌だね」


「劇に使う絵を手伝わせてもらえたの。お父様に見ていただくのが楽しみ」


 レイはアナの様子に安堵した。


 だが、翌日行ってみると、アナが描いた花がなくなっていた。


「おかしいね。ここに置いておいたのに」


「また描くからいいわ」


 アナは皆を心配させまいと笑顔で筆をとった。


 翌日も、アナの描いた花はなくなっていた。


 セオからの報告で、アイラの家の下男が夜に教会をうろついていることはわかっている。


 ここはアナに自分で解決してほしい。


 普段は甘いレイも、アナを信じて手を出さないことに決めていた。


「皆さんにお話しがあります」


 アナが練習前に子どもたちを集めた。


「私はただみんなと一緒に劇を成功させたいだけなの。どうか仲間に入れてください」


 領主の、貴族の娘が頭を下げた。


「いじわるしてる子、いるんじゃない?」


「アナ様はとっても絵が上手で、いてくれないと困る」


「絵を隠した子がいたら、返して欲しいよね」


 アナは泣きたいくらい重かった気持ちが、少しずつ軽くなっていった。


 アイラがそっと輪から外れた。


 それに気づいたアナがアイラを追う。


「アイラさん、もしかしてあなたなの?」


「ごめんなさい。だって最初に嫌って言ってしまって、きっと許してもらえない。だから邪魔したらアナ様が嫌になってここにはもう来ないだろうって思ったの」


「私が怒ってるって思ったの?」


「絵を隠すなんて、酷いこともしたわ」


「怒ってないわ。私こそ突然入りたいなんていって困らせてしまったわ。ごめんなさい」


「怒ってないの? 私いじわるなことも言ったのに?」


「私は役がなくても、仲間に入れてくれただけで嬉しいもの」


 アイラは泣きながら、ごめんなさいと何度も謝った。


 泣きはらした顔で皆にも謝って、絵を戻した。


「アナ様は本当に絵が上手ね。劇が終わったら私にください。お部屋に飾りたいの」


「アイラさんに新しい絵を描くわ。木の板でなく紙にね」


 そして迎えた本番。衣装に着替えた2人は、お互いをチェックする。


「ここにリボン足したら、もっとかわいいと思う」


「そうしたらアナ様の髪が寂しくなるわ。これつけてみて」


 アナがアイラの衣装にピンクのリボンを結わえる。アイラも髪飾りをアナの髪にさした。


「「可愛いねー」」


 お互いを見て笑い合う。


 アナとアイラは何でも話せる友達になった。


 セリフはないが町娘役でアナも劇に出られた。レイ達は最前列で拍手喝采。


 子どもらはセリフを間違えることなく劇は大成功だった。


「へえ、あれが領主様の愛娘か。いいね」


 劇を見ていたのは、領民だけではなかった。

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