【78本目】ファイト・クラブ(1999年・米)
実家でWOWOW契約したて位の時期にこの映画定期的にやってたんだけど、当時中学生くらいだったので見てたら絶対影響されて色々黒歴史作ってたんだろうなという考えがたまによぎってゾッとする。
【感想】
社会の中で暮らし、不特定多数の他人と触れ合っている人間なら、よっぽど、よっっっぽど優しい人じゃない限り、どうしても【殴りたい奴】というものは出てくるものです。
大半の人たちは【犯罪だから】という理由で直接実行にまでは移さず、その本能を意識の奥底に沈殿させています。その沈殿させている本能に強く呼びかけた映画こそ、1999年の映画【ファイト・クラブ】と言えるのではないでしょうか。
【エイリアン3】の前作を台無しにした展開のせいで個人的には当初あまりいい印象のなかったデヴィッド・フィンチャー監督ですが、この映画のおかげで一気にお気に入りの監督になりました。
あまりに暴力的すぎる(映像がじゃなくて、思想的に)内容のために公開当時は米国各地で上映禁止運動が起こった映画でもあるんですが、そのくせ英国の映画雑誌【エンパイア】の【歴代最高の映画ランキング】で10位にランクインしちゃってたりもして、正に【賛否両論】という言葉がよく似合う映画となっております。
【キャラについて】
もう【僕】とタイラーのあの関係性こそがこの映画の柱になる部分なので、速攻でキャラについて語りたいと思います。最終警告ですけど、ネタバレ上等で。
全く対照的な【僕】とタイラーが同一人物で、単なる別人格だったというオチ、僕にはアレが資本主義社会に生きている人間ならだれでも持ちうる病理の暗喩に思えるんです。
去年公開された【ロケットマン】を見て以来、【なりたい自分】と【本当の自分】のギャップってものを色々考えるときがあるんですけど、主人公の中でああいう分裂が起こったのって、もしかしたら【なりたい自分】と【なりたい自分になれない本当の自分】という矛盾した自意識が理由かもしれないとか思ったりするわけです。
エドワード・ノートンはパンフレットでのインタビューで自分たち【ジェネレーションX】(ケネディ政権からベトナム戦争終了くらいに生まれた世代。政治や社会に対して冷めた傾向が強い)の感情を代弁した映画、というニュアンスのことを語っています。そして同時に【ジェネレーションX】が冷めてるのは、親の世代(ベビーブーム世代)のを見てきたが故の懐疑心みたいなものがある、とも語っています。彼演じる【僕】が象徴する【なりたい自分になれない本当の自分】は、そういうノートンやフィンチャー(1962年生)などの【ジェネレーションX】の心理を暗喩しているのかもな、とか思えてきます。
対してタイラーの方は、彼自身が節々で語っているように、IKEAの家具で自宅を小ぎれいに飾り倒してる【僕】を含むアメリカ社会の人々を【資本主義の奴隷】と称しています。
主人公二人で普通に大学へ行って普通に就職する生き方を胸糞悪そうに語るくだりもありますが、1950年代の郊外に家庭を作って暮らす【普通の生き方】が不動産業界に都合のいい家族像でしかないと批判されたように、【普通の生き方】に対してそんなもの大企業による洗脳だろ!!とケンカを売るのがタイラーのポジションです。
もしかしたらあの二人(一人)の姿は、社会に反抗したいけど、反抗したところでいい結果にならないかも……という【なりたい自分】と【なりたい自分になれない本当の自分】の狭間でのジレンマ(このジレンマが特に激しいのがジェネレーションX)が引き起こした悲劇の具現化の一つと言えるのかもしれません。
【好きなシーン】
【ドラゴン・タトゥーの女】もそうですけどフィンチャー監督の映画ってオープニングがとんでもなくイカしますね!当時割と最先端なCGを駆使して、【僕】の鬱蒼とした心理を暗喩するかのような灰色の脳細胞を映し出したかと思えば、やがてピストルの銃口らしきものが映って銃口を加えさせられている【僕】が映る、という一瞬でひきつける始まり方。僕あらすじ読まない状態で本編見始めたんですけど、あのオープニングだけで何かとんでもない物語が始まるなって予感がしました。
あとこの手のネタバレ禁止映画ではよくあることですが、タイラーの正体を知った後に見ると色々ゾッとするシーンが要所要所で見られます。
具体的には普段モノローグで語る【僕】がタイラーの映写技師とかウェイターのお仕事をなぜか観客にカメラ目線で紹介してる下り。あれってちょっとした自己PRタイムだったんですね。
あと上司を脅すために自分で自分を殴るくだり。2回目の視聴だとあれ完全に伏線ですし、ひょっとしたらマジでタイラーはあの場にいたのかもしれないとか妄想したくなってきます。
そして何より、ファイト・クラブで【僕】がつい暴走して相手の金髪を半殺しにし、タイラーにすら「サイコボーイ」とドン引きされるシーンがすっごい怖いですね。無意識に作り出した別人格ですら、彼の鬱屈した感情を制御できなかった、って言ってるみたいで。




