【62本目】ソルト(2010年・米)
ブロンド白人よりもブラネット白人の方が好きかもしれん。
【感想】
ソ連が崩壊してもうかれこれ三十年近く経過し、当時を全く覚えていない世代も徐々に多くなっています。しかし半世紀近く続いた冷戦の緊張感は西側諸国の人々に多くの心的影響を与えたらしく、冷戦終了後も【007/ゴールデンアイ】【エアフォース・ワン】のような、ソ連の遺産とか亡霊のような存在が国家に立ちはだかる映画が定期的に公開されています(【アイアンマン2】もその文脈あるな)。
【ソルト】は、そういった冷戦の亡霊を、異色の構造で描き切った作品と言っていいでしょう。
【パトリオット・ゲーム】や【今そこにある危機】といった政治サスペンス映画を手掛けたフィリップ・ノイスが監督を務めるこの映画は、米露の緊張関係の中で任務の中に生きる一人の女性を描いた物語です。
序盤、CIAの別の部署に疑われて逃走するパートで、なるほどCIAの女性諜報員が無実の罪を着せられるって言うサスペンスにありがちな展開かな?と思うんですが(冒頭の北朝鮮のシーンもそのミスリードを誘うためっぽいし)、実は本当に二重スパイだった!しかもロシア大統領を殺しちゃった!なんて裏切りが中盤で用意されます。米国の女性諜報員として見ていたので、完全に(悪い意味でなく)突き放された気分になりましたwそういう視聴者にとってどこにも味方がいないような展開がそれなりに続くので、着地点がどこかわからない、というちょっとグレーなハラハラドキドキ展開がこの映画の見どころです。
(でもこれよっぽどバランス感覚がないと駄作決定してただろうなぁ。その辺の新人監督が作ってたら間違いなく大けがしてたでしょうw)
【007】シリーズの何作かとか、韓国の傑作スパイ映画【シュリ】では、主人公の恋人が仮想敵国の女スパイだった、という恋愛とサスペンスを織り交ぜたストーリー展開が見どころとなりますが、【ソルト】は最終的にその先の、男を愛したがゆえにスパイとして失格の行為をやってしまった人間は、どうようにして生きていけばいいのか、という問題にまでスポットを当てているところがポイントになっています。
ラストは(キウェテル・イジョフォー演じるCIA職員以外)誰にも真実を理解されないままに、別人の犯した罪を着せられて(自分からかぶって?)一人でどこかへ去っていく主人公、という【ダークナイト】を彷彿とさせる結末となります。スパイと言う陰に生きる人間の哀しさを独自のシナリオでシビアに描き切ったのが、この映画と言えるでしょう。
【キャラについて】
同志チェンコフことソルトが序盤で普通の女諜報員としてふるまえばふるまうほど、後の下りで殺しも厭わない超冷酷なスパイとして描かれたときに一気にキャラクターとして印象的な存在になりますね。彼女が本性を現すシーンで物語としては突き放された感覚を覚えつつも展開に興味を持ったまま視聴継続できたのは、主人公としてのソルトに感情移入できなくなった分悪役としてのソルトに魅力を感じたからかもしれません。
(結局最後の最後でやっぱ正義側だったことがわかりますけど)
【好きなシーン】
旦那が殺されたときとか、リーヴ・シュレイバー演じる上司が正体を現したときのどうしようもなさというか、「え、どーすんのこの後?」感は、なかなか味わえない感覚で凄く新鮮でしたね。あの辺の展開自体は引き込まれるのに、感情移入できるキャラが一人もいない状況は、スパイ映画でも珍しい要素を見せられた気がしました。上司が正体現すシーンとか、マジで【博士の異常な愛情】的第三次世界大戦勃発エンドを少しでも予想させたのがすごいw
あと序盤金髪だった時は逃げるばかりだったソルトが、黒染めしだしてからスパイとしての残酷な側面を露にしだすのは色々皮肉のきいているシーンで好みです。はたから見れば変装に見えるシーンが、逆にスパイとしての正体を現すことにつながっている、というところが。
後は角刈り男装アンジェリーナジョリーとかいう、スキ間産業狙い撃ち感のある変装シーンも好きです。




