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【35本目】SANJU-サンジュ-(2018年・印)

 初ボリウッド映画です。2019年は日本で【パドマーワト-女神の誕生-】や【バジュランギおじさんと小さな迷子】など個性的なボリウッド映画が複数公開されましたけど、この【SANJU】はその中でも個人的に最もしっくりくる作品でした。




【感想】


 インド本国で2018年に公開されるや否や同年公開のボリウッド映画で最高記録をたたき出した映画です。フィルムフェア賞(インド版アカデミー賞)でも7部門ノミネート、2部門受賞という好成績を残しています。




 この映画でテーマとなっているのは、実在(存命)の俳優、サンジャイ・ダットの波乱万丈の人生を描いたノンフィクション映画です。


 【バーフバリ】どころか【ムトゥ】すら見たことがないボリウッド素人の自分はこの俳優も全然知らない状態で見たので、ネタバレとかなしの状態で普通の物語を見るように楽しむことができました。




 基本ハリウッド映画メイン(次点で香港、イギリス、イタリア……と続く。実は邦画はあんま見ない)で観ている僕としては、インドや中国本土の新興国の映画は歴史映画やファンタジー映画よりも、圧倒的にこの映画みたいな現代ドラマの方に魅かれます。ニュースとか旅番組でしか聞かないような馴染みの薄い国の、飾らない【今】が見えてくるからです。


 現代パートのすっごい綺麗なムンバイの街並みとか見ていると、ほんの10年ほど前の初期の旅猿で東野や岡村が旅行した時のディープなインドと比べると同じ国とはとても思えないですよ(まあ、地域格差があって今でもディープなところはディープなんだろうけど)


 1993年のムンバイ連続爆弾テロ事件のような、アメリカでいう911テロ、日本でいう東日本大震災に相当するその国の人々にとってトラウマとなったらしい事件を知れるのも興味深いです。




 やっぱりどこの国の映画観てても、コメディパートがほどよくブラックだと妙な安心感があります。想い人へのプレゼントの金をドラッグに使ったり、親友の想い人と寝たりがコミカルに描かれていると、旅番組や他国の映画などで見るインドでは見られない、【俗】の部分を味わえて得した気分になります。




 【SANJU】は大体前半と後半の2部構成で展開されます。前半は青年時代のドラッグとの戦い、後半はメディアとの戦い、というテーマが設定されており、二つのテーマによってサンジェイ・ダットという人物の【内側】と【外側】が描かれるという、正に伝記映画にふさわしい形式になっています。


 【ロケットマン】の中盤では歌手として成功したエルトン・ジョンのドラッグ三昧、ゲイセックス三昧の日常が描かれますが、この俳優の場合は特に出世とかする前からドラッグにおぼれまくります。ドラッグ中毒の青年期の映像は本人の自伝作家を前にした回想という形で展開されるので、ドラッグの欲望に勝てない情けない青年の姿がよけいリアルに見えてきます。


 そこで終わっても綺麗に終われたところでしょうけど、自分との戦いであったドラッグ中毒を乗り越えた主人公に、世間との戦いであるメディアバッシング期が到来するのがこの映画の見どころです。このパートではメディアから、世間から袋叩きに合うサンジュが、それでも二人の人物には誠実でいようとする物語が展開されます。世間の評判なんて移ろいやすいものだから言わせておけばいい、ただ人生を支えてくれた人間には誤解を与えちゃいけない、というメッセージの込められたこの後半パートこそ、この映画の本番と言っていいと思います。




【好きなシーン】


 あんまボリウッド映画に慣れ親しんでるわけじゃない自分としては「アメリカ映画には歌がない」「アメリカには家政婦なんていない」なんてプチカルチャーショックなセリフが飛び出したりするとこも魅力なんですが、やはりメディアの使う【?】(日本のネットニュースでいう【か】ですね)がいかに悪辣かを述べるサンジュと父親のシーンはこの映画、特に後半パートを象徴するやりとりって感じで好きですね。


 父親が抗議の意思として記事見出しの【FINISHED?】をマジックで【NOT FINISHED】に書き換えるシーンは、劇中の記者だけでなくそのほかの色々な媒体にも抗議しているかのようで見ていて熱くさせられましたね。


 あとは終盤でサンジュがとある【薬物】の話をするシーンも好きです。前半の自分のドラッグ中毒時代とかけてるんですね、あの話。




 あとシーンとは少し違いますが、本編を見終えた後で意味が分かるDVDのパッケージデザインにもセンスを感じます。最初パッケージだけ見ると「この5人の男性の友情を描いた物語なんだな」って思うんですが、見終えてからその5人が違う時代の一人の人物だったことに気づいた時の感動と言ったらもう。


 まぁちょっとよく見たら全員同じ顔をしているので、単に自分がボリウッドの俳優に興味なかっただけとも言えるんですがw


 ともあれボリウッド映画の自分なりの楽しみ方をつかめたいい映画でした。


 今作の監督が手掛けた【きっと、うまくいく】【PK】も今度観てみようと思います。

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