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第三話 覚醒


 その日は鬼塚の奴に小言を言われ、輝實のクズには怒鳴られさんざんだった。

 一人、居酒屋のカウンターで冷や酒をあおりながら、ふつふつとわき上がる殺意を孕んだ怒りを噛みしめる。


「畜生め、あいつら本当にクズだ。

 くそう、奴らにやり返してやる上手い方法はないのか」

 俺が独りごちていると、居酒屋の女将が酒に付き合ってくれる。


「あらあら、近藤さん。

 今日は一段と荒れているわね。

 何があったの?」


「何もかにも、いつも以上にむかつくことをくそったれどもがしてくれたってだけさ。

 叶うものなら奴らの息の根を止めてやりたいよ」


「あら、今日は一段と物騒ね。

 本当にやっちゃダメよ」


「ああ、分かっているさ。

 あんな奴らをやっちまって、人生を棒に振るほどバカじゃないさ。

 けど、何とかあいつらに復讐出来ないものか……

 本当にはらわたが煮えくりかえる思いだ」


「それは、相手にあなたがやったって気づかれずに出来ればいいけど、超能力でもなければ完全犯罪なんてむりよ」


 俺は女将の言葉に酒を飲む手が止まる。


「超能力か……

 そういえば昔テレビではやったな。

 手を触れずにものを動かしたり、遠くを透視したり……」


「そうそう、テレキネシスだかサイコキネキスだか言う力よね。

 階段とかで、離れたところから超能力を使って突き落とせれば、完全犯罪も夢じゃないわよ」

 女将は冗談っぽく言う。


「サイコキネシスか」

 俺は呟くと、お通しの脇に置いてあった箸置きに何となく集中する。


 手をかざして念じる。

『動け……』


 額から汗が噴き出し、掌がなんだか温かくなる。


 コトリッ……


 箸置きが転がった。

「えっ!?」


 俺は驚きの声を上げる。

「そうしたの、近藤さん?」


 女将が聞いてくる。どうやら見ていなかったようだ。

「いや、どうってこの箸置きが……」


「箸置き?」


「いや、何でもない。

 今日は少し飲み過ぎたようだ。

 もう帰るよ」


 俺はとっさに誤魔化す。

 なんだか人に言ってはいけないような気がしたのだ。


「あら、そう?

 今日はまだいつもよりは早いわよ」


 女将はもう少し飲んでいくように言うが、俺は内心それどころではなかった。

 先ほどの箸置きの動きが気になり、一刻も早く自分一人になって確認したかったのだ。







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