第9話
DSTDを破壊し、ぐちゃぐちゃな空間に吸い込まれた雄馬。
一体、世界は、雄馬は、どうなってしまうのか?!
「ここはどこ?俺は、なに?」
「何も覚えていないだろうけど、君はとても大きな罪を犯してしまった。」
「君はだれ?大きな罪って一体俺が何をしたっていうんだい?」
「それは僕からは答えられない。ここはどこで、君が自分自身を何なのか分からないことが、君が犯した罪に対しての罰だから。」
「君はどうしてそのことを知っているの?」
「君のことをずっと見ていたからさ。」
「俺をずっと?」
「そう、ずっと。」
「いつまで俺はこのままなんだい?」
「君が記憶を取り戻して、君の犯した罪がなんなのかに気が付くまで「永久」に、だよ。」
「頼む、教えてくれ。君しかいないんだ。助けてくれよ。」
「苦しいかい?」
「ああ、苦しいよ。」
「今、君が苦しいことを目の前にいる僕のせいだと思っているんだろう?」
「それはそうだよ。君は意地悪だ。僕の全てを知っていて何も教えてはくれないのだから。」
「そう思いたいのならばそう思い続ければ良い。僕はただこうして君に語りかけ、君が自分の罪に気が付くまで苦しむのをただ見ていることしかできない。」
「見ているだけじゃなくて、助けてくれよ。何かしてくれって言ってるんじゃない。俺は何なのか、ここはどこなのか、ただそれを話すだけ、俺に言葉をくれるだけで良いんだよ。」
「できない。」
「どうして?」
「それが君への罰だから。」
「俺が一体何したっていうんだよ。」
「君はいつもそうだ。」
「何が?」
「知りたがっていた。救いを求めていた。誰かや何かのせいにならなければ気が済まなかった。」
「そうなのか?それの何がいけないっていうんだ?」
「いけないとは言っていないよ。ただ、、、。」
「ただ?」
「これ以上は僕からは話せない。君が自分で気付くんだ。」
「一体なんだっていうんだよ!!君は俺の敵なのか、見方なのか一体どっちなんだ?!」
「僕は君の敵でも見方でもないよ。」
「じゃあなに?」
「さぁね、それもきっと君次第。」
「俺次第ってどういうこと?」
「そういうことだよ。少し話し過ぎたね。しばらく僕は君に何を訊ねられても、言われても、頷いたり相槌をうつことしかできないけど、ずっとここにいて君を見ているから。」
「なんだよそれ!答えをくれよ!わからないんだ!君にしか頼れないんだ。自分が何なのかも分からない
し、こうしているだけで苦しくて苦しくて堪らないんだ。」
「そうだね。」
「そうだねってなんだよ!君にはこの苦しみは分からないだろうね。だって、ただ傍観しているだけだもの、君の問題じゃない、これは君にとってはただの他人事。」
「そうだね。」
「俺が苦しんでるって分かっててどうして、じっと俺を見ているのに、なにもせずにただ傍観しているんだよ?君には心がないのか?」
「そうだね。」
「それとも、俺が苦しんでるのを見るのがそんなに楽しいのか?」
「そうだね。」
「君は最悪だな。もし君が苦しむのを俺が傍観する立場になったら、俺は絶対に君なんか助けないからな
。君が苦しむ姿を見て、笑っていてやる。」
「そうかい。」
「そうだよ!!!覚えてろよ!!」
「ああ。」
一数分後一
「君は、誰なんだい?」
「さぁね。」
「俺は誰なんだい?」
「さぁね。」
「どうして君は、俺がこうして君に強く当たっても側にいるいんだい?」
「さぁね。」
「ねぇ、どうして?」
「さぁね。」
「君はどうして、ずっと俺を見ているの?」
「さぁね。」
「俺がここに来る前から、俺をずっと見ていたんだよね?俺のこと、好きだから?嫌いだから?それとも見ていて面白いから?」
「さぁね。」
「どうしてなにを聞いても答えてはくれないの?」
「さぁね。」
「これじゃあ、まるで、一人でいるみたいじゃないか!」
「君が一人?本当に?じゃあ僕はここからいなくなっても、一人でいるのと一緒だね。」
「ああ、そうだね。いないのと同じだよ。」
「そう、それじゃあ、僕は姿を消すね。」
「勝手にすれよ。」
「じゃあね。]
そう言ってhmsstpyは姿を消した。
「さぁて、邪魔者はいなくなったことだし、のんびり休むか、、って、休むってどうやるんだ?俺は一体これから何をどうすればいいんだ?誰か助けてくれ!誰か!誰か!!」
俺は声をしばらく張り上げて助けを呼んでいた。しかし誰も来ることはないまま、しばらく時間が経っていた。叫び過ぎたせいか、声がかすれてほとんど出なくなっていた。
「俺は今まで何をしていたんだ?叫んだってどうにもならないって分かってるのに、ずっと叫んでたんだ
。でもこれ以上叫んだって誰も助けには来ないんだろうな。でもあの子は呼んだらまたすぐに姿を現してくれるだろうか?いや、そうじゃなくて、俺は、今、あの子を邪魔者だと思っていたのにあの子をまた呼ぼうとしていた。俺は一体何を求めていて何がしたいんだ?助けてくれ、、誰か、、助けてくれ!!」
「大丈夫?」
「来てくれたのか!お願いだ!助けてくれ!俺は、俺は、、、一体どうしたらいいんだ?!」
「苦しいかい?」
「苦しいよ、一体俺はどうすれば良いんだい?」
「どうもしなくてもいいさ。ただ君は、一瞬一人になった時間と、僕が今戻ってきて、どう感じた?」
「どう感じたって、、、そんなの分からない、、なにも変わりゃしないよ。」
「そうかい、じゃ僕はまた消えるとするよ。」
「ちょっと待ってくれ!」
「なんだい?」
「行かないでくれ。」
「どうして?僕がいてもいなくても変わらないんだろう?」
「それは、、、。」
「それは?」
「君がいて、俺は気持ちが楽になった。」
「やっと気が付けたんだね。君は一人じゃないんだよ。」
「俺は一人じゃない?」
「そう、君は一人じゃないんだ。君がそれに気が付こうとさえすれば、声をあげて助けを求めれば、いつだって君は一人ではないんだ。君が今それに気が付いたことも、声をあげて助けを求めたことも君自身の闘いだった。そして、この先も自分自身で闘わなければいけない時は山ほどあるだろう。けど、良い意味でも悪い意味でもどうであれ、君は一人じゃないんだ。
きっと君は、このまま僕がここで側にいたとして、また僕の存在を邪魔に思う時が来て僕を追い払いたくなる時が来るだろう。僕はそれでも良い。ただ、一時の感情で僕を追い払って、一時の感情で判断し続けて、君は一体何を守り抜きたいの?」
「何を守り抜きたいって、自分だよ。俺は今、自分を守りたいんだよ。」
「それで、その守りたい自分は今の君のやり方で守りきれそうかい?」
「そんなのわかんねーよ!大体、苦しんでる時に、君みたいにそんな冷静に考えられないもんじゃないのか?!」
「君は本当に自分を守りたいと思ってる?僕が消えてすぐにまた呼ぶくせに僕の話を聞けなくてまたすぐに僕を邪魔に思うのは、きっと、君は本気で自分を守り抜きたいって思ってないからじゃないかな。」
「違う、、そうじゃない!俺は、ただ苦しいんだ。ただ、苦しくて、何をどうすれば良いのかわからないんだ。」
「言ったじゃないか、君は一人じゃないんだって。どうして僕に心を開けないの?それにあの時だって、君は誰にも頼ろうとせずに独断で動いたんだ。様子をみようとも仲間にも、愛する人にすら相談せずに、一人で決めて、君一人でこの世界に、、いや、なんでもない、、少し話過ぎたようだね。今話したことは忘れて。」
「仲間ってなんだ?一人でこの世界にって、、俺には、、そうだ、仲間、、仲間がいたんだ、、俺は、人間で、科学者で、、君はhmsstpy!俺は雄馬だ!」
その瞬間、空間はガラスが割れたように消え、その向こう側から宇宙空間が出現した。そして、hmsstpyと二人きりで、真っ暗な宇宙空間にぷっかりと浮き、そこにだけ、小さな明かりを灯していた。
「ようやく思い出したんだね。」
「ああ。全て思い出したよ。君が俺に何を言おうとしていたのかが、今ようやく分かったよ。」
「本当に?」
「本当に。でも、もし俺がまた君が教えてくれたことを忘れていたら、また罰を与えに来てよ。」
「えー、僕も忙しいからなぁ。君ばっかの相手していられないしなぁ~!、、、なんてね!いつでも僕は君を見てるよ。そして、君を見てるのは僕だけじゃないからね。」
「うん、ありがとう。」
「じゃあ君をこれから元の世界に戻すね。これまで起こった出来事は消さないけど、僕と君が会った記憶は消さなければならない決まりなんだ。あと、これ返しておくね。」
そういうと、hmsstpyは破壊したはずのDSTDを取り出して俺に手渡した。
「これ、、どうして、、、。」
「君が壊す前にすり替えておいたんだ。僕、いちを神様だからね、失敗はできないもんでね!では、そろそろ僕は行くよ。」
「ちょっと待ってくれ!まだきちんとお礼しきれてないし、まだ話したいことも沢山あるんだ!」
「大丈夫。これがお別れなんて言わないよ。絶対また会えるから、その日まで少しの間のお別れさ。では、またね!」
そうして俺はhmsstpyの手によって、元の世界に戻されたのだった。
hmsstpyから様々な意思を受け取った雄馬。
元の世界は一体どうなっていて、元の世界に戻った雄馬は一体どのように生きてゆくのか?!




