第7話
作戦通り、金星の最高権力者ミュゲルのいる部屋の前に辿り着いた雄馬達。果たして交渉し、ミュゲルと和解することができるのか?!
部屋の扉を開くと、部屋の奥の正面真ん中にある王座にミュゲルさんが座っていた。とりあえず護衛のフリをして部屋に入ると、ミュゲルさんが先に口を開いた。
「地球人か、一体ここに何をしに来た?」
俺はミュゲルさんのその一言に一瞬たじろいだが、気持ちを持ち直して言葉を返した。
「お気付きでしたか、それなら話は早いです。率直に申し上げます、俺達は地球から来た科学者です。政府に命令されて来たのではなく、あなたと直接お話がしたくてこうしてここへ来ました。」
「そうですか。あなた方が政府に報告せずに自らここに出向いて下さった勇気は称えましょう。しかし、私は地球人と交渉する気はないとお話した筈ですが。」
「はい、あなたが地球に発信した言葉の全てを聞いていました。その上で俺たちはここへ来ました。」
「一体何をしに、なぜここへ来たのですか?」
「大事な仲間が同じ道を行けないっていうことはとても悔しいことだと思います。この星をどれだけ思っていても、この星を一緒に一番に思ってきたと思っていた仲間が別のものを一番に思っていたって事実だけが、ミュゲルさんの記憶の中に残って、悔しくてとても苦しかったと思います。そして、今も苦しんでいるからそれ程までに僕らを、、、地球を拒絶するんでしょうね。自分が強く思い描いていたことが思い通りにならないことは、他人にはどうしたって想像ができない苦しみだと思います。自分でもその感情のやり場が分からない程にきっと、苦しくて苦しくて仕方ないですよね。」
「あなたにも私の気持ちは分からないでしょう?共感して同情を引こうとするフリをしても交渉はしませんよ。もう一度お聞きします、あなた達は何をしに、なぜここへ来たのですか?」
「俺は、、、俺たちは、あなたを救いたいんです。」
「それは交渉する為の建て前でしょう?あなた達の本心は、この星と交友関係を築く為に交渉をすること
、それだけではないでしょうか?それに、何を以って、あなた達が政府に報告せずにここへ来たと信じればいいのでしょうか?」
「それは、、、何の証拠もありません。だけど、、、俺は、、、ミュゲルさん!あなたと話がしたいんです!」
「はっはっは、笑わせてくれますね。私があなたがたと話をする程度のことで、私の決意が揺らぐとお思いですか?いいでしょう結果は分かりきっていますが、聞くとしましょう。ではまずお聞きしますが、私の思考や心をあなたが本当に少しでも察していたとして、これ以上何を話したいというのですか?!」
「俺がもしミュゲルさんだったらって思ったら、今こうして生きていることさえ凄いと思ったんです。しかも生きるだけではなく、一つの星を何年も何年もお一人で守っていらっしゃいました。今の俺には、あなたの真似ごとですらできないと思いました。今こうしてここにいる仲間は、初めは俺が声をかけたことがきっかけで仲間になり、今も共に生きています。
それなのにもし仲間がいなくなったら、見離されてしまったら俺はどう生きていけばいいのか、たまに想像して怖くなる時があります。だけどいつかは、どんなに仲間と信頼し合っていても、明日俺が死ぬかもしれないし、仲間が死ぬかもしれない、、、それか明日、今日の数時間後、数分後、俺よりもっと凄くて魅力的な科学者が現れて、みんな俺の側から離れて行くかもしれない。だけど今、この瞬間一緒にいて、生きてくれているって事実が救いで、俺はこうしてここに立っています。だけどミュゲルさん、あなたは仲間を失ったけど、こうして今生きています。それってものすごいことだと思うんです。そしてあなたが生きていてくれたから、こうして俺はあなたを知って、そして会って話すことができました。これはただの偶然だと思いますか?」
「あなたには変わらず仲間がいて良かったですね。でも私にはもうどこにもいないんです、その大切な仲間が、友が。しかしあなたにこの気持ちを分かってもらおうとも思いません。あなたと私が会えたのは、交渉の為に意図してあなたがここへ来たから会えた、ただそれだけです。」
「そうです。俺が意図してミュゲルさんに会いたいと思ったから、ここへ来て会えたんです。でももし俺が科学者になろうと思わなかったら、そしてなっていなかったら、あなたに会うこともなかった。でも俺は科学者を目指して、科学者になってミュゲルさんに会いに来ることができました。そして、ミュゲルさんがこの星の最高権力者になったから、ミュゲルさんが地球にメッセージを発信したから、それを聞いた俺は、、俺達はここへ来ようと思えました。それでもこうして会えたことはただの偶然だと言いますか?
」
「あなたのおかしな妄想に私を巻き込もうとしないでください。そんなことはよくあることですし、あなた達が勝手に私の元にノコノコやって来ただけに過ぎません。」
「では、なぜ俺たちがこの部屋に入って来た瞬間に俺たちが地球人だと分かったのですか?それにあなたはこうしている間にも、いつだって護衛を呼べるはずなのに呼ばない。それはなぜですか?」
「わかりました。そこまで読まれていては隠しきれませんね。私はラルミスが地球に住むようになってから、何度か地球に行きました。その為、地球人の匂いは知っており、こんな時なので、城で独自で開発された金星人の嗅覚をより強化する薬剤を接種しており、その為、この城にあなたがたが入ってから割とすぐに、あなた達の潜入には気が付いていました。かつて地球には、ラルミスの様子をこっそり見に行ってはすぐに金星に帰ってきていました。地球でのラルミスは、かつて二人で金星を治め始めた頃のような生き生きとした顔でいつも過ごしていました。
その顔を見る度に、胸は掻きむしられたようになり、嘔吐しそうになりました。数年後、ラルミスは寿命より遥かに早くに死にました。地球という星を知り、地球を愛した為に、もっと生きられたはずなのに。あいつの、、ラルミスの死をちゃんと見届けてやりたかった。でも私は許せなかった。私を孤独に追いやった地球も地球人もラルミスも。でもラルミスを、、、親友のあいつを嫌いにはなりきれなかった。だから、こんな時だというのに、ラルミスが愛した地球人の数名が何をしにここへやってくるのかを憎悪の感情がある半ば、確かめたくもなりました。」
「そうでしたか、、、それだけ仲間を友人を大切に思っていたら、誰だってそうなるんじゃないですか?なんでも失敗すると怖くなると思うんです。その恐怖の度合いは人それぞれ違えど、どんな人でも怖くなると思います。ミュゲルさんにとっては金星を守るにおいても、生きるにおいても、ラルミスさんが何よりの救いで支えだったんじゃないでしょうか?苦しかったですよね、寂しかったですよね。でもあなたの人生はまだ続いています。もし、ミュゲルさんがラルミスさんのことをほんの少しでも大切に思っていて、今何かできることがあるとしたら、きっとラルミスさんの分までしっかりと幸せに生きることなんじゃないでしょうか。それに、きっと、ラルミスさんと初めて会った時だって、どちらかが勇気を出して歩み寄っている内に、関係が変わっていって深い繋がりになっていったのではないでしょうか?
今度は俺たちがミュゲルさんに会いたくて、ミュゲルさんに歩み寄りました。だから怖がらずに俺と、俺たちと繋がってこれからの未来を一緒に生きていきませんか?」
「…なぜそこまでして、私にこだわるのですか?」
「あなたは、俺たちの中の一人が仲間を一人でも失った時を想像した時になるであろう感情や思考の方向性がとても似ている人だったからだと思います。だから救いたいと思ったんだと思います。本当の理由とか、本物の愛が何かなんて俺には分からないし、真実を追求したら人はまともには生きていられなくなると思ったから、どうにかあなたを救いたかった。矛盾だらけで自分もこの世界も嫌になるけど、それが生きるってことで、単純なようで単純じゃなくて、それでも俺は、俺たちはいずれ向き合う、死という形の孤独になる未来の自分を、その自分に似たミュゲルさんを、生かしたい、救いたいって思ったんです。それが生きてるってことなんだって。この世界で生きて、沢山の人と出会って矛盾の中の真実に近い場所で生きていたい、、、って、そう思ったから、ミュゲルさんを救いたいと思いました。それに、、、。」
「それに?」
「一人きりじゃ寂しいじゃないですか。一番じゃなくても自分のことを知る、自分を好きになってくれた誰かが周りにいることは、少なくとも悲しいことでは無く、楽しいことだと思うから、、、繋がりってそうやってつくっていくものじゃないですか?だからこれからは一人ぼっちじゃありません。俺たちがいます。」
俺がそう話し終えた後、ミュゲルさんは大きなため息を一つついて、思い出したように話し始めた。
「ラルミスと初めて会った時もそうでした。ヘラヘラして、なんだか信用できなさそうなやつだと思いながらも気が付いたらラルミスが友として大好きになり、そして何でも話せるかけがえのない親友となっていました。あなたと話していると、その時の感情が蘇ってくるようです。私はあなたがたに騙されるかもしれないと思っているのに気を許してしまいそうになっています。私はあなた達を信用してもいいのでし
ょうか?」
「俺たちは逃げも隠れもしません。地球の科学者として全うして、地球に帰ってからだって、またミュゲルさんの所へやって来ます。またここへ遊びに来ても良いですか?」
「是非とも待っています。私に心を感情を思い出させてくれて、ありがとう。」
「こちらこそ、俺たちを受け入れてくれて、ありがとうございます。」
話を終えたちょうどその時だった。部屋の扉の方から大きな衝撃音と爆発音が聞こえてきたと同時に扉が破壊され、ぞろぞろと水星人と地球人の兵士が入って来て俺たちとミュゲルさんを羽交い絞めにした。
その直後、部屋にあったモニターに、グラジオラスさんと地球の政府の人の顔が映し出され、二人が話し始めた。
「ミュゲルさん、こんな手荒な真似をして本当に申し訳ないと思っています。しかし、あなたはこうでもしなければ交渉に取り合ってはくださらないと思い、このような手段に至りました。今から、あなたが地球や水星と交友関係を築く為の交渉するという言葉があなたの口から出るまで、あなたとこの星の住人の方々を拘束します。それでもあなたは地球人と交渉しないとおっしゃいますか?」
そう言うと、ミュゲルさんは俺たちの方を見てこう言い放った。
「私を嵌めましたね?」
「違うんです!これは偶然です!ミュゲルさん!信じて下さい!」
俺達は金星人の姿をしていた為に、グラジオラスさん達には俺たちの存在に気付いて貰うことができず、主張をしようとしても兵士に黙れと言われるばかりで話をすることができなかったどうしようもなくなった俺は、兵士の不意をつき、腹を肘で思い切りど突いて、DSTDを取り出して9を押した。その直後、反撃に来た兵士に頭を強く打たれ、そのまま気絶してしまった。
金星の最高権力者ミュゲルにようやく会うことができた雄馬達は穏便に話を進め、長年閉ざされたミュゲルの心を開かせることができたと思った矢先に、タイミング悪く、水星の最高権力者グラジオラスと地球の政府の者が来てしまった。このままでは、作戦は全て無と化してしまうと思い、焦った雄馬は、単独で行動しDSTDを使った。一体この先どうなってしまうのだろうか?!




