第4話
自分達の命を賭け、金星に行くことを決断した雄馬たち。果たして金星に行き、ミュゲルとの交渉を成功させることができるのだろうか?!
それから俺たちは、早速、金星に行く準備に取り掛かかった。モニターに映っていたミュゲルさんの姿を必死に再現し、変装機能と金星でも呼吸ができ、普通に歩き回れる性能を持つスーツを四人分造り、金星に行く用の宇宙船の整備と燃料の最終チェック、食料や備品チェックを約二日で済ませた。研究所の研究員たちには、俺たちが外出中の仕事の引継ぎをし、政府の人やグラジオラスさんから連絡が来た場合に備えて、あえて研究所に残る研究員たちには行き先を伝えなかった。
そしてゆなは俺の両親に預け、デイシーは仲田の両親に預けて早速金星へと旅立った。
数時間後、金星に着陸すると造って来たスーツに着替えて金星を探索し始めた。
しばらく歩くと複数の金星人の姿が見えた。その金星人達に近づいてみたが、変装には気が付かれていない様子だったのでさり気なくその金星人たちの後について行くと、大きな都のような場所に辿り着いた。見上げるとその奥の方には、いかにも城という感じの大きな建物があったので、俺たちは都の中をくぐり抜けてその城のような場所へ向かうことにした。
しばらく歩いていくと、狭い通りで小さな金星人が3人で走り回っていた。その3人の小さな金星人たちが何をしているのかを少し離れて気付かれなさそうな距離から数分間じっと見ていた。
そうしている間に段々と陽が沈んでき、大きな金星人が2人出てきて小さな金星人達を連れて建物の中へと連れて入っていった。
同じ建物に入っていったので、おそらく彼らは家族だったのだろう。そう思いながら俺たちは暗い夜道を更に奥へ奥へと進んで行った。
街灯が一つ二つと付き始め、細い通りをなるべく人目を避けて歩いていると、少し先の大きな通りの方から、何やら音楽と温かな光が見えてきた。その方へ向かって歩いて行くと、大勢の金星人達が音楽に合わせて歌いながら輪になって踊っていた。
その様子をぼーっとして見ていると、近くにいた金星人達が俺たちの手を取り輪の中へと誘導し、一緒に踊るよう誘ってきた。彼らの話す言葉は全く分からないが、俺たちは上機嫌になってしまい歌って踊っていた。そうしている内に周りにいた金星人から、器に入った謎の透明な液状のもの差しだされ、断ろうとしたが無理やりその液状のものを飲まされてしまった。よく味わってみるとそれは、焼酎の味がしたのだ
った。俺達はまるで催眠術にかかったかのように踊り続け、飲み続けた。
気が付くと俺たちは、見知らぬ部屋のベットの上に別々に寝かされていた。
「ここはどこだ?確か俺たち、祭りみたいなものに参加させられて、酒飲まされて、それで、、、。」
「俺もどこか分からないですし、あまり昨夜の記憶がありません。キャシーと神菜ちゃんは何か覚えてる
?」
「私も踊って飲んだ後の記憶は何も、、、。」
「私も何も覚えてないわ。」
「俺たち一体、どうしてあんなに踊ってたんだろうな?」
「さぁどうしてでしょう?もしかして、金星の人の特殊能力なのかもしれませんね。」
「そうだな。俺たち四人揃って、重要な任務がありながら無防備にあんなに踊り狂って記憶が無くなるまで酒を飲むなんて、どう考えてもおかしいよな。」
俺がそう言い切ると、部屋の扉が開いて一人の金星人が入ってきた。
「はて、その重要な任務とはどんなものかね?ワシにもお聞かせ願いたい。」
俺達は突然部屋に入ってきた一人の金星人に驚いたのと、その金星人が普通に地球の言葉を話したことに驚き、少したじろいだ。
「あなたは何者ですか?」
「ワシか?ワシは見ての通り金星人じゃが。」
「いや、それは分かります。そうじゃなくて、、、。」
「ハハハ、すまんすまん。長年この家に一人で住んでるもんで、話し相手ができたついでに人をからかう癖がついてしまってのう。ワシは、地球人となったラルミス様を崇拝する者の代表者、ザックルじゃ。人はワシを陰のボスとか呼ぶ。だが、この崇拝集団に入団している者や、ワシがその集団のボスであることがこの星の最高権力者であるミュゲル様を始めとする城の者たちにバレれることがあれば、ワシも彼らもただではすまんがな。ところで、本題に入るが、地球人のお前さん達がなぜ、金星にいるのじゃ?」
「なぜ、俺たちが地球人だと思うんでしょうか?」
「隠さなくて良いんじゃよ。なぜ、分かったかって?匂いじゃよ。ワシ達金星人は、嗅覚がとても優れている上に、一度嗅いだことのある匂いは忘れんのじゃよ。その昔、何度か地球人に会ったことがあってな
。そしてワシ達は、ラルミス様が愛した地球を地球人を愛している。だから君たちがこの星に降り立って
、一般の人々や城の者達よりも先に、ワシ達に出逢ってくれたことは、本当に運が良かったとも言えよう
。先日、ミュゲル様が地球や水星とは一切の関係を断ち切ることをお決めになられたことを知り、とても悲しく思っていたんじゃ。そんな時、君たちがこの星に降り立ち、君達の存在に気が付き、ワシ達の宴の場に来させるよう密かに誘導したというわけじゃ。
だが突然、この話をしたところで、君たちに逆に警戒されてしまうと思ったもんで、あの宴の場でワシ達の集団のみに代々伝わる、踊りの催眠にかけたわけじゃ。ワシ達は定期的に宴をしては踊り、フラストレ
ーションや体にかかるストレスの発散をして、脳内の迷いをリセットしているのじゃよ。それを君達にもしてもらった。そして地球でいう酒というものにものすごく似た成分のものを飲ませることで更にリラッ
クスさせ、一旦眠らせ宿泊させて、こちらには危害を加える気がないことを明確に伝える作戦だったんじ
ゃ。だが、なぜ君たちがこのタイミングでこの星に来たのかを知りたい。」
「そうでしたか。それでもあなたのことを簡単には信用できないと思ってしまいましたが、もしあなたが俺たちを最初からハメるおつもりなら、とうに城に突き出すなりしていますよね。だから、信用するかしないかという点とは少し観点がずれますが、それを理由に俺たちがこの星に来た理由をお話したいと思います。」
「理由はなんだって良いのじゃ。知らない星に来て、しかも足を踏み入れることを禁止された星に来て、こちらを警戒するのは当然のこと。話す気になってくれてありがとう。では、早速聞かせてくれるかな?
」
「はい。俺達は地球の最高権力者の側で働いています。今回ミュゲルさんが地球や水星にした警告を受けて、地球と水星の最高権力者たちはミュゲルさんの警告を無視して、またこの地に足を踏み入れ、交渉する気でした。俺たちはそれに対して反論をしたものの、彼らは俺らの話に耳を傾けてはくれませんでした
。だから俺達のような権力を持つか持たないか、歪な立場の人間が、彼らより先にミュゲルさんに直接交渉に出ることで、警戒される程度が低いと思ったのと、もし失敗したとしても、地球や水星の星単位に及ばないことを予測し、俺たちの命をかけて、俺たちの独断で、ミュゲルさんに交渉をしに来ました。」
「そうか。しかし、どう交渉する気じゃ?」
「俺たちのありのままの気持ちをミュゲルさんに伝えて、しっかりと対話をすることが俺たちの交渉の戦法です。」
「そうか、、、わかった。ワシらも協力しよう!」
「協力していただけるんですか?かなり無謀な作戦ですよ。」
「ああ。ワシらは君達、地球人をとても信頼しているし愛している。だから、こうして君達と知り合ったのも、天の思し召しだと思うのじゃ。是非協力させていただきたい。よろしいかな?」
「協力していただけるのはとてもありがたいのですが、その前に一つお聞きしたいことがあります。」
「なんじゃ?」
「なぜそこまでラルミスさんや、俺達地球人を愛し崇拝するのですか?」
「もう大昔のことじゃ、ラルミス様がこの金星にまだいらっしゃり、まだ最高権力者の肩書を得る前の話じゃ、、、。」
金星に降り立った雄馬達を快く出迎えてくれた謎の金星人ザックル。彼が雄馬たちに手を貸すその理由とは
?!




