第11話
雄馬とキャシーは元の世界に戻ったが、雄馬以外、DSTDというものそのものの存在を覚えている者はいなかった。まるで、雄馬だけがどこか違う世界に行っていたかのようになってしまったが、DSTDは確かに存在していた。そんな世界の中で一体雄馬はどう生きてゆくのか?!
「いえ、違うんです。本当に覚えていないわけではなくて、なんだか、頭がぼんやりしていて、、、急に色々と確認したくなっただけなんです、、、。それからキャシーさん、もう一つだけ聞いても良いですか
?」
「はい、答えられることでしたらなんでもお答えします。」
「キャシーさんのお母さんとキャシーさんって昔、誰かに命を狙われたことってありませんでしたか?」
「そのお話も、皆さんが同席してくださった、先日の私と両親の話し合いの際に、私の両親が話していたと思うのですが、、、。でももう一度お聞きになられたいんですよね。お話します。昔、私の祖父は地球人の女性と結ばれる運命だったのを相手の女性を自分の親に暗殺されてしまい、その代わりに水星人のhmsringの運命にはない女性と結婚させられることになり、その二人によって産まれたのが私の父でした。私の父も地球人の女性である私の母と結ばれる運命にありました。それを知った祖父は、自分が報われなかった分、自分の息子には幸せになってもらおうと、自分の中にある報われなかった、羨ましいという気持ちと嫉妬の感情と必死に闘いましたが、その闘いに負けてしまったようで、私と私のお母様を暗殺し、我が息子を自分と同じような道に道連れにしようとしたことで、その行き場のない嫉妬の感情を発散しようとしていたようですが、何者かが現れて、祖父の暗殺計画を阻止してくれようとしたみたいです。
結果的には母が自分で自分の身を守ったようですが、その人達がいなければ暗殺のことを知ることも、私もお母様も絶対に助からなかったと聞きました。」
「その人達っていうのは?あと結果的には自分で身を守ったっていうのはどういうことですか?」
「母は幼いころから周りの人には見えないものが見えていたようで、それがどんな人物だったとかを忘れたことはなかったようですが、その助けてくれた人達の名前と顔はどうしても思い出せないようです。だけど、その人達が暗殺のことを教えてくれたことと、阻止してくれようとしたことは鮮明に覚えているようで、、でも最後の最後でその人達の計画はお祖父様に打ち砕かれ、念の為にと誰にも秘密で殺し屋の人数をもう一人用意していたお祖父様の計画がその人達には勝りました。その前夜に、お母様はある夢をみたそうです。その夢というのが自分を守ってくれようとした人物たちの計画が上手くいかず、自分が殺されてしまう夢だったそうです。その夢の自分が殺されそうになる直前の情景や周りにいた人の動きが全く一緒だった為に、お母様は殺される直前に早めに護衛に助けを求め、目と鼻の先の距離にいた殺し屋に殺されることなく、助かったそうです。」
「そうでしたか、、それでその後、お祖父さんはどうなったのですか?」
「お祖父様はその後、お祖母様と二人の殺し屋の証言によって暗殺のことが城内で明るみに出て、王位を私の父であるグラジオラスに譲りました。その後、お祖様はすっかりもぬけの殻ようになってしまいましたが、時間をかけて、ゆっくりゆっくりと心を取り戻し、私達家族との信頼関係を少しずつ取り戻していきました。私はお祖父様が私を殺そうとしていたことは先日聞くまで全く知りませんでした。そしてお祖母様が数年前に家族みんなに見守られながら微笑んだ表情で最期を迎え、その後を追うかのように、お祖父様も同じように微笑んだ表情で最期を迎えました。お祖父様がまだ元気だった頃に、お父様とお祖父様が会話しているのをたまにしか見たことがなかったのですが、お祖父様が亡くなった日、お父様は声を上げて泣き、顔をお祖父様が眠っていた布団にうずくめて、それはそれは泣き叫んでいたのを今でもはっきりと覚えています。あんなお姿のお父様を見たのはあの日が初めてでした。
それもあって、私に対して過保護になっていたかもしれないと話していましたが、私はそれだけではないと思いましたが、、。でもそれもあるんだなと思いました。それを知って私は、勝手に家を出たことを詫びるべきだと思いました。ですがそれ以上に、仲田さんというhmsringの運命にあるパートナーと出会うことができ、ここで大好きな研究ができて、とても幸せで幸せで仕方がないんです。だから、こん
な幸せな人生を与えてくれた、私を生んでくれた両親のちっぽけな過ちくらい赦そうと思えました。そして、両親は私が仲田さんと生きていくことを結婚を快く赦してくれました。だからこれからは、もっとも
っと幸せになる努力を続けよう。今はそう思っています。」
「そうでしたか、、。なんだか、先日全部聞いていた話なのかもしれませんが、本当に良かったです。俺もキャシーさんと、仲田と神菜と一緒にこの研究所で暮らして仲間でいれて本当に嬉しいし、科学者にな
って本当に良かったです。みんなありがとう。」
「雄馬さん、俺もっす。」
「私もよ、雄馬。」
「雄馬さん、私もです。」
「でも雄馬、仮眠して目を覚ましてから、あなたちょっと変よ?大丈夫?」
「大丈夫、ちょっと疲れてるだけだから、もう少し休ませてもらえるかな?」
「ええ、きっとそうした方がいいわ、ゆっくり休んで。電気は付けておく?」
「ああ、悪い、消してくれ。」
神菜が気をきかせてくれ、みんな部屋から出て行った後、俺は照明の消えた部屋で一人で考え事をした。
DSTDの力によって、過去が変わってしまったこと、みんなの記憶から、DSTDのことが消えてしまったこと、俺という存在はここにあるものの、みんなと共有できる記憶や思い出はあるのだろうかと考えると、とても寂しい気持ちになってしまった。けれど、その代わりに、俺一人がおかしなことを言わず、全てを背負えば、みんなが笑顔でいられる。俺はその覚悟をして、この先の未来を生きていこう。そう思いながら、眠りについた。
目覚めると朝日が窓の隙間から差し込んで、数年ぶりにとても良く眠れた気分だった。しかし、どこか心の中でモヤモヤがつっかかっているような気持ちでもあった。
だが、ふと、横を見ると隣には神菜が眠っていた。
俺は、驚いて飛び起きた。
すると神菜が目を擦りながら、ゆっくりと起き上がった。
「どうしたの?雄馬、そんな驚いた顔して。」
「ど、ど、ど、どうしたって!神菜が隣で寝てたからびっくりして、、!!」
「いつも、一緒の布団で寝てるじゃない、、なにを今更、、、。」
「い、いつも?!!」
俺は驚きながら必死に冷静に昨日のことを思い出そうとしていた。、、、そうして思い出したのは、俺だけが記憶がないような世界になっているということだった。しかし、この新しい世界での俺は一体、神菜とどこまでの関係に、、と思うと、記憶がない自分をとても悔やんだ。そうしてモジモジしていると、神菜が真顔で切り出した。
「やっぱり、なんだか、、雄馬、変よ。何があったか話して。」
「何も変じゃないよ。寝起きで嫌な夢にうなされてただけだ。」
「ふーん、そうなんだぁ。」
「うん。」
「じゃあ、一昨日した約束覚えてる?」
「一昨日した約束って?!今日デートの日とか?」
「違う。」
「じゃあ、今日夜ご飯は寿司!!とか?!」
「違うわよ。あなたから私に言ったことよ。あんなに大切なこと、どうして覚えてないの?」
「ちょっと疲れててさ、、、。」
「疲れてるだけで、あんな大事なこと忘れたりしないわ!もし本当に何も覚えていないのなら、すぐに病院に行った方がいいわ。」
「ごめん、覚えてない。でもこれは、事情は話せないけど、病気ではないんだ。」
「話せない事情ってなに?」
「それは、、、。」
「もういいわ!!こんなものいらない!あなたと結婚なんて無理だったのよ。やっぱり、ただの仲間でいることが正解だったのね。この話はなかったことにしましょう。じゃあ。」
そう言って神菜は手から何かを外して俺に投げつけると、部屋から出て行ってしまった。神菜が投げつけたものを拾うと、それは指輪だった。おそらくこの世界の俺は神菜にプロポーズをしていたのだ。
俺はとっさに走り出した。このまま、神菜と夫婦にならずに、仲間として、恋人として生きていくのも悪くはないとは思う。思うけれど、それ以上に彼女とは、、神菜とは、もっと深く繋がっていたいと思った。そしてもっともっと、神菜と色々な苦労や色々な世界を一緒に見たいと望んでしまった。そうしたら、勝手に体が動いて、気が付いたら、部屋から出て行った神菜を追いかけていた。神菜を見つけると、俺は神菜を抱きしめていた。
「行かないで。全部話すから、俺が悪かった。結婚しよう。」
俺がそういうと、神菜はしばらくしてから、ぎゅっと俺を抱きしめ返し、静かに、確かに、「はい」と答えた。
その後俺は、DSTDのことや、同じ記憶を持っていないことを神菜には洗いざらい話した。すると神菜は真剣に答えた。
「同じ記憶や思い出が無いのならば、また一緒に作っていけばいい。あなたは無事ここに戻って、今ここに存在しているのだから、いくらでもまた作っていけるわ。みんなに話すかどうかはあなたが決めればいい。研究のことは私があなたに教えるわ。だから何も気にすることなんてないわ。」
「ありがとう、神菜。」
「話してくれて、ありがとう。」
「神菜」
「何?」
「愛してる。」
「私もよ。」
DSTDで過去の水星に行ったことはキャシーの記憶には無かったものの、雄馬とキャシーが救いたかった未来は、救われていた。だが、その代償かのように雄馬以外の者でDSTDの存在を知るものは誰一人としていなかったが、雄馬の異変に誰よりも早く気が付いた神菜は、雄馬にその訳を問い詰めた。そして、全てを神菜に打ち明けた雄馬は、その重たい荷物を一人で背負う気でいたが、最愛の人である神菜にその重たい荷物を共に背負ってもらい生きていく道を選んだのだった。
後編第四章 「闘い」に続く




