第10話
キャシーを助けに行った雄馬だったが、キャシーは果たして無事なのだろうか?!
走って数分後、キャシーさんを見つけたものの、頭から血を流して床に倒れていた。キャシーさんの意識はありそうだが、殺し屋が、姿の見えないはずのキャシーさんの方へ向かって、棒を思い切り振り下ろそうとしていた。俺は廊下に飾ってあった鎧が持っていた棒状の武器で、走って殺し屋に殴りかかった。
すると、殺し屋はそのまま床に倒れて気を失った。
「キャシーさん大丈夫ですか?!」
「大丈夫です、、。すみません、しくじってしまって、、、。私の姿が殺し屋さんには見えないから、かまいたちのように少し殴りかかれば、そこまで反撃されずに時間を稼いで逃げきれるだろうと思ったのですが、、、やっぱりプロの殺し屋さんとなるとそうはいかなかったみたいで、、、。」
「無茶しないって約束したじゃないですか!!それなのにどうして?!、、、だけど、キャシーさんが生きてて良かった、、、でも俺が来るのが遅かったばっかりにキャシーさんに怪我をさせてしまって、ごめんなさい!」
「私が勝手にやったことです。雄馬さんは謝らないでください。」
「いいえ、やっぱり俺が殺し屋のあとをつける役をすべきでした、ごめんなさい。」
「そんな、、、それは私が、、、」
そう言いかけてキャシーさんは突然、青ざめた顔を浮かべた。
「お母様?、、、お母様が今、テレパシーで私を呼んだんです、、どうしたの?、、、お母様!、、、お母様!!!、、ねぇってば!、、、今すぐそっちに向かうわ!!」
「クレマチスさんが、どうかしたんですか?!」
「突然お母様からテレパシーで声が聞こえてきて、、、とりあえず、お母様がいる部屋に向かいましょう!!」
そうして俺たちはクレマチスさんのいる部屋へと走って向かった。
部屋の扉の前に着くと、思い切りドアを開けて俺とキャシーさんは部屋の中に入ったが、そこは、部屋の中ではなく、前にも見たことのある、グネグネと歪んでいる空間だった。
俺たちはその空間に勢いよく飛び込み、そのまま吸い込まれてしまった。
目を覚ますと俺はベッドの上で眠っていた。そこは、元の世界の自分の研究所の仮眠室のベッドだった。手に何かを持っていることに気が付き、上体を起こして布団の中から手を出すとそれはDSTDだった。
そしてなぜ、俺がここにいるかは全く分からなかった。あの後、クレマチスさんは一体どうなって、みんなは、地球は、水星は一体どうなったのか?それらが頭の中を駆け巡っていた。
すると、突然部屋の扉が開いて誰かが部屋に入って来た。
それはキャシーさんだった。俺は反射的にキャシーさんに質問を投げかけた。
「キャシーさん!!俺たちあの後どうなったんですか?!クレマチスさんは無事なんですか?地球は?水星はどうなったんでしょうか?!」
「雄馬さん、何か悪い夢でもみたんですか?あの後って、、地球や水星がどうなったって?雄馬さんを起こしてきてって、神菜さんに頼まれて起こしに来たのですが、、、。」
「どういうことですか?だって、俺たちはさっきまでDSTDの力を使って、二人で水星に行ってたじゃないですか?」
「二人で水星に?DSTDってなんですか?ちょっと雄馬さん疲れてるみたいですね、お水でも持ってきますか?」
「あ、いや、、、それより、ちょっとみんなと話したくて、顔が見たくて、俺、今立ち上がれそうにないんで、仲田と神菜も呼んできてもらえますか?」
「わかりました、今、呼んできますね。」
そう言ってキャシーさんが部屋を出て行った後、俺は一度落ち着いて、どうにか頭の中を整理することにした。
DSTDで異世界に行っていたというよりも過去の水星に行っていたはずの俺が今度は自分の研究所の部屋の中にいる。もしかすると、まだDSTDの力によって異世界に来たままなのかもしれないとも一瞬よぎったが、それならなぜ、あのままクレマチスさんを救う場面に到達できずに、いきなり元の世界に戻ったのかが引っ掛かった。ようやく少し冷静さを取り戻した気になってくると、俺は頭の中である予感を過ぎらせていた。その予感がただの予感なのか現実なのかを確認する為に、キャシーさんがDSTDやその力で水星に行ったことを本当に覚えていないのかをもう一度、神菜と仲田がこの部屋に来たタイミングで聞いてみることにした。
それから、まもなくしてキャシーさんが神菜と仲田を部屋に連れて戻ってきた。
「雄馬、大丈夫?」
「雄馬さん大丈夫ですか?毎日顔を合わせていて、少し仮眠室で仮眠をとっただけなのに、俺たちの顔をみたいし、体が思うように動かないなんて、一度病院で診てもらった方がいいんじゃないですか?」
部屋に入ってくるなり神菜と仲田は俺の体調を心配した。
「大丈夫だ。それよりキャシーさんに、もう一度確認したいことがあるんです。」
「なんでしょうか?」
「DSTDというものをキャシーさんはご存知ですか?」
「ごめんなさい。先程もお話しましたが、DSTDとはなんでしょうか?」
「本気で言っているんですか?じゃあ、仲田と神菜は?DSTDが何かが分かるだろう?」
「ごめんなさい雄馬、分からないわ。」
「俺も分からないです。」
「そうか、、じゃあ、俺と仲田と神菜が最初に知り会ったのはバイト先だったよな?」
「最初に知り会ったのは、大学の時じゃないですか。俺が大学の2年、神菜ちゃんが大学1年の時、雄馬さんは大学4年生の時ですよ。サークルが一緒で、学年は違ったけど三人で仲が良くて、卒業しても三人で遊んだりして、別々の職場で別々に暮らしてたけど、3人で研究所を設立しようってなって、この研究所が研究所兼、俺たち3人の家になったじゃないですか。今はキャシーもいるから4人ですけど。まさか、仮眠している間にそんなことまで忘れちゃったんですか?」
「いや、忘れてたっていうか、なんとなく昔を振り返ってみたくなってな。」
「っていうか、さっき、キャシーに聞いてたDSTDってなんすか?」
「お前も分からないのか?」
「はい。なんすかそれ。」
「神菜は?」
「私もわからないわ。」
「そうか、、、DSTDっていうのはな、、、俺が子供の時に持ってた乗り物のおもちゃだ。さっき寝起きでキャシーさんに、それを使って水星に行ってたって言いましたけど、完全に寝ぼてただけです、ごめんなさい。それから、キャシーさんのお父さんお母さんって今は元気に過ごされていますか?」
「ええ、二人とも元気です。」
「そうですか!!!良かった、、、!」
「というか、先日お父様とお母様に会ったばかりじゃないですか。」
「先日に?」
「はい。少し過保護過ぎる両親のもとにいるのが嫌だった私は家出をして明け方、水星の地上を彷徨っていたら、雄馬さん達がちょうど私の目の前に宇宙船で降り立って、私が無理を言って宇宙船に乗せてもらったんでしたよね。数か月前まで私は皆さんに、水星に住む王の娘であることを隠して、仲田さんとお付き合いをし、ここに住ませていただいていましたが、私の両親が地球に移住計画を立てていることを地球の政府の方からお伺いして知り、その話があまりにも急だった為、そんなことをしたら地球の人たちはパニックに陥るだろうという話をお聞きしたので両親を説得するためにも私から家出をしたことを詫びて、ただ逃げるだけではなく、親子で今後の関係のことを話し合った後で、急に地球に移住してくることを止めるよう説得をしたところ、考え直してくれるとのことで、つい先日に話がついて、その話し合いの時に雄馬さんも同席してくださっていたじゃないですか。皆さんに背中を押されて、ようやく両親と話をする気になれました。本当にありがとうございます。でも、、雄馬さん、、覚えていらっしゃらないんですか?」
水星にいたはずが、元の世界に戻って来てしまった雄馬とキャシーだったが、キャシーはDSTDを使って異世界に行ったことは覚えておらず、仲田と神菜も雄馬が異世界に行ったことを覚えていないと思いきや、よく話を聞くと、歴史が雄馬の知らないところで変わってしまっていた。その世界の中で雄馬は一体どのように生きてゆくのだろうか?!




