第9話
父親に策略により、愛するものを失ったカルミアは、自分の生きてきたこれまでの人生に悔いて、それでも実の息子であるグラジオラスの幸福は願いはしたものの、憎しや嫉妬に心を覆われその弱さに負け、我が子を自分が辿った運命に道連れにするかのようにクレマチスとキャシーの暗殺を目論んでしまう。そんな呪われたかのような一族を雄馬とキャシー自身は救うことができるのだろうか?!
「ええ、わかりません。だけど、今ここにあることの全てが現実。きっとあなたは、私がここから逃げて本当のパートナーの元に行くと言ったら、あなたはあの人か私を殺すか、または私もあの人も殺すことでしょう。自分の憎しみに囚われて、周りの人間をより苦しめているあなたが、なぜ人に愛されると思うのですか?
だけど私は、これからもずっと逃げも隠れもしません。ずっと、私の一生をかけて、あなたのお傍にいるつもりです。あなたがそれを許可するのであれば、ずっと。だからせめて、私たちの実の息子の幸せくらいは、そっと見守ってやることはできないでしょうか?いいえ、私からの一生のお願いです。あの子の家族を殺すことだけは止めてください。」
「私に指図をするのか!お前が一生をかけて、私の側にいることなど当然のことだろう。お前ごときの一生をかけたところで、何にもなりもせんわ。おい、お前、この女を奥の部屋に縛りつけて閉じ込めておけ
。それが終わったら2時間後、作戦を実行しろ。」
「仰せの通りに、王様。」
「やめて!!放して!!カルミア!!!こんなくだらないことは、もう止めて!!お願い!」
そう言って抵抗するクロエさんの声も想いも、もはやカルミアさんには何も届かないようだった。その全貌を知った俺とキャシーは、それぞれの主観でショックを受けていた。
これまで全く喜怒哀楽を見せたことがなかったと聞いていたクロエさんがあんなに必死になってカルミアさんを止めようとしていたのを見たキャシーさんは、一体何を思ったのだろう。
初めてクロエさんを見た俺ですら、ただ我が子や家族を思う素敵なおばあちゃんにしか見えなかったのだから、キャシーさんはもっともっと色々なことを思って、こんなにまでして自分と母親を守ってくれようとしていたおばあちゃんをとても愛おしくも思えて、苦労してきたおばあちゃんを想ってなのか隣でキャシーさんはむせび泣いていたが、そのあと涙を拭いてシャンとした。
「なんとしても、お母様と過去の私を救います。」
「そうですね。僕もなんとしても二人を、いえ、キャシーさんの家族みんなを救いたいです。」
「、、、、、、、ありがとうございます、、、。」
「では、俺たちも動きましょう。俺はクレマチスさんの所に行って話をして準備をしています。キャシーさんも、あの殺し屋から目を離さないように気をつけて、、そして、絶対に無茶はせずに何かあったら、すぐに俺を呼んで下さいね!」
「わかりました。なるべくマメに、雄馬さんにテレパシーで声をかけるようにします。」
「お願いします。ではまた後で会いましょう!」
そう言って俺たちは二手に分かれて作戦を続行した。
約10分後、俺はクレマチスさんがいるグラジオラスさんの部屋に到着した。部屋に入ると、グラジオラスさん、クレマチスさんと幼いキャシーさん、そして護衛の人が二人いた。俺は、こそこそとクレマチスさんに近づいて話をしようとした。
「もう、こそこそしなくても良いのですよ。」
クレマチスさんがそう言ったので、俺は一旦足を止めた。
「どういうことですか?」
「雄馬さんの姿は私以外には見えませんが、雄馬さんとキャシーの話はグラジオラスと見方になって下さる護衛の者達には伝えてありますので、どうかそちらの椅子にお掛けになって堂々と話されて下さい。」
そう言われて椅子に腰を掛けると、グラジオラスさんと二人の護衛が少しだけ、摩訶不思議そうな表情を浮かべてこちらを見ていた。
「ところで証拠は掴めたのでしょうか?それからキャシーはどこへ?」
「はい、実は今、カルミアさんのいる王室へキャシーさんと二人で行ってきたんです。部屋には、カルミアさんとクロエさんと、もう一人護衛の姿をした人がいました。俺達はその三人からは姿が見えないことを利用して、近づいてはっきりと会話を聞いていたら、その護衛の姿をした人は、カルミアさんに、クレマチスさんと幼いキャシーさんを殺すことを命じられていた殺し屋の人だということが分かりました。つまり、護衛の服装に変装して、殺し屋の人は殺しにやってくるということです。その人の顔も俺とキャシーさんがはっきり覚えているので、もし側に来たら、俺がクレマチスさんに伝えることができますので、そこは安心してください。それからクロエさんのことですが、クロエさんはそのことをさっきまで知らなかったようで、カルミアさんと殺し屋の人の話を聞いて必死になってクレマチスさんと幼いキャシーさんの暗殺を止めるように話している光景を目にしました。そして、カルミアさんに歯向かった罰として今、王室の奥の部屋に閉じ込められています。」
「そんな、、お義母様が私達の為にそこまで、、、。」
「ですが、こちらの作戦が成功すれば今閉じ込められているクロエさんもクレマチスさんもキャシーさんも、きっと、この一族の全員が助かり救われるはずです。」
「ありがとうございます。私達はこれからどうしたらよろしいでしょうか?」
「カルミアさんと殺し屋の話によると、さっきの時点から約二時間後に、この部屋の隣にいるであろうクレマチスさんと幼いキャシーさんに襲い掛かるという話でした。
なので、それまでにクレマチスさんがいつも通り、隣の部屋でキャシーさんのおもりをするなどをして過ごしてもらい、護衛の方を部屋の中に何人か隠れて配置して貰って、殺し屋が来るのを待って、奴が部屋に来たら俺がクレマチスさんに知らせるので、襲われる直前まで待って、タイミング良く捕まえて、その殺し屋を尋問して、カルミアさんが言い逃れできない証拠を掴むという作戦です。それに、クロエさんもきっと、証人になってくれるはずです。」
「わかりました、そのように準備します。」
「それで、時間通り奴がこっちに来るとも限りませんし、奴の動きを見張っておくためにも念の為、キャシーさんが奴の後をつけて、変わった動きがあれば俺にテレパシーで連絡をしてきてくれるとの話になったのですが、、、。」
そう話していると、ちょうど、キャシーさんからテレパシーを使ってでの声が俺の頭に直接流れ混んできた。
「私です!雄馬さん聞こえますか?!」
「はい、聞こえます!」
「殺し屋の人がまだ予定の時間ではありませんが、お祖母様を部屋に閉じ込めた後一服して、なぜか早々と、王室から真っ直ぐそちらに向かっています。きっともう10分程でそちらに着いてしまうと思います。準備はどうですか?」
「今、ようやく話をし終えたところです。」
「間に合いそうですか?」
「少しばかりギリギリになってしまいそうですが、きっとなんとか間に合うと思います。」
「ギリギリでは少々危険ですね。分かりました、私が少し時間を稼ぐので、その間にしっかりと準備をよろしくお願いします。」
「待ってくださいキャシーさん!!単独で行動をしないでください!作戦はクレマチスさんに伝えてあります。準備をクレマチスさん達に任せて、今から俺もそっちに向かうんで、それまで何もしないで待っていて下さい!」
「ですが、これは私の一族の問題です。雄馬さんに頼りっきりで、少しくらい私自身が無茶できなきゃ、やっぱり申し訳ないって思うんです。あとは私に任せて、雄馬さんはそちらで準備をして待っていてください!」
そう言ってキャシーさんからのテレパシーは途絶えてしまった。俺は、クレマチスさんにそのことを話して、あとの準備のことを任せて、お願いし、キャシーさんの元へと向かった。
カルミアの暗殺計画を阻止する計画を実行していくにあたり、無茶をしないと雄馬との約束をしたキャシーだったがその約束を破ってしまった。
果たして、二人の手で一族の危機を救うことができるのか?!




