第7話
キャシーの母であるクレマチスと、また過去の時間で再開したキャシーと雄馬だったが、キャシーが産まれる少し前の時間に辿り着いた二人はクレマチスがキャシーを出産するタイミングに出くわしたのであった。
数時間後、無事、クレマチスさんはキャシーさんを出産した。分娩が終わってすぐに、キャシーさんは俺を呼びにきた。
「雄馬さん、お待たせして申し訳ありません。お待たせして更に図々しいとは思うのですが、一つお願いを聞いては頂けないでしょうか?」
「なんですか?」
お母様が、生まれたばかりの赤ちゃんの姿をお友達にも見て行って欲しいってきかなくて、、、といってもその赤ちゃんは私なので、自分で言うのもおかしな話ですが、、、見てあげて貰えますか?」
「わかりました。」
分娩室に入ると、生まれたばかりの赤ん坊を横に寝かせて抱き抱えるようにして見ながら、涙を流して喜ぶクレマチスさんの姿がそこにはあった。
「こんなに可愛くて愛しい出会いをせずに、昔、私は死のうとしていただなんて、あの時グラジオラスと出会って、今この命があって本当に良かったわ。私はなにがあっても永久にこの子を愛して守って行くわ
、グラジオラス、、あなたと一緒に。」
「私も、君と一緒にこの子を、いや、私が君とこの子を永久に愛して守っていくよ。」
その光景は、キャシーが両親にどれだけ愛されていたのかが、この上ないくらいに伝わってくる美しい光景だった。
その光景を目にして俺はあることが頭に浮かび上がってきていた。それを早急にキャシーに伝える為に一旦キャシーを呼び、分娩室の外へと連れ出したところまた扉から出た瞬間に分娩室の外の廊下ではない場所に出てしまった。そこは城内の廊下であることはわかったが、場内のどこかまでは俺には分からなかった。
俺はそれでも一刻も早くキャシーさんにそれを伝える為に、何よりも先にその話を切り出した。
「キャシーさん、一か八かキャシーさんのお母さんであるクレマチスさんの命を俺たちで救ってみませんか?」
「どういうことですか?」
「言葉の通りです。未来でクレマチスさんが殺されてしまうことを俺達がクレマチスさんに伝えて逃げてもらいましょう。」
「しかしたった今、またいつの時間かに飛ばされてしまったかもしれませんし、もう手遅れかもしれません。」
「まずはあの時計の部屋に行って、今の時間を確認してきましょう。それでもし間に合うようなら、クレマチスさんを救いましょう。」
「ですが、、すでに決まった運命を変えると色々なことが変わってしまってそれが良い未来に変わるとも限りません、、、。」
「なぜそんな風に思うんですか?」
「だって、それは、、、私は嬉しいです、嬉しいですが、私が嬉しくなることと世界が救われることは別の問題な気がしていて、、私と私の家族が救われなかったことで世界が救われるんじゃないかって、そんな風に思えてならないんです。」
「でもキャシーさんとキャシーさんの家族が救われなかった未来で、俺たちも地球人の沢山の人が救われなかった。そして今、何をすればいいかわからない状況の中で、目の前にずっと夢にまで願った、キャシーさんの家族をキャシーさん自身の幸せを取り戻せるかもしれない可能性があるのにどうして躊躇するんですか?」
「それでもし世界が救われなかったら、私が幸せに浸って浮かれていたせいだって思ってしまうから、、かもしれません。」
「目の前にあるできることをしないで、先にあるかもしれない不幸に浸るのは、そんなに気持ち良いですか?」
「どういう意味ですか?」
「俺も昔、今のキャシーさんの様に生きていました。自分に自信が無くて、自分が決めたことでもし全てが悪い方向に進んでしまったらと思うと何も決断できなくて、何もできなくて、人生はそんなもんだって開き直って、何もできないでいることをできる人のせいにして、なんの努力もせずに羨んで生きてました。それでもってこんな世界のどこに幸せがあるんだろうだなんてぼやいたりして。だけど、俺の守りたいと思う人達、家族や研究仲間や恋人を本気で守っていきたい、肩を並べて対等に真剣に向き合って生きていきたいと思った時に、俺が変わらないと、周りを守ることも、対等に肩を並べて真剣に向き合い続けることも、この先できないと思ったんです。だから、まだ在りもしない自分が勝手に作り上げた不幸になるかもしれない未来の妄想に飲み込まれるのを止めて、行動し続けることが俺がそれらを守り続けられる唯一の方法だと思ったから、俺はただのうじ虫を止めました。そしてそんな風に生きてたら、大切にしていた人達が弱った時に励ましてくれるこころ強い人達になってくれて、キャシーさんも俺にとっての大切な人の一人なんです。だから、その大切な人が苦しんでいる時にただの傍観者ではいたくないんです。それに、、、あんなに幸せそうな家族が誰かの手によって崩壊させられるなんて、俺はすごく悔しいです。キャシーさんは悔しくないんですか?!」
「く、、、悔しいに決まってるじゃないですか!!」
「だったら迷ってないで、そんな運命ぶち壊しましょう。」
「はい、行きましょう。」
そのあと時計の部屋にすぐに向かい、時間を見たキャシーは息を呑んだようにした後、話した。
「今日はお母様が亡くなられた日、、命日の朝です。そして、亡くなられた時刻が今から五時間後です。
」
「まだ間に合いますね!急いでクレマチスさんを探しましょう!」
「はい!」
俺とキャシーさんは城中を走り回り、約一時間後にようやくクレマチスさんを見つけた。
クレマチスさんは造花の中庭で赤ん坊のキャシーさんを抱き抱えて散歩をしているところだった。俺達はクレマチスさんに駆け寄って話しをした。
「クレマチスさん!」
「あら!キャシーとあなた、、お久しぶりね。会う時はいつも久しぶりで突然のような気がするけど、、
、。」
「雄馬です。いつも突然でごめんなさい。今日は大事な話があってあなたの前に現れました。」
「大事な話って、何かしら?」
「はい、、実は、、、」
俺が話そうとすると、自分が話すという素振りをキャシーさんが見せたので話してもらうことにした。
「実は今日、お母様は殺されてしまうんです。」
「殺されるって誰に?」
「私からみれば祖父にあたる、カルミア・ローズ・ヴェインの陰謀によって、お母様と私の命は狙われているの。」
「そんな冗談言うもんじゃないわよ。だってお義父様は私たちを受け入れて祝福してくださっているわ。だからそんなはずは、、、。」
「それは、お爺様の作戦なんです。お父様とお母様がパートナーになったことは、水星に住む者達の沢山の批判の声もあることと、何よりもお爺様は自分の後継者である息子の妃が異星人であることに反対をしながらも息子が率直に言っても聞かないだろうと判断されたお爺様は納得したフリをして、お父様が自分の思い通りになるように計画し、お母様は赤ん坊の私の命を守りながら命を落とした。だからまず今日は
、どうか、お父様か信頼のおける人の側にいて守ってもらって!今日だけというか、命を狙われなくなるまで、どうか、、、もちろん私達も協力するから!」
「もしそれが本当だとして、本当だということをグラジオラスや皆さんにどう話して、どう照明すればいいのかしら?」
「まずは私達が、お爺様の様子を伺って探ってくるわ。それからその話を照明できる証拠を掴んでくるわ。」
「わかったわ。私はそれまでどうしていればいい?」
「お母様はお父様達の側にいて守って貰っていて欲しいの。証拠を掴んだらお母様たちを呼びに行くから
、なるべく決まった場所でお父様と赤ん坊の私と待機して守っていて欲しいの。」
「キャシーわかったわ。あなたが嘘つくとも思えないし、、私はこの子を連れてグラジオラスの側にいるわね。」
「うん、ただお父様の側に行くまで一緒に私達も行くね。」
「わかったわ、ありがとう。」
クレマチスさんをグラジオラスさんがいる部屋まで見送ると、俺達は早速作戦に取り掛かった。
これから来るであろう悲惨な未来のことをクレマチスに打ち明けたキャシーと雄馬は、一体どのようにして赤ん坊のキャシーとクレマチスの二人を救い出そうというのか?!




