第5話
DSTDの力により、水星の過去へとタイムスリップした雄馬とキャシーだった。DSTDの力によるものか、そこでキャシーの父と母、グラジオラスとクレマチスの結婚式の場面を目にすることとなり、そこで、現在のグラジオラスの人柄からは想像できない、熱くて夢と希望のあるスピーチをグラジオラスがしている姿を目にした雄馬とキャシーだったが、、、。
そんなことを考えていると、キャシーが口を開いた。
「お父様、昔はこんなに夢や希望を持って生きていたのに、、お爺様にお母様を殺されてしまったことで、あんなにも変わってしまったんですね。」
「そのこと知っていたんですか?!」
「はい。以前、お父様の側近のトニーが雄馬さん達に話しているのを部屋の外で聞いていましたので。」
「そうだったんですか、、、。」
「話だけで聞くのと、実際の光景を目の当たりにしていくのでは、自分の肉親のことですら実感がないものだって、お父様のスピーチを聞いただけで思ってしまいました。肉親だからこそなのかもしれませんが
。父から離れた私の判断は間違っていたかもしれないとさえ思えてきてしまって、、、。」
「間違っていたかどうかは分かりませんが、俺から見れば、あのままグラジオラスさんの所にいてもキャシーさんの周りの誰かが一人でも幸福になれたかという面では、誰か一人でも幸福になれた可能性は無いとは言いませんが、誰か一人ですら、可能性はかなり低かったと思います。」
「幸福ってなんでしょう?」
「なんでしょう、、、でも、なぜか分からないけど今現在こんな状況にあっても尚、今のグラジオラスさんのスピーチを聞いてから、全部大丈夫な気がするんです。きっと、全部うまくいきます。」
「どうして、そんな風に思うんですか?」
「なんとなくです。」
「雄馬さんがそう言うと理由は分かりませんが、なんだか本当に大丈夫な気がしてきました。」
キャシーさんはそう言って、また笑みを浮かべていた。
そうしている内に、いつの間にか、グラジオラスさんとクレマチスさんの姿が見えなくなっていた。俺とキャシーさんは慌てて二人を探そうとしたところ、会場内にいた人の会話が聞こえてきて、その話によるとどうやらグラジオラスさん達は一旦服装を裏方で変えたその後で、会場内の人達と宴を楽しむということだった。
それを聞いて俺達は、グラジオラスさん達のいる裏方の方へと向かうことにした。裏方の方へ行くと、グラジオラスさんとクレマチスさんは別々の部屋で着替えをしている様子だった。
俺は自分の姿が他人に見えないといえど、覗きはしてはならない!?と思ったため、キャシーさんと話し合い、クレマチスさんの部屋にはキャシーさん、グラジオラスさんの部屋には俺が二手に分かれて入り、様子を見てくることとなった。
グラジオラスさんの部屋に入ると、そこにはグラジオラスさんと側近のトニーさんがいた。トニーさんがグラジオラスさんの着替えを手伝いながら、二人は会話をしていたところだった。
「それで、私のスピーチを聞いた城外にいた民の反応はどうだった?」
「そうですね。なんとも、、皆様、この星のことにはあまり興味がないご様子で、外で民の皆様の様子を見ておりましたが、皆様、立ち止まったりすることなく、いつも通りに生活を営まれておられました。」
「トニー、お前は嘘をつくとき一瞬、言葉の合間に合間に動揺を見せる。隠さなくていい、私は事実が知りたいんだ。本当のことを話してくれ。」
「わかりました、、、実をいうと、、、、城の前では今、デモが起きています。地球人であるクレマチス様がグラジオラス様の妃となったのは、水星を侵略するための策略じゃないかなどと在りもしない理由を浮上させ、不信感を持った民の団体がデモを起こして城の前に押し寄せています。ですが、いつの日か必ず、グラジオラス様の思いが民の皆様にも届く日がくるはずです。だから、グラジオラス様は迷わずに自身の信念を貫いて下さい!」
「やはりな、、、。トニー、お前は何も心配せずにあるがままの現状を報告してくれればいいんだ。私が必ず水星の民も反対派の者も納得させてみせる。」
会話が終わる頃にグラジオラスさんの着替えも終わり、二人は部屋から出ていってしまった。俺も部屋から出てグラジオラスさん達の後を追った。
その頃、キャシーさんの方では俺が全く予測もしなかったことが起きていた。
私はお母様であるクレマチスがいる部屋にそっと入った。部屋の中には、着替えの手伝いをする人が一人とお母様がいた。部屋に入った時には着替えとお色直しはほとんど済んでいて、私が部屋に入ってすぐにお手伝いの人は部屋から出て行った。
「そこにいるお嬢さん、何か、私に御用かしら?」
私は一瞬、自分の目と耳を疑った。けれど、間違いなくお母様は私の方を見て私に向かって話しかけていた。
「私が見えるんですか?」
「ええ。昨日もあなたと、もう一人男の子が一緒にいたのが見えていたけれど、見えないふりをしていたの。だからあなた達の会話も聞こえていたし、あなたが私の娘だってこともあなた達の会話で聞いて知っているわ。今日はもう一人の彼はどうしたのかしら?」
「なぜ、私達に気が付いていたのに、気が付かないふりをしていたんですか?」
「私ね、この世のものじゃないものとか、少し先の未来が見えたり、小さな頃から他の人には見えないものが見えていたの。だから、現世にあるはずじゃないものを見ると分かるし、話せるの。でもそれはいつも良いものとは限らないから他人には隠していて、グラジオラスにも話していないから、こうしてあなたと私だけの時になる時が来れば話しかけてみようと思っていたのよ。」
「そうですか、、、。」
私は、お母様になぜ自分のことに気が付いていたのに気が付いていないふりをしたかなんて聞きながら、実は私自身もこの世界で初めてお母様の姿を見て、目が合ったような気がしたのを隠し通したい、気のせいであって欲しいという気持ちもあった。それは、ずっと会いたくて会いたくて仕方がなかったはずの存在だったのに、自分が想像していたような関係を築けなかったら、そして、何よりもお母様に嫌われてしまったらと思うと、その恐怖心の方が勝って、お母様が生きている姿を見ているだけで良いという気持ちになっていたから、あまり上手にお母様と話すことも目を合わせることもできずにいた。
「あら、どうしたの?実の親子だっていうのに緊張してるの?私の娘は恥ずかしがり屋さんなのね!ところであなたの名前はなんていうの?将来の私とグラジオラスはどんな風になってる?」
その質問に答えようとすると、お母様はそれを遮るかのように私が話すのを止めた。
「やっぱり止めておくわ!それを聞いてわかちゃったら、これからの人生面白くなさそうだし!話さなくていいわ!」
「あ、、はい、、、。」
「でもこれだけは聞いていいかしら?」
「はい、なんですか?」
「あなたは今幸せ?」
私はその質問に一瞬たじろいでしまったが質問に答えた。
「はい、幸せです。」
「そっか、、、。それじゃあ、一つって言ったけれど、やっぱり色々聞いていいかしら?」
「はい、、答えられることなら答えます。」
「あと、敬語はやめましょう!親子なんだから、もっと、肩の力を抜いて話して!って緊張してるのにそう言われてもいきなりは無理か、、、。せめて敬語なしで話しましょう?」
「あ、、はい、、。」
「ほらまた敬語使ってる!敬語はなしよ?」
「う、、うん!」
「お友達は沢山できた?沢山じゃなくてもなんでも話せる信頼できる友達はいる?」
「いる。」
「じゃあボーイフレンドは?できた?」
「できた、、、よ。」
「昨日一緒にいた子?」
「違う、あの人は、友達、、、っていうのかな?とても信頼できる仲間っていう方が正しいかな。」
「そっか、、、我が子のボーイフレンドに会ってみたかったなぁ~、まぁ生きていれば将来会えるね!」
私は一瞬、既にお母様が亡くなってしまってこの世にいないことをここにいるお母様と会話をしている数分間で忘れてしまうくらい会話を楽しんでいて、生きていれば将来会えるというお母様の言葉に対して、未来にはお母様が存在しないことが頭によぎり、悲しくなって、ぎこちない不自然な返事をしてしまった
。
雄馬とキャシーの姿は水星の人達には姿が見えていないと思っていたが、クレマチスだけには見えていた。
クレマチスにそのことを告げられたキャシーは、嬉しさの反面、それとはまた別の感情を抱き始めていた。




