第2話
ついに宇宙船が飛び立つ日を迎えてしまい、DSTDを使って人類を避難させることを余儀なくされてしまった雄馬に思わぬハプニングが起こってしまう。
俺たち四人は一睡もできないまま、宇宙船が飛び立つ日の朝を迎えていた。宇宙船が飛び立つ時間は17時で、それまでに俺はDSTDの8を押して眠って、宇宙船に乗れない人類を地球から運び出さなければならなかった。全人類とは言ったものの、地球に残るという人々も中にはいた。しかし、それでも宇宙船に人は乗り切らない為に、俺がDSTDを使う他、方法はなかった。俺は既に覚悟を決めていた。
そして、早めにDSTDの8を押して眠る支度をし始め、神菜達とこれで最後になるかもしれない会話をしていた。
「遂にこの日が来てしまったんですね。」
「ああ。」
「俺達、結局何もできなかったです。雄馬さん、ごめんなさい。」
「なんで謝るんだよ。何もできなかったわけじゃない。マキシムが俺の未来をこうして今に繋いでくれた。そして、これが上手くいけば何もできなかったことにはならないよ。沢山の人の命が救われるんだ。確実にマキシムの未来よりは良い未来になってる。だから俺はそのために、こうなる運命だったんだよ。
」
「でもそれじゃあ、雄馬さんが、俺たちの心が救われてないじゃないですか!」
「仲田、良いんだ。いつだってこの世界はそうだった。何かの犠牲なしでは救われるものはないんだ。マキシム達だって、消えても俺たちの中で生き続けるって言ったけど、俺たちが生きる為に消えてしまっことは紛れもない事実。そして、俺たちはその犠牲の上でこうして生き延びた。そして、今度は複数の命の為に俺が犠牲を払う。一見、悲劇のようにも思えるけど、今まで俺がマキシム達だけじゃなく、今現在に至るまでに、色々なものを犠牲に生き延びてきた。DSTDで行った世界で救えなかった命もあった。普段意識できたいることだけじゃなく、無意識に必然的に俺たちは日常から様々な犠牲の上で成り立っている。例えば食料、他の生命を犠牲にしてその上で俺たちの命が成り立っている。こうして生きているだけでも俺たちは酸素を吸ってそれを二酸化炭素に変え続けている。こうしている内に過ぎてゆく時間を犠牲に未来という今を生き続けている。それでもまだ、なんの犠牲も無しに生きていて、この状況を理不尽だと言えるのか?」
「それは、、、、。」
「そんなこと、、雄馬が犠牲になる理由にはならないわ。それを言うなら、ここにいる私達だって同罪よ。なんで雄馬なのよ!なんで雄馬だけが!、、、」
「ごめん。えも、結果的には、これは俺が決めた人生なんだ。最初は全てにおいて自身が無くて、DSTDが送られてきてから何度も、なんで自分が、、どうして自分だけがって思ったことがあったよ。でも分かったんだ、本当に嫌なら、俺はどんな手段を使ってでも投げだしていたのに、俺は、投げ出さなかった。なぜだか分かるか?」
「分からないわ。」
「俺がこう生きたいと望んだからだ。だけど俺はこんなことになってどうして俺だけがって思うはずなのに、怖いと思うはずなのに、自分が選択してきた結果が自分で選んだせいでこうなっていることをきっと
、本来は受け入れられないはずなのに、なぜか受け入れて穏やかな気持ちでいるんだ。」
「どうしてなの?」
「自分のことなのにはっきりとは分からないんだけれど、研究は欲をいえばもっと先を見てみたかった気がするけれど、何より愛する仲間と、愛する君と、一緒にここまでやってこられたから、そして、俺が自分で選んで愛したものたちと今までも、この瞬間も一緒だから、お前らと顔を合わせるのもこれが最後だ
って分かってても、こんなに穏やかな気持ちなんだと思うんだ。俺はすごく幸せなんだよ。」
「そんなの幸せって言わない!だって、まだ私達と研究をしたいんでしょう?だったら、まだこれが最後だなんておかしいじゃない!私は、、私は、、まだ諦めてないから!本当はそのDSTDを今すぐここで壊したいわ!あなたをそんな世界に行かせたくない。でもあなたが望むならそれはできない。だからあなたが別の世界に行って、抜け出せなくなってしまったのなら、私がそこからあなたを救い出す方法を必ず見つけ出して助けに行く。だから、これが最後だなんて言わないで!」
「わかったよ。ごめんな、神菜、、ごめんな、仲田、キャシーさん。さよならじゃなくて、、、、みんな、俺、待ってるから。」」
俺がそう言うとみんなの瞳には涙が浮かんでいたが、その表情は希望の眼差しに変わっていった様だった。
それから俺は仮眠室へと行き、人類を救うべく、DSTDの8を押して眠りについた。
目を覚ますと、そこは見覚えのある場所だった。そこは明らかに以前DSTDで行ったことのある水星のだった。そして俺のすぐ側には誰かが横たわっていた。見覚えのある背格好に洋服だったので、その人物ではないことを願いながらも恐る恐る近づいて顔を覗き込むと、予想した通りの人物だった。
横たわっていたのはキャシーだった。
俺は、こんな大事な時にどうやら失敗をしてしまったらしく、元の世界に戻ってやり直そうとしたが、戻ることができなかった。
どうしようもなく俺はまずキャシーを起こして事情を話した。
「そうでしたか、、困りましたね、、、。」
「はい、こんな大事な時に限って失敗するなんて、、このままじゃマキシム達が辿った未来、もしくはそれ以上に最悪な未来となってなってしまうかもしれません。一体どうすればいいんでしょうね。」
「そうですね、、、。私にもどうすればこの現状を打破できるかは分かりませんが、とりあえず、ここでこうしていても何も始まりませんし、少し歩きませんか?」
「それもそうですね。」
「どうやらここは水星の様ですし、水星の地上で過ごしたことはほとんどありませんが、こうしてDSTDのお力をお借りして水星の地上を歩けるのはとても新鮮です。でもまずは誰かに話しを聞きたいですね。ですので、まずは地下に続く出入口を探しましょう。地下に行ってしまえば地図がなくても私がご案内できますので。」
「わかりました、キャシーさん宜しくお願いします。」
そうして俺とキャシーさんは歩きながら話しをした。
「しかしなぜ水星で、なぜ私と雄馬さんだったのでしょうか?」
「俺もそう思いました。DSTDは俺が想像した世界や、俺になんだかんだ関連した情報が紐づけされた世界が造られたり、行きたい場所や時間に行けたりするものということは分かっているんですが、DSTDができることは今まで増え続けているので正直、俺自身にもDSTDを使って飛ばされる世界が、なんでその世界だ
ったのかが飛ばされてすぐは分からないことがありました。でも後から振り返ると、その世界に行ったことは無駄ではなかったなぁと思わされてきましたね。」
「そうだったんですね。ではきっとここに来たことも、何かしらの意味があるのかもしれませんね。」
「そうだといいですね。」
そんな話をしながらしばらく歩いていると、マンホールのような入り口が沢山ある場所を俺たちは見つけた。
ちょうど夜明け頃のタイミングで、水星人が一斉にその出入り口から出てきた。それと同時にキャシーはその水星人達に声をかけたが、無視をされてしまった。聞こえなかったのかと、キャシーはもう一度、水星人の一人の腕を掴んで呼び止めようとしたが、その手は、幽霊のようにその水星人の腕をすり抜けてしまった。
俺とキャシーはショックを受けたものの、触れられないし、話すこともできず、どうすることもできない以上、まずは地下に行ってみるしかないと判断した。キャシーさん曰く、地上側からは地下へと繋がる出入口は開くことができないらしい。だからこそ、水星人達が地下側から出入口を開いている間に入って、地下へ行こうという話になったので俺とキャシ
ーさんは急いでその出入り口の穴に入った。
人類を避難させる為に、DSTDを使って異世界に行くはずだった雄馬だったが、それに失敗し、なぜかキャシーと水星に来ていたのだった。失敗したと分かっても元の世界に戻ってやり
直すこともできず、途方に暮れていたが、そうしていても何も始まらないので地下へ行って、まずは星に住む水星人たちに話を聞いてみようとキャシーが提案をし歩いていくと、水星人達と出会った。だが雄馬達は、その水星人に触れることも話すことも存在にすら気付いてもらうことができなかった為、まずは地下へと向かうことを決断したキャシーと雄馬だったが、、、。




