第4話
マキシムと雄馬は一体どんな世界に来てしまったのだろうか?!
そこは、見覚えのある場所で、周りの風景が全てアニメの世界だった。見知らぬ通行人が俺とマキシムの目の前を通りがかり、ぶつかってしまったのだが、どういう訳か、俺達の身体をすり抜けて通行人は歩き去って行った。どうやら、通行人には俺たちの姿は見えていない様子だった。そこは見覚えのある公園の前で、そのすぐ後に、俺がDSTDを手にして一番初めに行った世界で俺が成り代わっていた一樹と、その世界で俺が好きだった女の子、雪が、俺達の姿に気が付かない様子で目の前を通り過ぎ、公園の中へと入って行き、その数分後、二人は抱きしめ合っていた。その光景は、その異世界での過去の自分の姿だった。
「どうして、俺は自分の過去を見ているんでしょう?」
「さあね、それは僕には分からないけれど、きっと、君がこの風景を作り出しているのだろうから、君が感じたことが、その答えになっていくんじゃないだろうか?」
「はい、感じたことっていわれても…。それにしても、あんなに想い合っていて、あんなにきつく抱きしめ合っていたのに、どうして俺は、彼女を忘れて、何事もなかったかのように、元の世界に戻って暮らせたんだろうか。俺って、薄情ですよね。」
「それを薄情というのだろうか?そんなこと、誰だって経験しているじゃないか。自分が前を向いて生きて行く為に、過去にあったことはそこに置いて忘れて生きて行く、それは、ごく自然なことじゃないか。」
「俺もそれが良いか悪いかという意思もなく、ただ前に進んできました。でも今更になって、なぜか分からないけど、悪いって感じてるんです。」
「なぜだ?僕には君のその気持ちが分からない。」
マキシムがそういうと、辺りの情景が、また変わった。
そこは、俺がDSTDを使って行った世界の中で、一番受け入れられなかったあの世界で、DSTDを手にして二番目に行った世界、航がいる世界だった。この世界でも俺たちの姿は向こうには見えていない様子だった。
航が暁にナイフで刺しかかり、次は愛していたはずの由羅に狂った風貌で刺しかかっていた。
俺はまた、その場に膝をついて、その光景をただ見ているだけしかできなかった。
「どうしてまたこの光景を俺は見てるんだ。一体どうすればこうならなくて済んだんだ?俺がこの世界を生み出したことがいけなかったのか、それとも航という人工知能を持ったロボットを発明したことがいけなかったのか、そうじゃなくて、、俺の航との関わり合い方が間違ったからこうなったのか、一体どうすれば、この研究所の誰一人としてかけることなく、誰も命を落とさず殺さず円満でいられたんだ?」
正気を失っていた俺に、マキシムはなだめるように言った。
「もう過ぎてしまったことだ、見たくない過去を無理に見なくてもいいんだよ。」
「人が二人も死んでるんですよ!もう過ぎてしまったことだで片づけられると思いますか?!」
「じゃあ、もう戻れない取り返しのつかない過去を振り返って、一体何になるっていうんだ?!そんな風に膝をついて嘆いているくらいしかできないだろう?」
「そうですよ、俺はただ見ていて逃げることしかできなかった。もうどうすることもできない、取り返しがつかないんです。全部俺が悪かった。」
「それで?」
「それでってなんですか。」
「悪いから、君はどうするんだ?」
「俺が死ねば良かったんだ。」
その言葉を吐いた俺をマキシムは手加減なしに殴り飛ばした。
「痛ってぇなぁ!なにすんだよ!」
「痛いだろう?死ぬってことはこの何百倍も何千倍も痛いってことだぞ。その痛みを受けた仲間達を目の当たりにして助かった君が今更そんなことを言ってなんの弔いになるって言うんだ?何になるっていうんだ?言ってみろ!起こってしまったことはどうにもできないし、失ってしまったものはもう二度と、全く同じ形では戻ってこない。だから、また同じようなことが起こらないように、せめて、その失敗を糧に自分が生きてゆく未来に、そしてできることなら、僕達が関わっていくものたちの助けになれるように繋げていくことでしか弔う方法がないんだよ。僕はそう思ってる。」
俺はマキシムのその言葉を聞いて、しばらくの間その場で泣き叫び崩れていた。
どのくらい泣いていたのか、気が付くとまた真っ白な世界に戻っていて、マキシムの姿が見当たらなかった。
ただ一つ確信したことは、心がとても穏やかなことだった。
そして見る見る間に世界が呑み込まれていくかのように消えてゆき、気が付くと、元の世界に戻っていた。
そしてまたDSTDが鳴りだした。
電話の相手はナンシーだった。
なぜ過去の自分を見ることになったのか、なぜマキシムがその世界に囚われてしまったのか?!
次回、後編 第2章へ続く!




