第1話
神菜と仲田と一緒に暮らしていた部屋を後にしてから、約20年の月日が経っていた、、、。
一約20年後一
神菜と仲田と一緒に住んでいた部屋を出たあの日から、20年の月日が経とうとしている。あれから俺は、実家に帰ったものの、俺が帰ったことによって、その生活費はかかる為、最初は正規の社員ではないものの、パート従業員として研究所で働きながら、母さんと親父の介護を続けていたが、親父は自分の足で歩くことはできないまま、認知症が発症し、俺が実家に帰ってから5年で介護サービスの申請をし、訪問介護のサービスやデイサービスなどを利用しながら3年程で介護施設に入居することとなった。その2年後に父は他界した。母さんは75歳まで何の仕事でもやり、パート従業員として仕事を選ぶことなく、ずっと仕事を続けた。しかし数ヶ月前に脳梗塞で倒れ、身体の自由がほとんどきかなくなってしまい、今年80歳を迎えようとしている母も、父と同じように、認知症が発症し、介護施設に入居を始めたものの、徐々に認知症は進行してしまい、そんな状況に、どこかやり場
のない寂しさを覚えていた。
しかし、父が亡くなってから今に至るまでの10年の間のほんの数年で、俺の家庭状況だけではなく、この世界ごと、全ての状況が一変していた。
仲田と神菜は俺が部屋を出てから3年後、二人で宇宙科学研究所を設立した。その際に、神菜は俺に、声をかけてきたが、俺はまだその時、中途半端な状態でその研究に携わることをしたくなかった為に断った。あの部屋を出てから10年間は、仲田とは会っていなかったが、神菜とは時々会っていた。時々会う度に神菜から聞かされていたのは、設立してからみるみる間に、研究所の技術レベルは世界中の宇宙科学研究所の中でも名を上げる程に成長していき、設立七年目でその技術レベルは世界一となった。
そしてその年に、俺の親父が他界した。その偶然が、何による皮肉なのか、永遠に分かる日が来ることはないだろう。俺はその年から、勤めていた研究所を辞め、約10年ぶりに神菜と仲田と一緒に暮らすこととなった。仲田は久しぶりに再会するなり、俺に一言『おせぇよ。何やってたんすか。』と言いながらも号泣して抱き付いてきて、鳴き声交じりに『待ってたんですよ、遅いですよ、、!!』
と、一見とてもむさ苦しくもあったが、温かく迎えてくれた。
それからまた3人で新たな出発を迎えたのだったが、その数ヶ月後、世界政府から重要な任務を任されたのだった。
それは、五年以内に全人類を乗せられる規模の一時避難用の宇宙船の製造をすることだった。もちろん、その為の場所と人材も派遣するとのことだったが、それを製造する理由を聞くことは出来ないということと、その派遣される人数と五年という時間はかなり少なく、その規模の宇宙船を完成させるには時間が足りなさ過ぎた。しかし、宇宙の知識が全くない一般の人を乗せることができ、離陸と着陸は勿論、飛行中に振動をほとんど人体に感じさせない、1000人程度を乗せることが可能な、テレビなどでよく見かけたことのある宇宙船に似た円盤型宇宙船を世界で初めて発明し、製造したのが神菜と仲田の研究所であり、今年、その発明により、世界一の技術レベルと認定された為、政府はそれを成す研究所を今まで待っており、ようやく現れたといったところだったのだろうか。しかし政府はなぜ、そんな任務を俺達に任せたのか考えてみたが、その時、俺達の頭の中に浮かんだのは単純にただ一つ、地球に何らかの危機が迫っているということだけだった。その時に俺は残酷にも、もし俺が、10年前にあの部屋を出ずに、あのまま真っ直ぐに研究だけに没頭していたのなら、何か状況が変わっていただろうか、、、。しかし、愚かな考え方をしてしまったことに後悔をし、すぐに気持ちを切り替えて、その日から、神菜と仲田、研究所にいる研究員を全員
集めて、さっそく発明に取り掛かった。
それからというもの俺達は五年間、来る日も来る日も宇宙船の製造に没頭した。しかし予測通り、全人類を乗せる大きさの宇宙船を完成させることはできず、残り時間が僅かとなり、人類の一部だけを乗せる規模の宇宙船しか、製造することができなかった。そして、政府との約束の日までちょうど一ヶ月を切った時に、俺達3人は政府のお偉いさんから、なぜ、この宇宙船を製造することになったのかを聞かされることとなった。その理由は俺が想像していたこととは全く違っており、話の初めから、まるで本や映画の中の話をデタラメに聞かされているかの様だった。そして政府のお偉いさんは話しを始めた。
『我々は、地球の外で生活をしている人物達との交流があり、そしてその交流は、全人類のパニックを防ぐ為に、極秘に今日まで行われてきた。地球の外で暮らす人物達、つまり我々にとっては、宇宙人になる。彼らは、色々な星を宇宙船で行き来する技術を持っていてその技術や、彼らの持ち得るあらゆる技術を我々にも、提供する代わりに、宇宙人の彼らが地球で人類と共に暮らすことを承諾して欲しいとのことだった。今、交渉している彼らは、様々な星の中でも、とても地球という星を気に入っており、そうなること強く願っている。
ただ、、それを世に報せて、受け入れてくれと話した時に我々が決めたことだからといって、素直に世の中は受け止めるだろうか?そこでだ、簡単には受け入れられない、恐怖や不安だと感じる人々の為に、一時避難用に製造して貰ったのが君達に製造して貰った宇宙船だ。もう既に、地球以外の星で、人が住める様にしてある星もあるのだが、、暮らし方や環境はかなり変わるがその星に移住するか、地球に残り、彼らと共に暮らすか、しばらく、君たちが開発した宇宙船で、今後どうするかを考えて貰う場所にしようかと考えたの末の頼みだったわけだ。』
俺はその話しを聞き終えると、ただ黙って聞いているだけではいられなくなった。
『じゃあ、宇宙船に乗れない人達や、乗れたとしても、今後どうしようか、どちらも選べない人達はどうなるんですか?!』
『それは、そうなってみないと我々にだって分からない。それに、選べない人達はともかく、宇宙船に乗れない人々がいるのは、我々の責任ではなく、仕事が間に合わなかった君達の責任だろう?』
俺はその一言で、何も言い返せなくなった。
そしてその次の日、世の中にその話が公表され、世の中は大混乱となったが、その約一ヶ月後に予定通り、宇宙船は俺達と一部の人類を乗せて飛び立つこととなった。
それから数ヶ月が経ったが、俺は、宇宙船のシステム管理をしながら、世の中がこんな混乱している
というのに宇宙船の中で何事もなかったかのように暮らしている。宇宙船には、色々な施設を配備していて、まるで地球で暮らしていた時と変わらないくらいの再現を施した。コンビニ、薬局、スーパーマーケット、家電製品売り場、服屋、病院、保育所に介護施設、とにかく、この宇宙船にはなんでもあった。そして、この宇宙船は二ヶ月に一度地球に降り立ち、動力になるエネルギーを補給していた。その際に、地球に還る人もいたが、地球から出たがる人も沢山いた。そして宇宙船に乗れなかった人達は、地球に残った人達と共に、反乱を起こすなど、世の中の混乱が収まることはなかった。
そんな中、俺は時々、宇宙船の中の介護施設に入居している母さんに会いに行くことがいつしか日課となっていた。
『おはよう、母さん。』
『おはよう雄馬。今日仕事は休みなの?』
『うん、休みでちょっと母さんの顔見に来たんだ。』
『ありがとう。いつもごめんね、母さんの為に。雄馬の時間を私や死んだ父さんが奪ってしまったね。本当にごめんね。』
『また昔の話?そんなのいいよ、俺が決めたことなんだから、もう気にしないでくれ。』
『でも、、。』
『いいんだ。それより調子はどうだい?』
『大丈夫よ、母さんのことは心配しないで、雄馬は仕事に集中してね。』
『ありがとう。』
『それで雄馬、今日は仕事は休みなの?』
『ああ、休みで少し母さんの顔を見に来たんだ。』
『ありがとう。いつもごめんね、母さんの為に。』
俺が神菜と仲田の2人と住んでいたあの部屋を出たあの日から、20年が経っていた。
ある日の昼下がりに、昼食を終え一休みしていたところに神菜が話やってきて、俺に奇妙な質問をしてきた
。
『ねぇ雄馬さん、もし、過去の自分と話せたり、会うことができるとしたらどうする?』
『どうって、、、そんなこと、今の俺たちの技術じゃ不可能なことだし、もし、なんてないだろ。なんで急にそんなこと聞くんだ?』
『実はね、それが可能なのよ。』
『どういうことだ?』
『私ね、ずっと思ってたことがあって、雄馬さんは私達と一緒に研究が出来なかった10年間を後悔してるんじゃないかって。それに、、、』
『それに?なに?』
『これは、雄馬さんだけのせいではないけれど、宇宙船の大きさが足りなかったせいで、今、地球では反乱が起こってる。もちろん宇宙船が小さいかったせいだけでもないとは思うわ。けれど、もっと何かできれば、救えた人達がいたんじゃないかって思うと、悔しくて悔しくて仕様がないの。それで、ずっと私だけで研究していたのだけれど、時空や空間を超える技術を地球に来ていた、宇宙人である彼らに教えて貰ったの。タイムマシーンはもちろんのこと、その他に、ある装置を作ることができたの。これよ。』
そう言って神菜が俺に見せたものは、DSTDとそっくりな物だった。
『こ、これ、、、神菜が発明したのか?』
『そうよ。この装置の機能は、一人だけインプットし、決めた人物にのみ使用することが可能で、これにインプットされた人物が想像する世界や行きたいと思った時間に行くことが可能になる装置よ。この装置を過去の雄馬さんに届けて上手く使って貰えば、もっと後悔しない様に過ごすことができたんじゃないかなと思って作ったの。ただ時空の歪みの原因となることには気を付けなくちゃいけないみたいで、時空を超えて過去のあなたと通話や直接会って接触するのは可能だし、良いのだけれど、過去の自分に、自分が自分だと、正体を悟られた場合、今ここにいるあなたは消滅してしまうのよ。だから、それだけは、気を付けなければならないけれど、、どうかしら?やってみる価値はあると思わない?もしあなたがやらないって言うなら、私がやるわ。』
『ああ、もちろん、そんな話を聞いたら、何も知らなかった俺なら、DSTDを知らなかった俺なら、そうするって答えたと思うよ。』
『雄馬さん?何を言ってるの?知らなかった俺ならって、、どういうこと?この装置の事、何か知っているの?』
『ああ、よく知ってるよ。』
『なんで雄馬さんがこの装置の事知ってるの?』
『それは、、、』
そう言いかけた時、俺がマキシムから受け取ったDSTDが鳴り響いた。神菜との話しを一旦中断し、俺はその電話を取った。
『もしもし。』
『もしもし、雄馬くんだね。お久しぶり。』
『お久しぶりです。』
『もう気が付いていると思うが、僕の正体は、未来の君だ。』
『なんで言うんだよ。言ったら消えちゃうんだろう?あんた。』
『言うとか言わないとかそういう問題じゃないんだよ。そのくらい君なら察しているだろう?』
『けど、、なんで、こんな形でこんな急に、、思いつくのも実行するのも、あんたはいっつも急だよな。』
『ああ、それが僕であって君だ。それに運命とはそういうものだよ。いつも待ってくれるとは限らないし、待ってはくれないものの方が圧倒的に多いだろう?』
『そうだよ、、そうだけど、別れの時くらい、もう少しゆっくり時間をくれよ。』
俺は憎たらしいとすら思っていた見知らぬおっさんにいつしか愛着が湧いていたのか、未来の自分だということが分かっても、消滅してしまうという事実には、涙が溢れ出て止まらなかった。
『ああ、すまん。だけど、時間がない。最後に君に伝えなければならないことが三つ程ある。一つ目は、DSTDを発明したのは神菜だったが、それを使うことによって寿命が縮むということを君に届けてしばらく経ってから知ったということだ。だから君にそれを伝えるのが遅くなってしまったという訳だが、それをどうか責めないでやって欲しいんだ。』
『ああ、分かったよ、もちろんだよ。』
『それから実は、今君は、DSTDを使って来た世界に、まだいるんだよ。あの時、俺は君を元の世界に返還していなかったんだよ。』
『あの時って?、、、い、、つ、、だよ?』
『君の大学受験の数日前だよ。』
『え?!!!!!!』
『驚くのも無理はないと思うけど、今は時間がないから、よく聞いてくれ。今から君を本当に元の世界に戻す。その記憶を持ったまま、このやり直しが出来るのはこれで本当に最後だ。もう一度言うが、決断をする時は、未来の君が少しでも微笑んでいられる姿をイメージできる方を選ぶのではなく、未来の君が少しでも微笑んでいられる姿をイメージできる方法を徹底的に手抜きせずに考え行動するんだ。いいな?』
『分かった。』
『それから、、俺はいなくなるが、DSTDは消滅することなく残るだろう。今後も必要な時に使ってくれ。では、君を元の世界に返還する。あとは頼んだぞ、雄馬。』
『ああ。』
俺がしっかりと返事をすると、電話は切られ、俺は元の世界に返還されたのだった。
次々と衝撃的な事実を知らされた雄馬だったが、未来の自分からのメッセージをしっかりと受け止め
、元の世界に戻ったが、、、。




