第6話
マキシムとの電話を切り終えたその直後、背後に人の気配を感じた雄馬。一体誰に電話を聞かれてしまったのか?!
DSTDの電話を切った後、部屋には俺一人だけしかいないと思いリビングで通話をしていたが、背後に人の気配を感じ振り返るとそこには仲田がいた。
『今、誰と話してたんすか?』
『あ、ああ、友達と話してたんだよ。』
『そうですか、それにしても何の話してたんすか?時間が手に入るとか、寿命奪われただとか。』
『ああその話ね、最近はまってるゲームの話してたんだ。』
『そうでしたか、、。』
『ああ、そうそう。』
『って俺が、そんな嘘信じると思いました?最初から全部聞いてたけど矢中さんそんな感じじゃなかったですよ、何があったんすか?本当のこと話してください。』
『、、、ああ、分かった。全部話すよ。』
俺は、DSTDという装置の存在、その機能とマキシム達の存在、そしてたった今、マキシムと話していたことの内容を仲田に話した。
『今までなんでそのこと、隠してたんすか?』
『隠してない。特に言う必要がないと思って。』
『雄馬さんがそういう装置を持っていることも、その装置に関わる人達が存在して関わっていることに対しては、どうとも思いません。だけど、それを使うことによって寿命が縮むことに対しては、黙ってられない。大体、、このこと、、この話の一部でも、有村さんには話したんですか?』
『神菜にも何も話してない。』
『百歩譲って俺に話さないのは分かりますけど、なんで有村さんにも何一つ話してないんですか?もちろん話しますよね?』
『いや、話すつもりはない。神菜には黙っておいてくれないか?』
『わかりました。じゃあ、そのDSTDって装置、もう二度と使わないって、ここで、俺と約束してください。』
『悪いが約束できない。、、、なぁ仲田、お前が俺と同じ様に、このDSTDを手にして、科学や自分が触れたいもの知りたいものの為の時間を好きなように費やせるとしたら、寿命が縮むことを惜しんだか?さっきも話したが、俺も、DSTDを使うことによって寿命が縮むことをさっき聞いたんだ。対価もなく、無条件にその世界で楽しんだり、学んだりができていると思えていたから、それに対して寿命という対価を支払っているってことを後から知って、一瞬、損した気持ちになった。けど、普通に生きていたって時間は過ぎ、寿命は縮んでいく。何もしなければ惰性かのように時間は過ぎ、何のために生きているのかと自分に問うようになる。だったら俺は何かの為に、夢中になれる科学の為に、この人生を生きたいって思った。そう考えたら、この装置は、今の俺には好都合なものなんだ。仲田、お前にもその気持ちはわかるだろ?』
『でも、それだったら尚更、有村さんには話すべきじゃないんですか?』
『神菜に話したら、あいつはどうすると思う?』
『それは、、、。』
『頼む、、、仲田、神菜には黙っててくれ。』
『わかりましたよ!けど、俺、完全に納得したわけではないですからね!』
『ああ、分かってる、ありがとうな。』
仲田と話しながら自分の正直な気持ちに気が付いた俺は、その日の夜、またDSTDを使い、異世界にいく決心をした。だが、異世界に行く前に神菜の顔が急に見たくなってしまい、俺は、神菜の顔を見てから、異世界に行くことにした。その日、バイトが休みだった俺は、バイトに行っている神菜が帰って来るのを勉強しながら待っていた。
そして数時間後、玄関の扉が開く音がした。そして、リビングの方で仲田と神菜がささやかな会話を楽しんでいるような声が聞こえてきた。俺は、二人がそれぞれの部屋に戻るのを勉強しながら待ち、数時間後、神菜の部屋の扉をノックした。すると、神菜が部屋の扉を開けた。
『ゆ、雄馬さん、こんな遅くにどうしたの?』
『ああ、ちょっと話したいことがあって。部屋に入ってもいいか?』
『うん、良いけど、、少し散らかってるから、ちょっと待っててね!』
神菜はそう言うと、部屋の扉を閉めたが、2~3分くらいして、すぐに俺を部屋に入れてくれた。部屋の中を見渡すと、腰を掛ける場所を自然と目で探してしまったが、ディスク用の一人掛けチェアーかベッドくらいしか見当たらなくておどおどしていると、神菜が先にベッドの上に腰をかけた。
『座る所、ベッドくらいしかなくて、、ソファーとかあれば良いんだけど、、ごめんね!良ければ、どうぞ座って!』
俺は神菜にそう言われ、そっと神菜の隣に腰を下した。
『それで、、話ってなにかな?』
『あ、うん、あのさ、、、俺!何が何でも大学の受験成功させて、卒業して必ず科学者になるから、絶対、一緒に大科学者になろうな!』
『うん、待ってるね。でも、、急にどうしたの?』
『うん、ちょっと神菜の顔見て、ちゃんと約束したくなってさ。』
『何かあったの?』
『何もないよ。ただ、、』
『ただ、、?』
俺は、一瞬ためらったものの、衝動を抑えきれず、気が付けば神菜を抱きしめていた。そのまま無言の時間が数分続いたが、しばらくして神菜が口を開いた。
『雄馬さん、く、、苦しいよ、、。』
『ご、ごめん!』
俺は溜まらない想いのあまり、力に加減が出来ずに神菜をきつく抱きしめ過ぎていた。その後、まともに神菜の顔も見れないまま、神菜の部屋を飛び出してしまった。そして自分の部屋に戻った俺は、その動揺した気持ちのまま、むしろ、その動揺を隠すかの様に、DSTDの5のスイッチを押して眠りについたのだった。
自分の寿命がかかっていると知っても、DSTDをまだ使い続けることを決意した雄馬だったが、その決意の裏で、ささやかに不安に思う気持ちが、不思議と神菜への強い気持ちを込み上げさせてしまったが、、、。




