第5話
三人の生活もようやく軌道にのってきたある日、ささいな争いごとや、どうしようもない壁にぶつかっていく雄馬。そして更なる衝撃な事実をマキシムから聞かされるのであった。
俺自身もバイトをしながら大学受験の勉強を毎日して過ごし、数ヶ月が経とうとしていたある日、ささいなことではあるが言い争うことがあった。
3人で暮らしている為、掃除、家事、炊事当番をローテーションして分担していたのだが、俺が、食事をした後にだらだらと食器を片づけずに先延ばしにしていると神菜がそれを片づけようとしてくれたものの、それを見た仲田は怒ったのだった。
『矢中さん、俺達はルームシェアごっこしている訳でも、お友達ごっこしている訳でもじゃないんですよね?だったら、分担してそれぞれがやると決めたことをちゃんとこなしていくことも、俺たちがやっていくべきことなんじゃないんですか?それから、有村さんも有村さんだよ。』
『ああ、悪かった。そうだよな、気をつけるよ。』
『ごめんなさい、私も気を付けます。』
俺と神菜がそう言うと、仲田は不機嫌そうにリビングから自分の部屋へと戻ってしまった。
『ごめんなさい、、私のせいで、、。』
『いや、神菜が謝ることじゃないよ。そもそも俺が早くやらずにだらだらしていたから、片づけてくれようとしたんだよな?すまん、もっとしっかりするから。』
『だって雄馬さん、最近あまり寝ていないですよね?私知っているんです、雄馬さんがほとんど寝ずに、毎日毎日仕事が終わってから食事や身支度の時間以外のほとんどの時間を勉強に費やしていること。』
『そんなの仲田と神菜だって一緒だろ?』
『一緒じゃないです!それ以上に雄馬さんが寝ずにもっと努力していること知ってるんです!』
『そんなことないから、何も心配しないで。これは俺が好きで選んだ道だし、好きでやっていることだから君が心配することは何一つないよ。』
『それでも、、心配なんです!』
『心配してくれてありがとう、その気持ちだけで俺は十分だよ。』
俺がそういうと神菜は今にも泣きそうないたいけな瞳でこちらを見ていた。
、
しかしそうは言ったものの、内心、俺は焦っていた。なにせ大学受験まで半年を切っており、勉強の内容が全然頭に入っていかずにいた。
それから来る日も来る日も仕事の合間を縫っては勉強をし続けたが、勉強が追いつかないまま、とうとう大学受験一ヶ月前となってしまった。
そんな頃にまたDSTDが鳴り響いた。
『やあ!勉強は順調かい?』
『ああ、どうもこんにちは、、ぜんっぜん順調じゃない。正直言って間に合うとは思えない。』
『そうか、、、それは気の毒に、、、。』
『このまま受験して、満足できる結果を出せるとは、、、到底思えない。』
『そうか、、ではまた、DSTDを使うと良い。』
『そっか、そうだよな!だとすれば、俺が今一番欲しい、時間が、手に入れられるかもしれないな!
』
『ああ、そうだな。しかし、君に話す時期をみて、なかなか言えなかったことがあるんだが、実は、異世界に行くごとに、君の寿命が通常よりも多く消耗されているんだ。』
『え?は?どういうことだよ?』
『異空間で君が過ごした時間を計算して削られている、というよりも、君にとってその世界で得たものが本能的に欲していたものかどうかで、君の寿命の削られる時間の度合いが決まってくる。』
『なんでそんな重要なこと、今まで黙ってたんだよ。』
『それは、、いいか、よく聞け。人はいつか死ぬ。俺は君の様には生きられなかった。今こんなおっさんになってやっと、今の研究をしたり、宇宙を旅して回っている。いや、正しくは逃げ回っているか、、。』
『逃げてるって何からだよ?』
『それは、今は話せない。』
『なんだよそれ、人の寿命奪っといて、その理由も話せないって、どう理解すれっていうんだよ!』
『いずれわかる。それで、矢中雄馬くん。それを聞いた今、どうしたいと思っている?』
『それは、俺は、、。』
『それで行きついた答えが、君の本当の答えだよ。では納得いくまでよく考えると良い。ではな。』
そういうとマキシムは電話を切った。
俺は、自分の寿命が削られていたと聞かされて、腹が立っていたはずなのに、マキシムの、『どうしたいと思っている?』という問いに不思議と心が調和されていた。
異世界に行くことにより、寿命が普通よりも早く削られていたことを知った雄馬。だが、恐怖や怒りよりも感じた何かが、雄馬の心には芽生えていた。




