第18話
なり響いたDSTDの電話を放心状態でとった雄馬だったが、、、!
『やぁ、元気かい?』
電話に出るなり、調子良さげに行ったのは、またしても、マキシムだった。
『そんなこと、聞かなくても、あんたなら全部分かってるだろう?』
『まあね、それで、、、大丈夫かい?』
『、、、な、なんか、あんたに同情みたいなことされると、上手く言い表せないけれど、、こう、、き、、気持ちが悪いな、、、。』
『そうか、、、では、、僕に毒を吐けるくらい、君は元気そうに思えるので、本題に入るとしようか
。』
『ちょっと待ってくれ、こんな時に何の話だ?俺にそんな話を聞く余裕、今は、、。』
『今はなんだ?じゃあ君は死ぬまで、ずっとそうやって、腑抜けた顔をして、何もせずに一生を終えるつもりか?』
『そ、そうとは言ってない。ただこんな時くらい、、そっとしておいてくれないか、、?』
『じゃあ、本当にそっとしておいて欲しいなら、なぜ君はこの電話に出たんだ?』
『それは、、、。』
『まぁ、答えられないだろうな。じゃあ、はっきり答えられないなら、別の質問に答えてもらおうか?』
『な、、なんだよ、、。』
『君はこの世界で大切な人を失った今、何を思う?』
『俺は、、この世界に来て、アヤメという一人の女性と共に過ごした時間をただ、苦痛だった、とは思いたくなかった。それは、確かに、認知症という病になってしまった彼女と暮らした時間はお世辞にも、楽しかっただけとは言えない。むしろ苦痛の方が多かったと思う。それに、介護は、俺一人だけじゃなくて、もっと周りと関わりあって、助けを借りてしていくことも、俺一人で抱えこまなくても、いくつか方法はあったかもしれない思う。けれど、彼女と過ごした時間はこれまでも、介護期間中も、苦痛が全てじゃなかったし、沢山、綺麗な想い出もあった。だから、最後、アヤメを見送る時に、アヤメとの過ごした時間を、今こうして終わった今、、俺は、こう思うんだ。
その苦痛とも思える介護生活の数年、数ヶ月のことで、愛しい女性と過ごした何十年という時間の全てが、ただ苦痛だった、で、片づけるなんてあまりにも寂し過ぎるって、俺は、今、そう思えることが、彼女を俺が愛している証だって、そう思うんだ。そう思うのはおかしいだろうか?』
『君がそう思うなら、それが、君の常識だろう。だから、恥じることも疑うこともしなくていいんじゃないか?それから、僕は、、』
『僕は、、なんだ?』
『いや、なんでもない。よし!じゃあ、本題に入ろうか。君は何をしに、この世界に来たと思う?』
『何をしに?、、俺は、、この世界に、、そ、そうだ、この世界に来る前に、俺は、、そうだ、とても平凡な暮らしをしていたんだ。けれど、それが、神菜という一人の女性に出会って、なぜか、その平凡な日々が、無性に不満に思えたんだ。俺は、何の苦労をしなくても、住む家が与えられ、食べることができて、時間も沢山あった。なのに、いつも、モヤモヤとしたものが心のどこかにあって、でも何もしたくなくて、なにもしないで、何も出来ないと思うことが、当たり前だと思っていたんだ。何もしないで適当に生きていたって、このままずっと生きていけるし、周りだって、みんなそうだしって、思ってたんだ。そんな時、神菜と出会い、神菜が大変な環境で育ったのにも関わらず、この先はただ楽をして生きていこうとしているのではなく、それどころか、夢を持って生きていこうとする姿を見て、俺は、、、俺は、きっと彼女に嫉妬したんだ。何にもない、、いや、、何もしようとしない俺は、何かやろうとしている彼女を妬んだんだ。それで、、気がついたら俺は、DSTDでこの世界に来てたんだ。』
『それで、なんで君はこの世界に来たんだと思う?』
『なんでって、、そんなの、、。』
『そんなの、、なんだ?』
『彼女みたいに苦労をすれば、俺も自分の中に何かを見出せると思ったんだ。そして、この世界で色々な苦労をしたが、それで、、俺は、今振り返ってみて、もう一つ、愚かな自分がいたことに気が付いたんだ。神菜はどこかで、楽をしているから、そんな風に未来を思えるんだって、俺は思っていたんだ。
でも、その逆だった。
俺はこの世界で、一人の女性と恋に落ち、その女性との生活を守る為に闘ってきた。そして気が付いたんだ。何かを守っていくという決意をした人間に、ただ楽をしたいだけなんて考えはないって。俺はただ単に、自分だけの狭い視野で、周りがそうだから、世の中の大半がそうだから、諦めて適当に生きて行くことが妥当だと思い、愚かなことに、その考えを、神菜にすら押し付けようとしていた。そういう自分が、自分の中にいることから、ずっと目を背けて、見て見ぬふりをしていたんだ。』
『それで、君はそれに気が付いて、どうしたいと思った?』
『俺のモヤモヤの原因は、自分より上にいる神菜のせいでもなく、自分の周りにいる人や世の中のせいでもなく、自分が、、、俺自信が自分で変わろうとしないから、俺自身がやりたいことはなにもないと自分で決めつけて、何もしなかったからって分かったんだ。だけど、俺は一体何をすれば良い?元の世界に戻って、アルバイトして、ロボットみたいに、毎日同じように変わらない日々を送らない為に、俺は一体何をすればいいんだろう?おっさん、教えてくれよ!』
『きっとそれが、君がこの世界に来た理由だと、僕は思うよ。何をすればいいかなんて、君自信が一番知っているだろう?』
『俺自身が?』
『ああ。しかし、真面目な話をしている時に、大変申し訳ないが、そろそろタイムリミットだ。』
『なんの話だよ、タイムリミットって。』
『前に話したと思うが、君が異世界に来ている時でも、君が死んでしまったら、全ての世界で、君が終わる、、、つまり死んでしまうといった話をしたと思うが、そろそろ、この世界での、その時が来ようとしている。なので、早急に返還するが、いいね?』
『まだ、ここにいたい気はするが、そうも言っていられないな、、、。』
『今回は素直に応じてくれて良かったよ。それと、さっき言いそびれたけれど、やっぱり、僕は、君の常識がそうであって嬉しいよ。』
『俺の常識?何の話だ?』
『まあ、、いつか君が、今僕が言ったことを思い出してくれれば、それでいいさ。では返還する。』
『思い出すってなんだ?ちょっと待ってくれよ!』
そう言ったものの、周りの情景が歪み始め、世界は吸い込まれるように消えてゆき、俺は、てっきり、そのまま元の世界に返還されるのとばかり思い込んでいた。
元の世界に返還されると思っていた雄馬だったが?!
第四章へ続く~




