第6話
なぞの美人の女に指名された雄馬、少し心を浮つかせながら席についた雄馬だったが、、、
『失礼しまーす。』
そう言って、彼女の向かいに座ると、俺は自己紹介をした。
『初めまして、雄馬です!』
そういうと彼女は、一瞬シカトするように見せたが、俺は数秒間、その沈黙に堪えてただ、彼女をじ
っと見ていると、その数秒後、彼女は口を開いた。
『ねぇ、あんたさー、なんでここで働いてんの?』
『なんでって、、それは、、、』
俺は言葉が思い浮かばず、どうにかホストらしい言葉を絞り出した。
『君に出会う為かな!』
そう言った俺に、彼女は仏頂面と鋭い口調で言い放った。
『あのさぁ、嘘って顔に書いてあるよ。どうやったら、そんな嘘みえみえな言葉が出てくるわけ?』
俺は一瞬、どう言葉を返していいか思い浮かばず、なんだこの女は、、やりずらいな、偉そうにしや
がって、可愛げもない、、などと思いながら固まっていると、彼女はその数秒後、パッと表情を変え
て、華やかな微笑みを浮かべて言った。
『ごめんごめん、まさかそんなに返答に困るなんて思わなかったからさ!私の名前はアヤメ、ここの
近くでホステスやってるんだー。雄馬だっけ?あんた面白いね!で、もう一回聞くけど、なんでホス
トになろうと思ったの?』
俺は、女の偉そうな態度に嫌悪感を抱きながらも、半ば、華やかで綺麗な表情と顔立ちに惹かれてい
たそんな感情の中、答えた。
『なんでって、沢山の女の子にもてそうだし、金良いし、前からやってみたかったんだ、ホスト。』
『また嘘ね。だってあんた、明らかにホストって感じしないし、店の雰囲気から浮いてるよ。』
『さっきから、俺の言うこと言うことに嘘だって言うけど、なんでそんなこと分かるんだよ?君は、
超能力でもあるのか?それに、浮いてるように見えたとしたら、まだ入店したてだからじゃないか
な?すぐに馴染むさ!』
『図星じゃないなら、なんでそんなに取り乱してるの?そんなに早くこの業界に馴染みたいっていう
なら、私がテストしてあげる。今、私が考えてること当てたら、あんたをホストとして認めてあげ
る。』
俺は重ね重ね、女の態度に腹が立っていたが、この世界に来てからの俺には、人に触れれば相手の考
えていることが分かるという特殊能力があることを思い出し、優位な立場になった気持ちでいた。
『ああ、いいよ。ただちょっとお願いがあるんだけど。』
『なに?』
『数秒間、君の手を貸していて欲しい。』
『は?どういうこと?』
『どういうって、そういう意味だよ。』
『は?なに言ってんの?』
『変な意味じゃなくて、、その、、、信じて貰えないかもしれないけど、俺には、人に触れるとその
人の気持ちが分かる不思議な力があるんだ。』
『そんなこと言って、ただ私の手に触りたいだけじゃないの?』
『いや、だから、別に、そういう訳じゃ、、やっぱ信じて貰えるわけないよね、、。』
『いいよ!別に減るもんじゃないし、手触るくらい。その代り、外したら、思いっきり、ビンタする
から。』
『ああ、分かったよ。』
俺は彼女の片方の手を握った。すると、彼女の考えが頭の中に流れ込んできた。
(何よこいつ、会って早々、客である私に馴れ馴れしい上に、触れるだけで考えてることが分かると
か、胡散くさ過ぎるんだけど、、、こいつと話してると安心する。てか、長いんだけど、早く手、放
してくれないかな?手くらい、なんてことはないんだけど、なんだろう、、心臓が、、、!)
と彼女の考えが流れ込んできた瞬間に、彼女は俺の手を振り払い、俺にビンタをした。明らかに、と
ても動揺した様子だった。
俺は、手を振り払われビンタまでされた理由が分からずキョトンとしたまま、彼女に言った。
『どうしたの?なんで手、、、それにまだ何も言ってないのに、、』
そう言いかけた瞬間に、俺の言葉を掻き消すかの様に彼女は言葉を吐き散らした。
『で?分かった?私の考えてること。』
『なんとなく分かったけど、君が途中で手を放すから、途切れてしまって、よく分からなかったん
だ。』
『なによそれ?やっぱり嘘だったんだ、もういいわ、帰る。』
そう言うと彼女は飲食代を支払い、早々と帰ってしまった。
謎の美人の女は、アヤメという近くで働くホステスだった。
雄馬は心を読む特殊能力を持ちながら、何もできず、アヤメが帰った後もしばらくの間、きょとんとしていた。その数日後、、、




