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hmsstpy  作者: ゆりえ
前編 第3章 終わらない真実
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第4話

目を覚ました雄馬が来た世界は一体?!

『もう朝か、、、。』


朝の静寂と、小鳥のさえずりと共に俺は目を覚ました。

寝起きの目を擦りながら、布団から上体を起こすと、そこは明らかに俺の部屋ではなかった。ベッドから立ち上がった俺は、部屋を見渡していると、いつもと見える景色が違うことに気が付き、部屋にあった鏡で自分の顔を見ると、その姿は俺の子供の頃の姿だった。小学4、5年生くらいの姿だろうか。

鏡を見て、唖然としていると、別の部屋から誰かの声が聞こえたので行ってみると、そこには、おふくろがいた。しかし、おふくろの様子がどこか、いつもと違っていた。

それに朝だというのに、親父の姿が見当たらなかった。


『おはよう。父さんは?』


そう聞くと、おふくろが口を開いた。


『父さん?昨日の夜から、何回も電話してるんだけど繋がらないし、引出しに入れておいた生活費が全部無くなってるんだ。雄馬、、母さんどうすればいいかな?』


『どうって、、、。』


おふくろは目の下に酷い隈をつくり、世界が終わるかのような表情で、子供の姿をした俺にそう言ったのだった。

俺が今、異世界に来ていることは把握はしたが、なぜこの状況の世界に来たのか、この一瞬にして、気持ちが引きずり落とされるような状況の中、考えていた。すると俺は、昨夜、眠る前に考えていた事を思い出した。

(俺も、有村さんと同じ環境で育って、同じ状況になれば、有村さんのように強く生きて、夢をしっかりと追いかけられる人間になれたのかな。)

そんなことを考えていたからこんな世界に来たんだということを察し始め、早くも後悔をし始めていたその時、追い打ちを掛ける様な出来事が起こった。

玄関のチャイムが鳴った次の瞬間、おふくろは、とっさにこう言った。


『雄馬、出て、母さんは?って言われたら、いないって言って。』


俺はなんのことやら分からないまま、玄関で来客を出迎えると、その来客はこう言った。


『集金に伺いました。あ、僕、、お父さんとお母さんはいるかな?』


そう聞かれたが、俺は反射的に答えた。


『あ、今、いないです。』


『そっか、じゃあ、僕が来たって、この紙をお父さんかお母さんに渡して、伝えておいてくれるかな?』


『はい、わかりました、すいません。』


そう言って紙を受け取る際に、来客の手に微かに触れた瞬間、来客の考えていることが俺の頭の中に流れ込んできた。


(また居留守使ってるよ、ここの家の人。子供に嘘つかせてまで居留守つかうなんて最低だな。まぁこのままいったら、子供には気の毒だけど、利用を強制的に停止させて貰うしかないな。)

そしてその来客は、家の中を覗き込むような素振りを見せて、玄関の扉を閉め去った。

雄馬は突然の出来事に驚きを隠せずに、その場に膝を落とした。触れた相手の考えていることが頭の中に流れてきたことに腰を抜かしてしまった。

それと同時に、これも昨夜、自分自身が望んでしまったことだということを思い出した。

(人の気持ちや考えていることがわかる能力でも欲しい。)

そう望んだのは紛れもなく自分自身だった。

正気を取り戻した俺は、来客に渡された紙を見ると、支払いが未払いであることが書いてある紙だった。母親の所に、その紙を持ち、戻って手渡すと、おふくろはそれを見て泣き崩れた。


『雄馬、、一緒に死のうか。』


『そんな事言わないでくれよ。金なら俺が働いてどうにかするから。』


俺は、自分が子供の姿であることを忘れてそう言ってしまった。しかし、おふくろは黙ったままで、その背中をさすろうと手を置いた瞬間、おふくろの考えが、俺の頭の中に流れ込んできた。

(この子を殺して私も死ねば全てが終わる。借金のことで悩むことも、この子を産んだことでこんなに辛い思いをしているなんてことも思わなくてよくなる。私が私を制御できなくなるなんてことも考えなくてよくなる。)


俺はおふくろがそう思っていることを受け入れることも、拒絶することも出来なかったが、反射的に俺の口からは言葉が出ていた。


『母さん、俺は生きたい。』


『生きてたって何にも良いことなんてなかった。今ここにあって残ってるのは、裏切りと情けない人生だけだよ。』


『母さん、俺がいるじゃない。』


『いたって、あんたに何ができるっていうのさ?!』


『今の俺には確かに何もできないかもしれない。裏切りと情けない人生が待っているかもしれない。でも俺は生きたいんだ。』


『俺も母さんもいつかは死ぬ。だったら死ぬその日まで最後に残るものなんて分からないでしょ?だから俺は生きたいんだよ。』


『うるさいうるさいうるさい!子供のあんたに何が分かるっていうんだよ!』


『うん、何も分からないよ。でも俺は、生きたいんだ。』


俺がそう言うと、おふくろは俺を叩こうとしたが、その手は寸前で止まった。


『ごめんね、雄馬、、全部分かってる、分かってるんだけど、辛くて、、。母さん、どうしたらいい?雄馬。』


『ごめん、俺には、今すぐ母さんの気持ちをどうこうしてあげることはできないと思うけど、話は聞くことくらいはできるから、母さんの気持ちが落ち着いたら、これからどうすべきか、一緒に考えよう。』


『ごめんね、母さんどうかしてた。雄馬、ごめんね。』


おふくろは、そう言って、しばらく泣き続けていた。

俺は自分が来たいと思った世界が、こんなにも悲しくてやり場のない世界だったなんて、考えもしなかった。俺は今、中身だけ大人で、こういう時なんと言ったらいいか、多少の言葉が出てくるが、有村さんは小さい体で、子供の心で、ただ、生にしがみつく為に、泣き叫ぶしか術がなかったことを想像すると、俺は、胸が痛くなった。


その数時間後、親父が帰宅し、しばらく夫婦喧嘩をしているのを俺はただ、どうすることもできないまま見ていた。

結果、自己破産をすることが決まったのだった。

その日、俺は学校を休み、何も口にしないまま眠り、朝を迎えた。





自分が望んだ世界に来たはずだったが、早くも内心、ケータイのクリアボタンを押したくなった雄馬。だが、グッと堪えて眠りにつき、朝を迎える、、、。

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