第3話
遡ること、神菜が六歳頃の話。一体神菜はどんな孤独を感じたのか?!
一神菜昔の回想へ一
一神菜六歳、自宅にて一
神菜の母親は、テーブルの上に置いてある大量の郵便物を見ながら、酷く肩を落としていたのを、その背後から異様な緊迫する空気に冷や汗をかきながら神菜は見ていた。母親は誰かに、何度も何度も電話をかけている様子だった。どうやら、相手は神菜の父親の様だ。しかし父親はなかなか電話に出ることはなかった。そうしていると、母親は背後に立ち尽くしていた神菜に言った。
『神菜、包丁持ってきて、一緒に死のう。』
『なんで?』
『だって、生きてたって、何も良いことないんだもん。』
『そんなことないよ、これからいっぱい良いことあるよ!』
『なんでもいいから早く持って来い!』
『はい、ごめんなさい、母さん。』
神菜は、台所から包丁を持ってきて、母親に渡すと、母親は包丁を握りしめながらこう言った。
『本当に何にも良いことなかったな、神菜、一緒に逝こう。』
『ごめんなさい!ごめんなさい!母さん、ごめんなさい!良い子にするから許して!まだ死にたくないよう、、、!!』
神菜は恐怖と悲しみの中、そう泣き叫び、母親に訴えた。
すると、神菜の母親は、握りしめていた包丁を床に落とし、泣き崩れた。
『神菜、早く大きくなって。早く大きくなって、母さんを助けて。』
それからしばらくして、父親が帰宅した。その後、両親が夫婦喧嘩をしているのを神菜は見ていた。聞いていると、どうやら、父親が支払いに使うお金を、全て遊びに使い込んでしまい、大量の請求書などが郵送されて来たようだった。それもここ一ヶ月だけの話ではないらしい。最終的な話し合いの末、神菜の家は自己破産することとなった。
それから数年の月日が経ち、神菜は、小学四年生になっていた。その後も相変わらず、父親の金銭の感覚は変わっていなかった。
そんなある日、神菜は母親に煙草を買ってくるよう頼まれた。お金を預かり、外に出て、自動販売機が近くなると、神菜の同級生でクラスメイトの吉村海人が自動販売機でたばこを買い、もの凄い速さで走り去って行くのを神菜は見た。吉村海人の家庭は母子家庭で、妹が一人いるということは神菜は知っていた、ゆえに、吉村海人も、神菜と同じように、母親に煙草を買いに行くよう言われたのだと、神菜は直観的に思ったのだった。その後、神菜もそわそわしながら煙草を買った後、自宅へと帰った。
次の日、学校に登校した神菜は、吉村海人を見つけると、話をかけた。
『ねぇ吉村、昨日、自動販売機で煙草買ってたしょ?』
『買ってねぇよ。』
『私、見たんだ、吉村が煙草買ってるとこ。親に頼まれたんでしょ?』
『なんで親に頼まれたとか、お前にそんなこと分かるんだよ。』
『私もよく親に頼まれるから。』
『そっか,お前ん家もそうなんだ。俺ん家は、父ちゃんがいないから、母ちゃんと妹は、俺が手伝って、守ってやらないとならないんだ。』
『なんで、そんな風に思えるの?私達、まだ小学四年生だよ。それに、煙草買いに行くのって凄い怖いでしょ?見つかったらどうしようって。』
『だって仕様がないよ。母ちゃんは俺がもっと小さい時からそんな感じだし、どんなでも俺の母親だし、きっと、これからも変わらない。有村は言われた通りにする以外にどうにかできるの?』
『できない、私もどうにもできない。』
『俺も怖いよ。煙草買いに行くのも、母ちゃんのことも。けどさ、俺のこと産んでここまで育ててきてくれた、たった一人の親だからさ。色んな意味で、なかなか、周りにこんな話出来なくてさ。有村に話したら、ちょっと気が楽になったよ。ありがと。』
そういうと吉村はにっこりと微笑んだ。そしてその数日後、吉村海人は転校した。担任の教師の話によると、吉村海人は、転校のことを、転校するまでは伏せておいて欲しいとのことで急な転校のような形になってしまったらしい。転校の理由は、母親が再婚をして、その再婚相手の勤務地が離れた場所にある為、そこで暮らすこととなったことが理由だったようだ。
それから更に数日後、神菜は朝食を口にしながらテレビでニュースを観ていた時のことだった。神菜はあるニュースを目にし、息を呑んだ。
吉村海人とその妹が何者かに殺され、母親とその旦那は行方をくらませて、警察が探しているというニュースだった。神菜は隣で同じニュースを観ている母親の顔を覗き込んだ。母親はただニュースを観ていた。神菜は黙って食事を済ませると、急いで家を出て、沢山の涙をこぼした。なぜ吉村海人は、あんなに恐怖して、親を信じるしかなかった、、?親を信じようと、助けようとしていた海人がニュースのようなことになっているのか、神菜は一歩間違えば、自分の身に起こったかもしれない出来事に恐怖と悲しみでいっぱいになったが、なぜか、海人が言った、『たった一人の親だから』と言った言葉と、最後に神菜に見せた微笑みが、神菜の頭に浮かび、また別の涙を流させていた。
その後も雄馬は、神菜のこれまでの送ってきた人生を、おそらく、それでも、大分、集約されたであろう話を、しばらく聞いて、雄馬は、一言、神菜に言葉を返した。
『それで、有村さんが孤独を感じたのはいつなの?』
『自分に負けた時、、とでも言ったらいいでしょうか。』
『どういう意味?』
『私には今、夢があって、、それに、、もう一つ、、いえ、この話は今はできませんが、、とにかく私には夢があります。宇宙科学者になることです。それを追っているから、私は孤独にならなくて済むんだと思います。私にとって孤独はいつも隣合わせであるもので、走ることを止めた時に、孤独が襲い掛かるんじゃないかと思っていて、この夢を見つける前、きっと、ずっと、私は孤独だったんです。今なら、父や母のことを少し信じられるようになったかなって、そう思ってるんです。』
『なんだか、有村さんは立派だよ。俺が有村さんだったら、親を信じることも、夢をみることも出来ないよ。』
『矢中さん、それは、違います。私は全然、立派じゃないんです。私が信じたのは、他の誰かじゃなく、今のところ、私自信だから、、。』
『でも、その状況で、全部、誰かや何かのせいにしたくならないのが、本当に立派だよ。確かに、有村さんは正しいし、立派な生き方をしてると思う。けれど、有村さんの様に自分の夢を持って生きている人ばかりで世の中出来ていないと思うんだ!』
『そうかもしれません、私の少し先の未来だって、どうなるのかなんて、全く分かりません。けれど、私は、矢中さんやその矢中さんのお友達には、孤独にはなって欲しくないって、そう思って、、今日は余計なことを言ってしまってすいませんでした、、御代ここに置いておきますので、私、今日は帰ります!』
『あの、ちょ、ちょっと待って!違うんだ!』
俺が何かを言おうとする間もない早さで、有村さんは、そのまま帰ってしまった。
有村さんが帰った後、俺は、やけになって二人前の食事をし、そのまま帰宅した。
家に帰ると天井の一点を見つめながら、有村さんに言ってしまった事に対し、深く後悔をしていた。有村さんの話を聞いていて俺が思ったことは、平凡な生活を何不自由なく過ごしてきた俺に比べて、有村さんは、よっぽど苦労をして生きてきていて、それでも夢を追いかけてる有村さんに、好きな子に、俺はどうして、純粋に頑張って!って言って、応援してあげられなく、皮肉を吐いてしまったのか、自分が分からなくなっていた。
もしかすると、俺も有村さんと同じような環境で育っていれば、有村さんのように強く、夢をしっかり持った人格になれるんじゃないかとすら思ってしまっていた。
きっと、有村さんに嫌われちゃったなぁ。俺にはそうやって自分の夢を持って追いかけている人の気持ちが全く理解できない。もし俺に、人の気持ちや考えている事が分かる能力でもあれば、航や由羅、暁、そしてあの世界を失うこともなかったのだろうか?
そう思いながら、また雄馬は次の世界へに行こうと、あのケータイ電話の3を押して、眠ってしまったのだった。
不思議なケータイ電話の3を押して眠った雄馬だが、一体、どんな世界に行くのだろうか?!




