第1話
元の世界に戻ってきた雄馬は一体、何を思うのか?!
どのくらい時間が経ったのか分からないくらい、俺は放心状態のまま、自分のベッドでしばらく横になっていた。やっと体を起こせるようになって、日付と時間を確認したところ、確かに時間は進んでいたが、日付は変わっておらず、また夕方の五時だった。それからバイトのシフトを確認すると、運が良く、今日と明日は公休になっていた。
俺は外の空気を吸いに行こうと、着替えて、散歩に出掛けた。
外に出るとしばらく、ただ、ボーっとして、夕焼けを見ながら一人歩いていた。すると、誰かが俺を呼び止める声がした。
振り向くと、同じバイト先の有村神菜がいた。
『やっぱり、矢中さん!これからどこかへ行かれるんですか?』
『いや、違うんだ、ただの散歩だよ。有村さんは?』
『そうでしたか、、、私はこれからバイトに行くところです。』
『そっか、頑張ってね!』
『はい!ありがとうございます!』
『じゃあ、、!』
『あ!あの、ちょっと待って下さい!』
『なに?』
『あ、あの、明日って、何か予定はありますか?』
『ないけど、どうしたの?』
『もし矢中さんが良ければ、一緒にご飯でも行きませんか?』
『え?は?う、うん!もちろん!行くよ!』
その後、神菜とケータイ番号などを交換し、待ち合わせ時間や場所などを決めて神菜と別れた後、俺は嬉しさのあまりガッツポーズを決めた後、帰宅をした。
自宅に着き、自分の部屋に戻ると、複雑な感情が一気に込み上げて来た。異世界で、誰も何も救えなかった悔しさや苦しみの中、前から気になっていた女の子にデートに誘われたという、絶望と幸運が同時に降りかかった場合、どうすることが正しいことなのか、困惑していたその時、ケータイの着信音が鳴り響いた。自分のケータイの着信音ではなく、あのケータイの着信音だった。俺は、恐る恐る、電話に出た。
『もしもし、、。』
『もしもし、調子はどうだい?』
『調子というか、、今は、、その、、とても複雑な気持ちです。』
『そうか、、ところで、君は、クリアボタンを押したね。』
『な、なんで知ってるんすか?』
『全部見ていたし、君がそうすることも分かっていたよ。』
『なんで俺がそうするって分かってたんだよ?まさか、、やっぱりマッキーは、超能力者?』
『だから僕は、超能力者ではないよ。ただ、君のことをよく知っているだけさ。』
『そうなんですか?それなら、教えてください。僕は一体どうすれば良かったのか?なんでみんな死ななきゃいけなかったのかを!』
『可哀想に君は何も悪いことをしていなかったし、あの状況ではどうにもできなかった。だからクリアボタンを押し、全て無かったことにすることが最善な策だったよ。とでも言って欲しかったか
な?』
『そ、そんな事一言も、、。』
『異世界で起こったことを、全て、無かったことに出来るのもこの装置の機能だ。だが、君の心の中で、あの世界での出来事を全て無かったことにできるかい?』
『それは、、、できません。』
『君がそう答えることも分かってはいたが、、まだ君は、心のある人間だと、僕は思うよ。事の大、中、小に関わらず、大半の人は、自分の失態を無かったことに出来るのなら、素知らぬフリをして、いつも通り何事もなかったかの様に過ごすことだろう。でも君は今、迷い苦しんでいる。僕はそれが正常なんじゃないかと思うんだよ。その迷いや苦しみを、これから君が生きていく糧にして欲しい。
』
『糧って、、?俺が一人が、ただ生きていく上で、この苦しみが一体、なんの役に立つっていうんですか?』
『では、君は大半の人の様に素知らぬフリをして生きていけるのかい?』
『そ、それは、、、。』
『それができないというのなら、君はそれを糧にする生き方をするしかないんだよ。君を潰そうとしているわけじゃない。むしろその反対さ。君の思考を止めるな。』
『全然、、意味分かんねぇーよ!大体、こんなよく分からない装置で異世界に行ったり、よく分からないおっさんに説教されたり、、、地球上には沢山の人がいるのに、なんで俺なんすか?』
『肝心なのは、君がどうしたいかなんだよ。もうすぐ、君にある変化を与える出会いが待ち受けている。僕は君を、そっと見守っているよ。』
そういうとマキシムは電話を切った。
『なんだよ!どうすれっつーんだよ!』
イライラした俺はそのケータイを、そう叫びながら壁に投げつけた。その後、ほとんど寝つけないまま朝を迎え、気が付けば、神菜との待ち合わせ時刻が近づいていたので、その場所へと向かった。
やり場のない感情の中、雄馬は神菜との待ち合わせ場所へと向かうが、、、。




