第12話
ミュゲルとの交渉に成功した雄馬達だったが、そこに雄馬達の予想より遥か早くに、地球人と水星人の兵が金星に来てしまい、ミュゲルを連れて城から脱出したものの、追われる身となってしまった。
ミュゲルは、雄馬達を大事にしない地球とは友好関係を築けないと話した。その為、金星に来たことや金星であったことの全てを政府やグラジオラスに話すことがより、必要となった雄馬達は一度地球に帰る決意をした。
ザックルさんの秘密基地で少しの間、休息をとらせてもらい目を覚ました俺たちは、ザックルさん達にお礼とまた必ず会う為の固い約束を交わし、秘密基地を後にした。
それから、ザックルさんの仲間のアレックさんに、自分達の宇宙船のある場所まで案内してもらった。
そのおかげで道に迷うことも追手に捕まることもなく、スムーズに宇宙船に辿り着くことができた。
アレックさんにお礼と約束を交わし、俺たちは金星を後にした。
地球に着く少しの間、宇宙船の中で久しぶりに仲間四人でゆっくりと話す時間ができた。
「もし地球に帰って、政府の人やグラジオラスさんに、俺たちがしたことを全て報告して、逆に何らかの処罰を受けることになったら、、俺たちどうなるんでしょうね。子供たちは、、家族は一体どうなるんでしょうか。」
そう切り出したのは仲田だった。
「きっと、誰一人として無事では済まないだろうね。」
「どうしてそんな恐ろしいことを平気で言えるんですか?!」
「平気で?俺は、平気でいたことなんかないよ。ただ、俺たちがやってることには、それだけ重くて多くの責任がかかってるってことを言いたいだけだよ。」
「そんなこと、分かってますよ!分かってることをそんな風に突きつけられると、ただ不安になるだけじゃないですか!」
「俺だって不安だよ、怖いよ!だけど、それでも、、何もせずにいれば状況は悪くなっていくだけだ。だから今は、怖くても前を向いて進んだ方が、救われる可能性はあるとは思わないか?」
「でももし、それでも救われなかったら、、その先に絶望しかなかったらどうする気ですか?」
「分からない。」
「分からないってなんですか!じゃあなんの為に俺たちは研究を続けてきて、なんの為に、、一体、なんの為なんですか、、、!」
「自分の為じゃないでしょうか?」
そう答えたのは神菜だった。
「私もそう思うわ。」
続けてキャシーが同調した。
「そうだな、、それも分かってるよ。でもそれは建て前で、何か、なんでも良いから見返りが欲しいじゃないか。そこに絶望しか待っていないとしたら、何が俺たちの見返りだったって言えるんだ?」
俺は仲田のその質問に自分でも自分が何を言っているのかよく分からないままに答えた。
「それは本当に絶望なんだろうか?みんな無意識に、いつか来る死に対して恐怖しているのだと、昔、誰かにそう言われた時から、うやむやだった自分の中の疑問が少しずつ確信に変わっていったんだ。確かに死ぬのは怖いし、だからこそ俺たちの場合はこういう形で、ほとんど休む間もなく、まるでその恐怖を忘れる為かのように稼働し続けてきたんじゃないだろうか。
俺は時間が経つにつれて、無意識にいつか来るであろう死に対して恐怖しているのだと自覚した。だけど「誰にでも必ず、死は訪れる。だから今、この瞬間に穏やかに過ごしている人も辛い苦しいと思いながら過ごしている人も、みんな例外なくその全員にいつか必ず死は訪れる。ならば、自分の心を穏やかに保つ方法を探り、工夫をし努力し続けることにこそ、この世に身を置く限りは幸せと言えるのではないだろうか。」という言葉も誰かからもらった。
だから、俺にとっての幸せを考えたんだ。そしたらそれは、死ぬまで好きなことに夢中でいられて、死ぬまで愛する人たちと日々を過ごせていることであって、もしうまくいかなかったとしても、それは果たして見返りがなかった、絶望だと思うことになるだろうか?」
「俺は思うかもしれません。だから、本当に危なくなったら、子供と家族連れて逃げるかもしれません。
」
「仲田がそうしたいならそうすれば良い。」
「どうして責めないんですか?」
「だって、それが仲田の幸せなんだろう?それは俺が強要することじゃないよ。」
「俺が逃げたら、雄馬さんはどうするんですか?」
「俺は逃げないよ。俺はそう生きたいんだ。」
「雄馬さん、俺はあんたのそういうとこが気に食わないんすよ!逃げたいなら素直に逃げたいって言ったらいいじゃないですか!!」
「仲田、ありがとうな。神菜とキャシーさんは?」
「雄馬さん、ごめんなさい。私ももし、子供たちに危険が及びそうならその時は、、、分からないわ。」
「キャシーさん、分かりました。」
「神菜は?」
「私は、、ゆなや家族を守りたいわ。あなたも。ねぇ雄馬、もし危ないときは、一緒に逃げよう?」
「それでいい。神菜、すまない、俺は一緒には逃げることはできない。もし危険な時は、ゆなを頼む。」
俺がそう言い切った後、少しの間沈黙が続いたが、少し時間を空けて俺はある約束を思い出していた。
「そういえば、この仕事が終わって無事地球に帰れたら、子供たちを連れて旅行に行く予定だったよな!早くみんなで旅行したいな!」
「そうですね、そういえばそんな約束してましたね。」
仲田がそう続けた。
「旅行、どこが良いかな?海外?それとも思い切って宇宙旅行が良いかな?って、今してるか!」
気遣うように神菜がそう続けた。
「子供たちがどこに行きたいって言うでしょうね?」
キャシーさんもそんな風に話題にのっかってくれた。
「とにかく今は、地球に帰って、俺たちのできることをしよう!そしてそれが終わったら、絶対にみんなで旅行へ行こう!」
不思議と俺がそういうと、みんなの表情が笑顔になっていた。
そんな話をしている内に、地球へと到着した。急いで宇宙船から降り、まずは研究所の様子を見ようと扉を開け中に入った。
しかし、まず、入り口に数名いるはずの研究員がいなかった。それから研究所の中を隅々まで見て回ったが、人っ子一人いなかった。
嫌な予感がした。
それから俺は研究所に残り、
仲田とキャシーさんは仲田の実家へ行き、神菜は俺の実家と自分の実家へ行ったが、家には誰もいないかったと言って、みんな研究所に戻ってきた。
「こんなことになるなんて、、、研究員達は、、俺たちの家族は一体どうなったんでしょう。」
「分からない。どうして、全員連れ去られたんだ。研究員達にも何も話していなかったのに。こうなったら、直接連れ去ったであろう張本人聞いてみるしかないな。みんな、すまない。研究員達と家族がどこでどうしているのか分からない以上、動きようがない。だから、まず俺が一人で政府とグラジオラスさんに連絡をし話をしに行く。それから、俺が研究員たちと家族の無事と居場所を確認できたらみんなに連絡するって作戦はどうだろう?」
「残念ながら、その作戦には及びませんよ。」
背後から突然何者かにそう言われ振り向くと、そこには政府の人と数人の兵士たちがいた。
「一体俺たちの家族を、、研究員達をどうしたんですか?!」
「さてどうしたのでしょうね。あなたたちが今までどこへ行っていたか、そして何をしていたかで、ご家族や研究員たちをどうするか、そしてあなた達をどうするかを決めようと思っています。」
「ってことは、みんな無事なんですね。」
「はい、手は出してはいませんよ、今のところは。さて、今までどこで何をしていたのか、話してもらいましょうか。」
「分かりました、今から全て、お話しします。
みんな、巻き込むことになって本当にすまない。でも俺、まだ諦めてないから。できれば最後まで俺を信じててくれ。」
そう言うと、仲田とキャシーさんと神菜は、無言で真剣な表情を浮かべて、ただ頷いた。
「何を諦めていないのかは分かりませんが、じっくりと話を聞かせてもらいましょう。もし、私達を裏切ったような事実があれば、それなりの処罰も考えているので、覚悟しておいて下さい。」
果たして政府やグラジオラスは、雄馬達の報告をどのように受け止めるのだろうか?!




