友達思い
カリヤさん、本当にすごいな。
ちょっと清々しい感じさえしてきたかもしれない。
「…悪いけど」とウエダが答えるのが聞こえて、同時にコバシが私の方を見てニヤつきながら、「気になんの?」と口パクで聞く。
そりゃ気になるよ。でも気になるって答えないよ。
「…悪いけどオレは」と言いかけたウエダをカリヤさんが遮るように話す。
「そっか…ごめん」とカリヤさん。「じゃあ班のみんなでって事だよね?ウエダ君みんながいるのにジュンちゃんだけ優先したりしないよね?…ごめん、こんな事言って」
コバシが「おおっ」って顔をして私を見るのがイヤだ。
ウエダはその後何も言わない。
「ねぇねぇ」と後ろのユリちゃんの声が聞こえる。「タケノシタ君はさ、こんな事聞いたらアレだけど、ていうか意地悪で聞くんだけどさ、離れたとこに行ってる彼女より近くにちょっといいなって思うような子が出来たらどうするの?」
うわ~~…ユリちゃんてカリヤさんとはまた違う感じで凄い。
「イケダ~~~」とタケノシタ君が呆れたような声を出して答える。「もう~~イケダよくそんな事ズバッと聞けるな…でもなんか…そういうの他のヤツに聞かれたら、うわコイツって思うけど、なんかイケダが言うとそこまで嫌な感じはしないっていうか、なんか得な感じだなイケダって。面白い」
「面白いの?そう?私、体育会系な感じだからじゃない?女子力ないから?」
「ハハハ、性格の良さから来てると思うよ」
うわ~~~タケノシタ君にそんな風にずばっとほめられるユリちゃんが激羨ましい!
「やだな」とユリちゃん。「そんな言い方されると下世話な事聞けなくなるじゃん。うまいねぇ話反らすの」
ハハハ、とタケノシタ君が笑う。
なんか…よくわかないんだけど大人な会話な感じ。
あ~~失敗したな~~昨日のタケノシタ君のメモへの私の貧弱な受け答え。
「…なぁ」とコバシがヒソヒソ声で言う。「ウエダ普通に良いヤツなんだけど」
少し驚いてしまう。コバシが結構真面目な口調でそんな事言うから。
ひそひそ話を続けるコバシ。「冷たい感じがすんのはチャラくない証拠だし、オレがウエダくらいモテてたらすぐ付き合っちゃうけどな、もう来る女子来る女子全員と付き合う」
まじまじとコバシを見てしまった。
「いや、お前そんな冷たい目で見んなよ。ちょっとふざけただけじゃん」
そして前のウエダの席を指さして言う。「超普通のやつなんだって。見た目がちょっとイイだけの普通のヤツなの。だから女子にやたら騒がれるのもイヤだから、下手に冷めた対応してあんな感じなの」
「…」
そんな事言われても何て答えたらいいか…
また繋がれたウエダの手の感触を思い出した。
「なんか聞いたけど」とちょっと笑ってヒソヒソ言うコバシ。「昨日部屋帰る前手ぇ振ってたらしいじゃんウエダが」
「…」
「見てたやつに聞いてしつこく突っ込んでみたら、カミバヤシがタケノシタの事気にしてるからって、タケノシタの前でわざとやったらしいんだけど、可愛いじゃんウエダ、と思ってオレおかしくておかしくて」
クスクスと笑うコバシ。
「…」
「そいでそう言うのを仕方なくバラす時の恥ずかしそうな顔がな…あ~カミバヤシも赤くなってるじゃん」
「そんな…」と言いかけたところで突然ウエダが立ち上がって上から覗いた。
「コバシ、黙れつったろ」
ウエダの顔もちょっと赤いような気がする。
コバシが半笑いで答える。「いや、気にしなくていいから」
「気になるっつの」
「なんで気になんの?」と悪ノリのコバシ。「お前~~自分の話されてると思ってねぇ?」
「…」睨むウエダ。
でもコバシは笑いながら言った。「お前、自意識過剰。お前関係ないただの世間話してるだけ」
「聞こえてくんの!所どころ。余計な事しゃべんな」
「うわ、ウエダ気持ワリぃ。やたら後ろ気にして」
「うるせぇよ」
「ウエダ~~?」と水本の声。「どうした?危ないから座れ~~」
ウエダはバスの前の方に乗っていた水本の方を見ずに私を見る。
うわ、どうしよう…恥ずかしいし気まずい感じ…
ウエダが座ったので、もう私はコバシに話しかけられないように目を瞑って寝た振りをする事にした。
ウエダが気になるし、タケノシタ君とユリちゃんの話も気になるし…コバシが絡み過ぎだし。でもコバシは友達思いなんだな。私にウエダの事をあんな風に話してくれるなんて。
まぁだから余計受け答えが出来なかったんだけど。
アキラは誰と座ってるんだろう…
わかんないや…よく見てなかった…
すぐ前になったウエダとカリヤさんが気になってアキラの事ちゃんと見てなかった…アキラはたぶん中学の友達の事引きずり過ぎなんだよね。だからウエダに敵対心燃やして、それが今の私に対する態度にも拍車をかけてるんだよ…夕べとかみんなの前でちょっとやり過ぎだよね。というかみんなが普通に受け止め過ぎだよね…




