カミカミ
「イマイさんとはどうなの?」ハルノさんが口を挟んできた。
私は昨日のアキラの家に寄った時の事をいっぺんに思い出してしまう。
「…どうって?…どういう事?」恐る恐る聞く私だ。
「ガールズラブ的な事だよ」としれっと言うハルノさん。
はっきり聞くんだね。
「普通に友達」と答えるが、昨日の事がなかったらもっときっぱりと答えられるのに、と思う。
昨日の私はアキラに迫られて困惑したが、嫌悪は感じなかった。
受け入れようと思ったら受けれられるような気さえした…
いや、いやいやいやいや…
「たまにイマイさん、」とササキさんが言う。「カミバヤシさんの事をすごく愛おしそうに見てる事あるんだけど、それには気付いてないの?」
そんな観察止めて欲しいな。『愛おしい』とかそういう言葉を使わないで欲しい。こっちが恥ずかしくなる。
「イマイさんはカミバヤシさんの事をただの友達とは思ってないでしょ?」とハルノさん。「自分でもそれを感じる事はないの?」
なんかハルノさん、上から的な喋り方のせいで、かなりイラっとくる。だから、昨日実際襲われそうになったけれど、つい少し口を荒げて言ってしまった。
「そういう事を、たいして私ともアキラとも親しくない人から言われたくないんだけど」
何か言い返されるかなと思ったが二人ともすぐに「「ごめん」」と素直に謝ってくれたので拍子抜けした。
「でもね、いかにもありがちなんだよね」とササキさん。「お手軽な恋愛マンガや小説にありがちな設定でしょ?クラスのいちばんカッコいい男子に好きになられて、それで友達は美少女でその子からも禁断的に好きになれて、担任からも好意持たれて、それでも他の男子が好きでっていう…ね?」
ね?って言われても!
「カミバヤシさんは…」ハルノさんが言う。「て、カミバヤシって呼びにくいからカミカミって呼んでいい?私、心の中ではいつもカミカミって呼んでるから」
私の事を?
カミカミなんて初めて呼ばれたよ。
私がうんと承諾も入れていないのにハルノさんは続ける。「カミカミはちょうどいいんだよ」
ちょうどいい?キレ気味で何がだよ!と思う。喋りウザっ!それにさっきは動きが悪いって言われたけど?
ササキさんが説明してくれる。「地味か派手かって言ったらどっちでもないし、ブスじゃないけど飛びぬけて可愛いわけじゃないし、絶対自分から目立つ感じじゃないけど埋もれ切るわけでもない、ちょうどいい感じなんだよ。ありがちな設定をまんまイケる感じ。実際ホラ、ありがちな王道設定ほど萌えるし」
「昨日水本に呼ばれてたね」とハルノさん。「それでタケノシタと体育館に向かってる途中で、ウエダ君が上級生の女子に呼び止められてるとこに遭遇してたでしょ?そういうのもすごいタイミング良いよね」
タイミングって言われても…
ササキさんとハルノさんは顔を見合わせ声をそろえて言った。
「「見逃せないよね~~」」
嫌だな…それに…「ササキさんたち見てたの?」
「「見てたよ!」」
あんまりあっさり答えるので拍子抜けする。
「どこから?」と聞いてみる。いったいどこから見てたんだ。
「この廊下の反対側の非常口の、階段降りる手前の張り出してるとこから」
ササキさんが答えた。「たぶんウエダ君がカミカミの事心配で追いかけると踏んでたんだよね。もう、私の読みの通り!」
じゃあ偶然見たわけじゃないんだ。通ると思って張ってたわけだな?気持ち悪いぞ。
「ああいうところ見てどう?しかもタケノシタと一緒の時に?リアルな気持ち教えて欲しいんだけど」
そうは言っても私はウエダに気になるって言われただけだから。好きなんて言われてないから。
ハルノさんが聞く。「水本の手伝いって何だった?」
「…」答えたくない。
「何だった?」
とさらに聞くササキさんは、調子づいて来ていつもよりずっと強気な気がする。
「…えと、」結局言ってしまう弱気な私。「…プリント的な?」
言っても嘘だけど。
髪切ってたなんて言えないよね。二人の妄想をふくらますだけだ。
ササキさんがため息をつくように言った。「好きな人毎日決めてそれもまぁ楽しかったけど飽きてくんだよね~」
一緒だね~~。
「でもそれのおかげで見始めた、ウエダ君とカミカミたちのそんなこんなの方がよっぽど面白いんだよね」
「なんかさぁ」急にしんみりとしたハルノさんが言う。「ササちゃん、こういうとこすんごい健気なんだよね~~。自分が本当はウエダの事好きなのに」




